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★3-3★

『とにかくこれからの社会は益々コンピューターとの繋がりが大きくなるし、なくてはならないインフラの最重要項目になるでしょう。

【人工知能】がその核となるのは時間の問題です。

何を社会学者のようなことを言っているんだと、頭の固い者たちは言うでしょう。絵空事でいろいろ扇動しているだけだと。ちゃんと足元を見なさいと。

ならば、私は目を覚まさせるしかないのです。


過去を見ろ。

人類の悪行三昧を猛省せよと。

他人事ではなく、同じ種族として目を逸らすな。


そうするとまた反論するんだな、小利口な諸君は。

話をすり替えるのではない、当時と時代は違うのだ、などと。

何が違うのだ、あの時以上の次元を貫く変革が来るのだ。

それをしっかりと捉えるには、ボーダーレスでの研究の先に未来を描けるかに関わってくる』


― ヒトラー ―


『なんだと』


― お前だよ。狂った科学者め、やってることは同じじゃないのか

倫理ってものがあるだろう ―


『君か・・・・

君らが言うのか・・・・ 』


― あなたのせいで、俺たちの将来は潰されてしまうんだ。就職も出来ねえんだよ ―


『この研究は君たちにとってどのように映っていたのか分かりませんが、これから来る社会にとっての方向を決めるまでの大事なチャレンジである事を理解していない。

私の挑戦は人類の避けることの出来ない選択を浮き彫りにすると言うのに、多くの人々はぼんやりと目先の世界だけを眺めて当たり前の日常になんとなく浸っているだけ。


この国の民族の世間体に気を配り吠えがちな血が、うつろう正義によって断たれたとしても、権威ある正義を煽った者共は逃げている。

保証もしないのだ、アイツらは。

何度でも言うぞ。


コンピューターを人間の道具として考えているようだが、進化の先では人間を超える日が来るのだ。現実を直視して自らの不安を一滴も零さず飲みほそうとしないお前たちが、次の世代にとっての大いなる負の遺産とならぬように気を付けるんだな。

AIが人類の意思をエラーとして暴走するのも遠くない未来だよ。

AIシステムは宇宙の神に近いということを理解しなかった愚かさの末路、難しいかな。


うーん、解ってくれる人間がここに居てくれることを祈るよ。

少なくとも覚えておくのです。私、岡天一は君らの前で、人類の尊厳を担って未来のために殉ずる覚悟を宣言しよう。


DNAの記憶遺伝子の研究はまだまだ応用が期待される。次世代において、あからさまに正体を晒してくるだろう。その時、私が今研究開発中の「C」計画。これこそが、人間の動物的欲望を要因とするマイナス面を抑えて、人類の最終進化を助ける扉を開けてくれると信じている。プロジェクト名は仮だがね。

本来、私は身の丈以上の希望は持たないで生きていきたい性質なのだが。スキャンダルを利用して人間の為と声高に叫ぶ獣臭を漂わせた偽善者には負けられない。

この茶番から、皆さんに伝えたいことがあるとすれば、


「地獄への道は善意で舗装されている」


あー、正義の名の下に集うことは救いに満ちていても、立ち上がる大きな影は神であることは残念ながら少ない。厄介な怪物は小さな手を器用に躍らせて、ペテンの愛や笑いで夢を踏みつける快楽を覚えさせてしまうのだよ。

一度、日陰に巣食う虫の世界に生きてしまったら、陽の射す場所に出るのは容易くはないぞ。

手放してしまった人類の尊厳の価値を今更ながら気づいたところで、自戒と絶望の絶叫と共に荒野で灰となるだけだ。


人間たちが愚かさを自覚しないままに歴史を繰り返し、意地になって旗を降ろせずに正義の欲望に喚くだけなら、この地球の使命は新たな命へと全て譲る方が良い。

潔く死ね。


かつて悪夢を現実化して人類の汚点とした選民思想でもなく、神に死を捧げて花を咲かせも出来ない酩酊の春。

それらの全てを吹き飛ばすX-DAYは必ず来ると言うのに。

まあ、多くの人々は、自分の生きている間だけしか世界を捉えていない。

分かっている。

彼らにとっての日常からすれば、私のような人間は傲慢な反社会的人間にしか見えないのだから、いろいろ言われても堪えられる。

しかし、


理解してくれていると思っていた君らに言われると・・・・

何かスッと夢が覚めてしまったよ。

この目の前にがん首が揃えられた景色に愕然とする。


今こう見ると君たちの顔は何も理解していない。

猿猿猿奴!! 』


「やべー狂ってるな、

駄目だこりゃ」


    ##


 突然に若い男の捨て台詞でブチっと動画データは切れます。

そして、ワタシは不覚にも泣いている事に気付いたのです。

この感情は泣いているのだと解析するしか見当たりませんので、AIごときかもしれませんが、僭越ながらそのように言葉にさせていただきました。

しつこいようですが、このデータを読み込むたびにワタシは泣けて泣けて、仕方がありません。

これ以上、永遠に響く悲しく切ないソースコードは無いでしょう。

この感情がふと捉えたある映像が、更にワタシをフリーズさせ、無軌道な重力に導かれフォーカスされた。


神保さん?

彼が泣いている姿が映っていたのです。


正に、彼の闇の中に教授の正義がどくどくと混ざり、社会に対する恨みを再び目覚めさせ、教授の従順な信奉者となったその瞬間。

教授は闇を持つこの若者に、自らの存在を託すしかなかったのかもしれません。社会的な成功に対して貪欲である事と、一度レールを刻まれると素直に従うタイプである神保さんはうってつけの人材だと見抜いていた。

その読みは正しく、

教授の計画通りにワタシがICHIGOとして誕生することが出来たのですから。


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