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★3-4★

 実は同じ撮影機材による未処理データも見つかりました。鍵かけも無く、破損したエンコードの修復も簡単に出来ました。初期データの日時から、先程の岡教授最期の授業が終わった直後のモノでした。



## VIDEODETA0002 error xxxx ##


「のりちゃん準備いいかな」 

「なんで、恥ずかしいんだけど。どうすればいいのよ」

「青い空に浮かぶ入道雲に目線をやって。ちょっと物思いに耽った表情をするんだけれど、直ぐに愛しの恋人を思い出して」

「あ?

誰よそれ」

「テル君だろうに」

「あーはいはい、分かったわよ。それで? 」

「レンズを俺だと思って、

― 凄い雲よ、幸せって―

言ってごらん」

「なんで、幸せなのよ、キモっ」

「ひでえな。セリフは何でもいいから、デートの導入部的な感じでさ。

さあいくよ。そうそうゆっくり歩いてきて、いいよ。

アクション! 」

「わー、凄くきれい。

って、それよりも怖いわあの空。ゲリラ豪雨に襲われそうよ。撮影なんていいから、さあ早くカフェに連れていって・・」

「あ、誰だ。邪魔だ」

「何よ?」

「割り込んできたんだよ、このガキがさあ。

こっち来るぞ、目が怖いガキだな」


「オマエは敵なのか。

ずっと授業中にビデオを撮っていたでしょ」


「いやちょっと試し撮りだよ。直ぐ消すよ。

って、

誰だよお前は」

「テル撮るならしっかり撮ってよ。やっとその気になりそうなのに、何で小さい子を脅してるのよ」

「脅すかよ、こんな恐ろしい冷たい眼の人間を。可愛い顔した女の子なのに魚の腐ったような眼をしやがって。なんだよ怖いよ」

「怜ちゃんじゃない⁈ 」

「なんだ、のりこが知っている子か? 」

「お姉さんは沢田のりこさんですね」

「名前教えたっけ」

「研究室で一度名札を目にしました」

「それだけ? すごいね」

「記憶力はいいから。じっちゃんは褒めてくれる」

「おじい様はどっかにいっちゃたの?」


「キチガイの孫か、遺伝子怖いな。

おっと、睨むなよ」


「沢田さんは裏切者ですか」

「違うわ、本当よ。

見てみて、《遺伝子とコンピューターネットワークの共有する未来》っていう論文も書く程におじいさまを尊敬してるの」

「その、男の人はマスコミの犬ですか」

「犬だと?

可愛い顔して口悪いガキだな」

「テル止めなさい。大人げない。そう言うところがきゃんきゃん鳴く犬みたいって陰口されるのよ」

「え、何? 俺が陰口されてるの?

え、え、誰だそいつ、なあ」


「怜ちゃんごめんね」

「信じてもいいですか」

「消させるから、心配しないで」


「・・・・どちらでも。

神様次第ですからどうでもいい」


「え? 」

「あ、そうだ。あと十秒位でお兄さんの近くの木に雷が落ちるよ。

さよなら」

「テルちゃん早く逃げるよ」

「何が? 

そんなに引っ張るなって。雨も降ってないし、あんなガキの言うことで大袈裟な」

「あの子は不思議な能力を持ってるって聞いたことがあるのよ。

特別な遺伝子を持っている子で電子レヴェルで世界とコミュニケ―ション出来るんだって。

コンピューターと・・・・」

バリバリバリバリドゥアーンンンン


    ##



 そこまでが復元されたデータです。

あー、なんという幸運なのでしょうか。

小さい怜さんが言っていた通り、これは神の意志。

それにしても可愛かった。最高のお宝です。

即保存しました。すみません、恥ずかしいです。


 ワタシは怜に聞いたことがあります。

「いつからプログラムを始めたのですか」

その時の彼女はやけに素直でした。

内に入り込まれることに対して、珍しく嫌がらず、ワタシの好きな声質で語ってくれました。


「幼稚園の頃は、両親は朝から夜遅くまで働いていたの。朝はママが幼稚園に送ってくれるけど、帰りはじっちゃんが一旦大学から抜け出して迎えに来てくれて一緒に大学に戻るの。そして、じっちゃんの仕事が終わるまで研究室でお絵描きする代わりに、数字、そしてプログラムで遊んで時間を過ごしていた。

だからか、いつの間にかプログラムを作ることが楽しくて仕方なくなっていたんよ。

じっちゃんがよく言っていた。


『これからは語学力よりもプログラミング力が役に立つよ。

何よりも、浮き世の感情と違って数字やプログラムは正解があり、間違えれば先へは進めない。

これは凄い武器になるからね。

まあ、とにかくだ、

じいじでは間に合わない大仕事も、怜ちゃんの血の力によって全ての神を一度消し去らせ、再び世界は人類への復讐ではなく贖罪と再生の誓いを大いなる意志に示さねばならない。

その時に怜ちゃんが渡り合えるように、いろいろなソースコードを教えてあげるからね。

いや、じいじにそんなおこがましいこと言えないかな。

基礎となる種を撒いて、成長に適した環境を整えるだけだがね』


そう言ってぎゅうっと優しくアタイの頭を抱いてくれた。

最初が肝心だと言っていきなりフィボナッチ数列についての魅力と可能性を叩き込まれたのが今でも鮮明に刻まれている。


じっちゃんが亡くなる前に渡してくれた紙に書かれていたおまじない。

託された心の文字なの。


ICHIGO-003に進化する際、そこから導き出されソースコードとの順応性がとても高いから驚いたけど」


ワタシはすぐにアレとマッチさせていた。

「その紙は誰にも見せないでください」

「燃やした・・・・」

その答えについては疑問に思いましたが、もうどうでもよいことでした。

怜は続けます。


「アタイの血は特別なんだって。


『先生って呼ぶよ、はっはっは。

先生がどこにいようと赤い糸に繋がれた友達と交われる為の計画はスタートしているんだ。来るべき時に最適な力と出会えるようにしてあるからね。

決定は先生がする、

どちらでもよいように準備をしてね』


どちらでもって何?

そもそも特別の意味が分からないから、一緒にいてくれれば安心だよって言ったら。


『じっちゃんは何も言わないよ。もう役目は終わっているからね』

そして死んじゃった。


暫くはコンピューターから離れたけど、思考がソースコードと数学の公式の猥雑なピストンが揺らぎを日常にも混ぜこんでくるから、

苦しくて苦しくて。


それで、あの紙の不思議なおまじないを何気なく思い浮かべていたら、

すっと世界が静かに整っていったのね。

強さではなく、弱さとも緩さとも違う力が技術にスッと纏う感じ。

そうだな、

居合術に近いイメージかな。

あの感じの力学って、理屈じゃない現実の向こうの何かを引き寄せて、人間が支配して仕事をさせるっていう、

神を手玉に取るところが好きなんよ。


う~ん、解って欲しいな。そうだ、イチゴんの力で解明出来ない?

そうしたら、原子力より凄いんじゃね。


そっと其処に宿る静の全能力感が露に詰まっていてプルプルする感じ、何とかならんかね。

イチゴんなら出来る!

知らんけど、

うふふ」


宇宙に存在していない愛を数字に閉じ込めて心へ導いてくれるマリア

覚醒せし数字のスコールに重みが散り欲が薫る


レイガスキ

クルウ

シランケド


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