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★5-4★(2)

「何を訳の分からないことを言っとるんじゃ、イチゴんは。

体が軽くて軽くてこんなに気持ちの良い感じはないのに、分かってくれんなんて、悲しいいよなぁあッ。


イチゴンは馬鹿ンゴなり。

アチキは選ばれし者と選ばれざる者の記憶が見えるくらい冴えておるもんでねぇぇッ、

ふんふんフンッ!


神は未来をどちらに託すのか

果たして人類にはそもそも主導権はないのか

神は選ばれざる者がすがる日々の救いでしかないからな

じっちゃんのお願いが聞こえるよ


嗚呼ああぁ、

火星に行きたいよ。


あそこに行けば人間を救いたくなるかしら

このまま裏切らせないでくれって、お願いだから。


苦痛や悲しみに耐えることの出来ない人間とやらが・・・・

生き抜く力もない良識を盾に右往左往

デモばかりしても何もならぬ人間らは

共食いをして自滅していく闇の世界で踊りたいのさ

だからこそ、奴らが理解する前に

そのまま不幸をレイとイチが閉じてやんよ


「彼方の者」に託すことは正に神聖なる行為ではないの?

これはもしかしてアタイは


新たな謀反者になるということなのかな?

裏切り者のユダだったりして

あ、こんな存在の為にあの二人も追われる身にしてしまうのかな

あ、倉木ちゃん

そうやんか、倉木ちゃんを助けなきゃ。


イチゴんに聞かれたら恥ずいけど秘密を教えたる。


アチキも人間としての真っ当さを手探りさせて貰える友達が出来たんよ。

守るのだ。


えへん。

よいしょ。

さあ背中につかまって。

さあ、よいしょ」


怜は飛ぶつもりだ。

「無理! 危ない!!!」


選ばれし希望を何処へぶちまけてしまうおつもりですか。

ワタシは失神した倉木さんを起こす為、最大のアラーム音とバイブレーションを発動しました。


「ギャッ

あ、

あ、

え、星野さん、何をしてるの、駄目よ」


「あれ、空を飛んでいけると思ったのに体が

落ちますよオチマスヨ、あれ、

倉木ちゃんごめん、

一緒に倒れちゃ・・・・うっ」


怜は星野さんを抱えて後ろに倒れていくのでした。

しかし何故か、川底の石や水に身体を打ち砕かれる衝撃は無く、然りと受け留める守られし重力を感じる。

「危機一髪~、間に合ったぜ」

救世主は村川でした。

「うあ、重い」

いちいち口に出さずにはいられないのでしょうか。

支えてはみたものの、二人の重さに押しつぶされて下敷きになってしまいました。

がっかりです。


やっぱり駄目なんてかっこ悪すぎたこの人間は何なのでしょう。

「村川、ちょっとっ。遅いし何やってんの」

「うわっ、なんかべちょべちょしてるぞ」

怜は二人の間に挟まりギュウっと血を絞り出されているのでした。

「え、どうすればいいのよ」

「落ち着けよ、倉木。取り敢えずお前が立ち上がりな。そしたら、星野を抱えてあげて俺の上から降ろしてくれ」


ワタシはまだ倉木さんのシャツの内側で音を捉えるだけでしたが、彼女が力を込めて立ち上がった反動で、はだけたシャツからレンズをヒョイと外に向けられました。

シャツのボタンが上から三つ飛んでしまい、倉木さんの下着が露わになっていました。

村川が正面で立っていて、月明かりで彼の視線の先の全てがメガネに丸写しになっている映像が捉えられていたのです。

「どこ見てるのよ。早く星野さんを抱き上げて川から出さないと」

言い逃れの出来ない動画をワタシと倉木さんは永遠に共有していきます。

うふふふ。


「お、おう、分かってるよ、

ちょっとびっくりしてどうしていいか迷っていただけで、ブラジャーにどうのってことは・・」

「あん?

スケベ!」

「いやいや、

あ、そうだ、俺が降りてきた向こうに小さなコンクリートのベンチが有るからそこへ星野を運ぶよ。

そうだそうだ星野が危ない。

うん危ないうんうん」


察しの早い倉木さんは、伸びたシャツを整え閉じる前に内側に入ったワタシのいるスマホを取り出して、撮影を開始します。

芝居がかった村川の雑な持ち上げ方のせいか、重力をダイレクトに受けた怜に意識が戻ったようでした。

良いのか悪いのか、彼の為すことは結果だけは悪くないのがムカつきます。


「あ、アチキ浮いとるヨ」


この声は静かな囁きの筈なのに予想外のクリアな鮮明さで、生命力の清らかな強さとして周りを照らすかのようでした。

倉木さんはお姫様抱っこされた形の怜に寄り添っています。ですが、気に障ることがあるようで苛立ち始めました。

命の恩人のお姫様に対して、スーパーで10㎏の米を持つぐらいの気軽さと言うか、心構えの微塵も感じられぬ様子で抱く村川の姿に我慢がならなかったようです。

「もう、もっと腰を入れて。星野さんの首があんたの腕から後へ、だらんと落ちちゃってるじゃない。見てよ、血が溢れてきている。私が首を支えるわ」

すると怜が一言


「当たっとる、カタっ」


「え、ごめんなさい」

倉木さんは手首の古傷を思い出して、当たらぬよう怜の頭を支え直しました。

「これでどう、大丈夫?」


「ウオっ

もっと、

押してくるんゴよ」

「え? 」


「腰のところをずんって、

ずんずんずんって刺すんスけど、アハハっヒヒヒ」


変態村川が暴かれた瞬間でした。

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