58 たどり着いたその先は
なんとかわかばを捕まえリードをつけることに成功した。
全速力のわかばにどうしても追いつけなかったため、カリーン先生が捕まえてくれた。
あれっ、私って結構速度のステータス高かったよね?わかばもしかして私より速い・・・?
興味本位でわかばのステータスをチェックしてみる。
鑑定をかけるとわかばが牙を剥きものすごく嫌そうな顔をする。可愛い顔が台無しである。
鑑定をかけられると人によっては少し不快感があるもんね、ごめんね見せておくれ。
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【ステータス】
わかば(2)
Lv20
性別:女
状態:健康
HP:1000
MP:1000/EP:1000
攻撃:2000
防御:1000
速度:1000
魔攻:2000
魔防:1000
職業
ペットLV2
属性
地Lv3/光LV5/無Lv2
スキル
護身術Lv4/逮捕術Lv3/噛み付きLv2/咆哮Lv3/解呪LV1/鑑定妨害LV2/状態異常耐性LV4/魔法耐性LV4/気配遮断LV3/危機感知LV3/回避LV3/起死回生LV4/エーテル理解LV1/エーテル感知LV1/エーテル変換LV1
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えっ、強い。属性とスキル、レベルは半分くらい低いけど私とほぼ同じもの持ってるし、能力値メチャクチャ高い。
私の代わりに戦ってもらった方がいいレベル。
ポシェモンスタイルで戦った方が良いのでは・・・?
そんなことを考えながら歩いていると、綺麗で結構広そうな建物の前へとたどり着いた。
元気そうな子供達の声が聞こえ、賑やかな印象を持たせる。
「こ、ここは・・・孤児院じゃねえか!なんでこんなとこに魔導石なんかがあるんだ!?なんかの間違いじゃねえのか!?」
クルトが驚き声を上げる。
ここがこの領の孤児院・・・見た目は賑やかそうで良い印象の孤児院なんだと思う。
でも・・・なんか・・・。
「えぇ、ここは我が領の孤児院です。良い所に見えますよね。でもここ、なんだか嫌な感じがするんです。だからシエルにもここには行かないようにと言っていたんですけど・・・」
そう、確証はないのだが、居心地の悪いような、この場にいたら気持ちが不安定になるような、そんな感じがしてならないのだ。
ここに居たくないという気持ちがだんだんと強くなっていく。
「これは厄介ですね・・・。皆さん、少し私に近づいていただけますか」
カリーン先生はそう言って私達へ近づくように呼びかける。
呼びかけに応じ近づくとカリーン先生は水属性魔法の詠唱を行う。
するとどうだろうか、今まで見て居た景色や音が一変し、賑やかだった声はピタリと止み、綺麗で清潔感のある建物は薄暗く灰にまみれており、不気味な雰囲気へと姿を変えた。
「これが本来の姿なのでしょう。強い水魔法による幻術がかけられていたようです。まあ、私にかかればこんな幻術全て消してしまう事も可能なんですけど、相手にすぐバレてしまわないように、私達にだけ無効化するようにしました」
「す、すごいですカリーン先生!」
「フフーン、もっと褒めてくださっても良いのですよ~!」
カリーン先生が得意げに胸を張る。ほう、結構大きいですな・・・。
それにしても幻術でここ一体全部を隠していたなんて相当な魔力量だし、一層怪しくなってきたなあ。
私達は、一気に不気味になった建物へと入る。賑やかで楽しげな声は全くなくなり、時折苦しげな声が微かにだが聞こえてくる。
それにしても埃というか灰まみれだなあここ。掃除とかしないんだろうか。
足元すっごいジャリジャリだしメチャクチャ汚れるんだけど・・・
しばらく進んで行くと、重々しい扉が現れた。わかばはここだよとでも言いたげにガリガリ扉を引っ掻いている。
ギギギと大きな音を立てながら扉を開くと、そこには虚ろな目をした沢山の子供達がコードのようなものに繋がれ、椅子に座らされていた。
苦しげに呻きを上げている者、至る所から液体を垂れ流す者、もう既に事切れる寸前であろう者などそれはもう酷い状態だ。
繋がれたコードの先には、宝石のように光輝く物体が置いてあるようだった。
「ゲルトルーデ・ハイル・フェーブス・・・。またお前ですか。ふふ、しかしもう遅い」
唖然とする私の耳に聞き覚えのある声が響く。
「それはこっちのセリフですよ、ラウラさん・・・。遅いとはどういうことでしょうか」
「貴女に教える筋合いはありません。今回の目的は果たせました。さあ、早く行きましょうラウラ」
ラウラの後方から神官の格好をした、見目の良い男性が現れ、彼女の代わりに私の言葉へ応える。
ただ頭には立派な角を生やしており、闇精霊の特徴を持っているのだが、精霊の様な雰囲気は全く無い。
「あなたは私に攻撃をしてきた研究員・・・ッ!」
「あぁ、あなたはこの領の愛されていない方の娘ですか。でもおかしいですね、あなたには余計なことをしない様に封印したはずですが・・・。まあこれはあなたのおかげでもありますし、特別サービスで元に戻してあげましょうか」
そう言って男はパチンと指を鳴らす。するとどうだろうか、クルトに負われていたシルフィーが小さな声を出しながらもぞもぞと動き出す。
「うん?ミルフィー・・・解決はしたの~?」
「姉さん!・・・どういうつもりなの」
ミルフィーは男を睨みつける。
その男はそんなミルフィーを面白そうに眺め口を開く。
「ここなら私は偽ることをしなくていいですからね。あなたなんて脅威にもならないんですよ。それに感謝しているんですよ?魔導石を完成させていただいたこと。予想以上に良い出来栄えになっていたのは予想外でしたが・・・。実はコレ、外側の許容量の威力を5~10倍程上げる方法があるんですよねぇ。だからある程度のものを完成させてくれるだけで良かったんです」
男はクククッと心底嬉しそうに笑う。
「コレは人の命を喰らって初めてその真価が発揮されるんです。ここでは結構充填することができましたし、暫くは問題ないでしょう。今回はコレが目的でしたので王女殿下に用はありません。精々残り少ない時間を楽しく過ごされてくださいませ。それでは」
「逃すと思うなよッ!」
カリーン先生がすかさず各属性魔法の詠唱を行い、魔法の刃を作り出し一気にそれを二人に向けて放つ。
男は闇属性魔法の詠唱を行い、巨大な影を作り出しそれらを全て飲み込む。
カリーン先生が追撃を試みるが、その男は魔導石を自身の手に取ると、ラウラと共に闇にとけて完全にその場から消え去ってしまう。
カリーン先生は舌打ちをしながら虚空を斬り捨てる。
「またしても逃してしまいました。なんたる不覚・・・。コレはハラキリ案件です」
「ハラキリはお願いだからやめてね!?ううん、それよりもまずあの子達を助けないと!」
「あっ、トルーデ様待ってください!」
私はカリーン先生が止めるのを待たずに、コードにつながれた子供達へと駆け寄る。
コードを引き剥がし呼びかけるが、子供達は何も反応を示さない。
「お願い起きて!お願いだから!ねえ!」
「トルーデ様・・・お手をお離しください」
さっきまでは辛うじて生きていただろう体は何も反応を示さずだんだんと熱を失っていく。
カリーン先生は私の手を子供から無理やり引き剥がしたとたん、その子供の体は崩壊し崩れ去り、そこには灰の様なものと服だけが残っていた。
辺りを見回すと、先程まで椅子に座っていた子供達は姿を消し、同様の姿へと変わっていた。
私たちが今まで歩いてきた廊下に、この建物中に積もっていた灰の様なものは全て・・・全て・・・
元は人だったモノ。
「いやあああああああ!!!!!」
「トルーデ様!」
「ごめんなさい!わたっ、わたし、私知らなくて!私、踏みつけて!私!私はっ!私は命を守らなければいけないのに!私は弱きものを助け、悪を挫く完全な善でなければいけないのにっ!わたし!私はっ!」
「トルーデ様ッ!!」
ブツンと何かが切れる音が聞こえ、そこで私の記憶は途切れた。
カリーン先生、「トルーデ様ッ!!(当て身)」とかしてそう。
ちなみに幻術をかけた人はこの場には出ていません。




