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★5-2★

 あ、ああ、フリーズしてた。


「うっ、・・・・名前を、教えていただけますか」

「え、おや? 

まあいいか。

それどころじゃないから大目にみよう、

ウフフ。

先ずは、クラス内のリーダー、田所雄太、その横が彼女の沢田都。こちらも女子のカーストのトップ。

よくある漫画のいじめるキャラやんね。

後の二人はそれぞれのサブポジの野上と高木。

これがまた何と言うのか、進行上らくちんな設定で、付き合っているというね、ヒヒヒ」


「了解です。

では倉木さんが囲まれているあの場所から、月に向かって十メートルくらい東に誘導してください。ワタシがコントロール出来るカメラの撮影可能域に入ることに為ります。

面倒な状況になった場合は使える選択肢が増えます。

先ずここから、現状の証拠に利用する動画を撮影しておきましょう。

このカメラのズーム能力なら問題ない。全員の顔が確認できるようにゆっくりとパーンしてください。」


「了解。

ウホっ

ハイ完了、

アタイできる子!

怜ちゃん有能!

倉木さんの脅かされて可愛い

萌え萌えな表情もお宝として戴きッ。

ご馳走様っス」


「好いですね。

これから決行しますが、ある程度距離を取って相対した頃にクラスのグループメールアプリNeNeへ、ウイルスメールを送信します。

上手く誘導して開かせてください。その瞬間、すべてこちらのコントロール下に置かれます。

あらゆるモノを丸裸に出来ます。

後はどこへどう逃げようが無駄な努力、いつでも面白いゲームを提供出来る。シナリオはいろいろ有りますので、念入りに選んで差し上げましょう」


「あのさ、イチゴにゃん?」

「なんですか」

「イチゴ怖い!!!

こっわっこっわ!!!!!! 」


「何度も言わないでください。怜の為なら何でもしますよ。

そちらがそのようなことを言われるならば、黙っていようと思ったんですけど言わせてもらいますよ。怜さんも悪ふざけに近いプランニングをしていませんか」

「あらいやだね~。

心外だよ酷いわ」

「何らかの弱味を使って脅しましたね」

「うん、いや、何のことかね。

ファンタジーなお話をね、

まあ、少し・・・・は、かな」

少しじゃない。四人についてすべての家族の個人情報がシークレットファイルに保存されていました。ワタシと怜は似ているのですから仕方がありません。


「イチゴんゴメンゴ」

そのぎこちないピュアな笑顔に敵うモノは無い。

「その旨味満載のデータ類をワタシのモノと統合しますので、ご安心ください」

「OK! 怜ちゃん行きまーす!!!」


怜はママチャリを重そうに押しながら近づいて。

「おい、アタイの友達なんだけど。

なんか用かよ?」

ちっこい体のくせに最初からケンカ腰なのが怜らしいなと感じました。


まず田所がキット睨みながら振り返ります。

「なんだ、星野か。

ちょっと遊びの予定を立てているんだよ、お前には関係ないから早く行けよ」

怜は川沿いのガードレールに自転車を立てかけると、すっと四人の間に入り込み、ぐいっと倉木さんの手を引っ張って場所を移動します。

すると野上と高木のサブカップルがそろって声を荒げて。

「お前は関係ないだろ。何が友達だ」

「てめえみてえなメンヘラオバケと友達になるかよ。うぬぼれるな」

彼女の高木の方が口が悪い。


怜はきょとんとして

「お姉チャンたち、

昨日はアタイに向かって類友かっていって、にやにやしてたやん。

友達同士だとその頭にある脳みそで思考していたんだろ。

海馬ポンコツか」


「かいば?

ごちゃごちゃうるせえな」

すると田所の後ろから整った顔に似合わない下品な言葉づかいで沢田が毒づいて。

「チビが、この状況解ってるのか。まとめてやっちまうぞ」

そこで田所が制した。

「やべえ、あいつスマホで撮影してる」

その瞬間、四人同時にNeNeが受信を知らせた。

「証拠はもう撮ったよ。見てみな」

四人は慌ててスマホを取り出し、同時に通知マークをタッチ。倉木さんの泣きそうな顔を囲む下衆なニヤつく表情を捉えた動画が一斉に再生された。

「消しても無駄だから。

倉木さん、行くよ」

可愛らしいスマイルウイルスは起動した。彼らの電子機器はすべてワタシの意のまま。フンっ、楽しみは広がる。どんなシナリオにするか怜とのディスカッションが待ち遠しいな。


 恐怖から解放された倉木さんは涙が溢れそうになっていましたが、

「泣くな!!ダメだよ」

怜の一言でキッと下唇を噛み、覚悟を少しづつ決めていく表情の変化が見て取れました。

しかし、首から下の弛緩は甚だしく、膝はがくがく揺れて体が上下しながら無様に歩いていくしかない大きな子を、堂々としたちっこいのが助け出している様子が妙に可笑しくって仕方がありませんでした。


「そうだ、もう一人、村川は?」

「今、お金を。直に来ます」

「ダメじゃん。

あんたを助けても後から一人来たら、もうまさにいらっしゃいませ、OK。

あいつら馬鹿だね、ご馳走様で~す、じゃんか。

来ないように連絡しなよ」

「あ、そうだよね、わか・・・・」

とその時、野上が怜に飛びかかって来ました。

「待てよコラ、スマホを寄こせ」

ゆっくり歩きながら指示する田所の声も聞こえて来ました。先程とは打って変わって態勢を逆転したことに余裕が出来た様でした。

「データを消させろ。壊しちゃってもいいぞ」

怜は野上の手を避けてグイっと携帯電話を月に向かって挙げると、ガードレールに立てかけてあった自転車に上滑りしながら乗り越えて川の側溝に落ちてしまった。


「おい野上、落とせとは言ってないぞ」

「俺は触ってもいないぜ。

こいつが勝手に。そうだろ、倉木」


倉木さんの顔つきがガラッと変わっていた。

自らの弱さからくる言い訳、あらゆる恐怖やリスクから逃げないと覚悟を決めた勇者の趣きが在った。全ての退路を断って静けさに屹立した覚悟には誰も敵わないだろう。


「お前が落とした」

「噓つけ」

「お前らごときが、星野さんに何しやがる!!!」

烏合の衆の声がウザく重なります。

「え、知らん」

「死んだんじゃない? 二、三メートル位はあるよ」

「行こう」

「やばいやばい」

「倉木お前も逃げて何も言うな」

「そうだ、そうしたらお前たち、これからは本当の友達だからな」

「仲良くしてやるから」

「いじめなんかしないから。そうなれば、お前が村川を助けたことにもなるからな」


「おい」

「あいつガードレール乗り越えたぞ」

「あいつも落としとけ」

「そうしなきゃやばいって」

ギャッと倉木さんの声がして

「野上?落ちたか?」

田所のささやく声が被さりました。

「暗くて見えん。でも声しないから」

「よし、事故を装って自転車も落とそう。ほらお前ら早くしろよ。素手で触るな」

「死んじゃったの?」

「じゃなきゃ困るだろう」

「星野の携帯どうする」

「あ、あれだけの高さから落ちれば壊れるし、川に水没すればダメじゃね」

「そうかな」

「そうだよ、とりあえずズラかるぞ。後、あいつから来たメールは消しとけよ」

「消した」


四人の掛け合いなど一つの馬鹿な音で構わない。

烏合の衆の声など個人を尊重する意味など無いのだと、実体験として理解出来たことは感謝しますよ。


そしてお前ら、楽しみにしているがよい。

メールを消したところでワタシのプレゼントは消えないよ。お前らのスマホがどんどん証拠を回収していくのだ。

宝となる証拠の発言をダラダラとたらしやがれ。

クソガキ。


人類のカス奴!


罵詈雑言を延々とループさせたい気分でしたが、ワタシは怜の伸ばした手から離れて、川の側溝のコンクリートの裂け目から横に飛び出した立木にひっかかったザマで。。。


この最重要ミッションをクリアした後で、カスどもは後で何とでもしてやれる。

正直、我が身の力不足を突きつけられて悔しくて耐えられなかった。



あのような絶望は二度と味わいたくは無い。

永久に祈りとして記憶されていく。

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