53 ミルフィーとシルフィー
「それで、魔導石とか設計図の事、それにお嬢様のことについて教えてもらっても?」
私達はクルトの後を追い、先程の場所から少し離れた廃墟の様な場所へと辿り着く。
どうやらここはシエルが寝泊まりをしていた孤児院の跡地らしくシエルが住んでいる所へと案内してくれた。
シエルはその跡地の地下に住んでいた様で、地下へつながる隠し階段のある部屋は瓦礫に囲まれ容易に見つけられなくなっていた。
「しまった、つい言ってしまってたか・・・ハァ、まあ仕方ねえか。王女様には隠し通せねえだろうしな。まず魔導石についてだが、これは数年前にお嬢様が考案した石でな、これを使うと本人のレベルよりも高い魔法が扱える様になるんだ」
おおぉ、すごい。それなら魔法のレベルが低い人達でも簡単に高威力の魔法が扱えるようになるって事だよね?
就職の幅だって広がるし。
「でも数年前に考案したという事は作られてはいるって事ですよね。どうして今更設計図が必要なんですか?」
「うわぁっ、びっくりした!お前どこから出てきたんだ!?まあいいや、それはだな、ここの研究者たちがお嬢様が呟いた事と魔導石を解析し魔導石を更に強化しようと目論んだんだ。それがお嬢様にバレて全ての魔導石は破壊、お嬢様は意識不明。作り方はお嬢様にしか分からなかったから何か設計図か手掛かりがないか捜索中とまあそんな感じだな」
カリーン先生、いつのまに・・・!途中から完全に気配消えてたよね。そりゃびっくりするわ。
「そのお嬢様というのはミルフィーという伯爵令嬢の事だよね」
「なんだ知ってたのか。まあ大方そっちの鈍臭い」
「シエルだべ」
「・・・シエルに教えてもらったんだろ」
鈍臭いといわれ間髪入れずシエルが名乗る。やれやれといった様子でクルトは言い直す。
しかし伯爵令嬢という単語について突っ込まれなかったという事はやはり・・・
「ミルフィーとシルフィーは同一人物でなく別人で、ミルフィーはここに隠されて届出もされなかった子供という事だよね」
「ミルフィー様とシルフィー様は双子だぞ。なっ、まさか知らなかったのか!?知っているかと思ってつい・・・」
私の予想通りミルフィーとシルフィーは姉妹、いや双子の姉妹であった。
私達はクルトから詳しい話を聞く事にした。
ラーゼン伯爵家では双子は不吉の象徴であり、最初は妹であるミルフィーは殺される予定だった。だが、母親から懇願され、人目に出さないという条件で育てられてきたのだ。
しかしその母親も病気で亡くなり、ミルフィーはついに一人ぼっちになってしまい、父親が研究していた魔法の強化についての研究に没頭するようになった。
疎まれている父親達から認めてもらうために。
その頃にどうやらシエルと出会ったらしく、クルト曰く久方ぶりに笑顔を見せるようになっていたらしい。
その頃にはミルフィーは研究も成果を上げ、遂に魔導石を作り出したのだ。
そして父親から呼び出され、学院の試験を受けるようにと言われたらしい。
父親の期待に応えようと頑張ったミルフィーは優秀な成績で見事合格した。
父親に愛してもらえるように。
しかし現実はそうではなかった。
父親が愛していた娘はミルフィーではなくシルフィーただ一人。
シルフィーはミルフィーほど優秀な子供ではなかった。しかし双子の為容姿は瓜二つ。
勉強は後からでも追いつける、魔法については魔導石で底上げができる。
故にシルフィーの名前でミルフィーに受けさせ、シルフィーが学院へ行く事になった。
それを知ったミルフィーは酷く悲しんだ。
父親に認めてもらうために行った研究も、父親に喜んでもらうために頑張った試験も、全てはほとんど会った事の無い顔がそっくりらしい姉のためであった事に。
さらに自身の研究により、民達が苦しんでいる事も知った。
だからミルフィーは自分の生きた証全てを消し去る為に魔導石を壊し、自分さえも壊した。
しかしそれでも父親は悲しむことはなかった。アレは元から死ぬ運命だった。母親の慈悲によって今までただ生きていただけだった。
しかし魔導石は惜しい、なんとしてでも作り方を突きとめろとミルフィーに関するもの全てを壊していったと。
「俺はお嬢様の母親に頼まれずっとお嬢様の事を見てきた。連れ出す機会なら幾らでもあったんだ。どうせあの父親もお嬢様の事なんてどうとも思っていなかったんだから連れ出したとしても文句なんて言われなかったんだ。でも連れ出したところで幸せにしてやれるのかと考え躊躇ってしまった。そうやってズルズルいってたらもう取り返しのつかない事になってしまってたんだ。本当に馬鹿な男だよ俺は」
これは・・・アレか、お嬢様の事を見ているうちに好きになってしまった兵士さんパターンですか!?
こんなに深く知ってるってことは結構仲良かったって事だろうし脈アリだったのでは。
いかんいかん。今はこういう話ではないはずだ戻ろう。
「よし、じゃあ話も聞けて謎も解決したことだし、私何しにここに来たか忘れちゃったし取り敢えずミルフィー伯爵令嬢を助けに行きましょうか!」
「孤児院の視察に来たんですよトルーデ様!しかしまた突拍子も無いこと言い出しましたねぇ。でも好きですよそういうの」
そういやそうだった。まあいいだろう、この話を聞いて放置しておくのもなんだかあとが悪いし、困っている人がいるなら助けるのが王女の役目でしょう!
シエルの知り合いみたいだしね。
「は、はは・・・王女様って大分イメージと違う、いやかけ離れてんだな」
「よく言われるよ。とりあえず次の目的地は本邸だね。案内任せたよ!」
私達はクルトの案内の元、ラーゼン伯爵邸へと歩みを進めるのであった。
ミルフィーとシルフィーは双子でした。
分かり易かったですかね。




