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43 妖精姫(おてんば)




 

 「先程グラスとその中身を消したのは私です。文句なら私が受け付けますよ?」



 そう言ってユディと令嬢達の元へと歩み寄る。



 「なによこのちんちくりんは!適当な事言わないで頂戴」


 「そうよ、貴女には関係ないわ、これは私達の問題でしてよ」


 「ちょ、ちょっとお待ちになって、自然を思わせる髪に太陽の様な瞳・・・まさか貴女、いや貴女様は・・・」



 令嬢の1人が気付いた様だ。先程とは打って変わって顔が青ざめている。



 「私はゲルトルーデ・ハイル・フェーブスですと申しますが、そうですか、ちんちくりんですか・・・そうですよね、見たところ同じ歳の子達よりも背が飛び抜けて小さいですし・・・」



 ちんちくりん・・・ちんちくりんか・・・ちんちくりんはなにも言い返せないな。

 現に今回他の貴族の人達を見て思ったけど、同じ歳の子はおろか、歳下の子達よりも私は小さかったし。おのれ成長阻害。



 「も、申し訳ありません!王女殿下に大変失礼な事を!」


 「それは良いですけど、先程無属性魔法の適性がある者のことを欠陥品と仰っていた気がするのですが。それは私が無属性魔法に適性があると知っていての事でしょうか?」



 ユディはちゃんと言っていたのだ。

 この場に無属性魔法に適性のある者が居る可能性がある上に差別的表現であるその言葉を言うのは止めろと。


 その注意を無視して言い続けたのだ。それ相応の報いは受けて貰おうかな。



 「しかし王女殿下は地属性魔法と光属性魔法の適性があり使用できるとお聞きしております!それらに適性があり使用できるのに精霊に愛されない無属性を持っていて使用できるなんておかしいですわ!」



 「そもそも精霊の力を借りて魔法は行使されているというのが間違いなんだけど・・・これってまだ言っちゃダメなんだっけ。まあいいや。じゃあハイ、これを見てもダメでしょうかね」



 そう言って私は時空魔法を使用し先程収納したグラスとその中身を掌へと出現させる。



 「これは無属性魔法と私の固有魔法を組み合わせたものになります。どうでしょうか?他の属性魔法では再現出来ないと思いますが」



 「な、そんなの嘘ですわ!グラスだって手品か何かに決まってますわ!」


 「王家の言葉に嘘偽りはありません。豊穣の女神フェブリアの名に誓って私は嘘偽りなど申していません」


 「そんな・・・!それもこれもこの女のせいよ!」


 「静粛に、今回のパーティは誰のどんなパーティであると心得ておるか」


 追い詰められた令嬢の1人がユディに掴みかかろうとするが、1人の男の声で皆が静まり返り動きが止まる。



 「げぇっ!父上!」


 「こらトルーデ!いつのまにか居なくなっておるわ騒ぎを起こすわ何をしておるのだ!それになんだ今の王女らしからぬ言葉は!」



 思わずげぇっ!と言ってしまった。やばい、王女としての雰囲気と威厳が一気に霧散してしまった。

 私はしゅんとした表情を浮かべ父上の様子を伺う。

 父上は一瞬罪悪感に苛まれた表情をし、大きなため息をつく。



 「もう少ししてから発表しようと思ったのだが仕方あるまい。宰相よ、アレを持ってこい」



 そう言って宰相と部下達は大広間から出て言ったかと思うと、何かの本を持って戻ってきた。


 「これは精霊様本人から頂いた本を増刷したものだ。この本を書いた本人である精霊様に先日お会いする機会があり、増刷の許可を得られた為こうして各家に1つ用意する次第となった」



 そう父上が話すと大臣達は各家へと本を配り始める。



 「《サルでも分かる!魔法丸分かりBOOK【決定版】~今日からあなたも魔法の達人だドン~》・・・なんだコレ」


 「マナにより魔法を使用する?エーテル・・・?」


 「こ、こんなの認められるか!今までの研究や精霊教についての否定ではないか!」



 各所から色々な声が聞こえてくる。やはり受け入れにくいよね。



 「まだ信じられない者も多くいるだろう。しかし、無属性魔法適正者が魔法を使用できないと卑下しないように、周囲からの偏見などで傷付かないように、正しい魔法への理解が必要であると私は考えたのだ。この国の王としても、無属性魔法の適正を持つ者の親としても」



 うんうんと理解を示す者、それならばあの理論が可能ではと話し込み出す研究者、まだ受け入れられない者など様々である。


 先程ユディに詰め寄って居た令嬢達数名はこの騒ぎに乗じて逃げて行ったようだ。

 まあ顔は覚えておいたけど。

 1人残っている先程青ざめていた令嬢は気まずそうにしながらもユディに謝罪を述べているようだった。

 まあ少しくらい反省はしたでしょう。今回はお咎め無しにしてあげようではないか。



 周囲は先程の本の事を話題にしながらまた先程の賑やかさへと戻って行った。

 うーん、めでたしめでたしってやつ?



 「してトルーデよ、父上に何か言うことはないか?例えば勝手に居なくなったしまったことや私も見たことが無い無属性魔法を使って見せたり・・・この前心配を掛けさせるなと言ったばかりだろう?」



 父上は良い笑顔で私に詰め寄る。

 父上の背後には母上とローゼンミュラー公爵夫妻、それに宰相であるベッカー公爵までもが笑いを堪えているのが見えた。

 騎士団長に至ってはすでに笑っている。



 「ご、ごめんなさーい!」



 私は謝罪を述べながら逃げるように人混みへ紛れ、カリーン先生達の元へと戻る。

 なんだか後ろからまたんかー!と声が聞こえた気がするが無視しておいた。



 「わはは!まさかお前から心配をかけるなという言葉が出てくるとはな!両親に心配を掛けすぎて私にまで相談が来たほどのお前が!」


 「ああは言ってもあの姫様、ガキのころのグスタフにそっくりだぜ?厄介ごとに口を出したり、友達を助けようと無茶しようとする所とかな。やっぱ子は親に似るもんだなあ!」


 「そうですね、あなたがいうと説得力に欠けますわね」


 「うるさいぞお前ら、ほら散れ散れ!」



 色々大変なお披露目パーティーになってしまったが、無事に終えることができたのだった。

お淑やかだった母親に似てるのかと思ってたのに、血は争えなかったのか自分そっくりになってしまい、こんなに自分は親に心配を掛けさせて居たのかと親になって初めて頭を抱える父上。


周囲にもそっくりだといじられる始末である。

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