28 対戦します
「おーい姫さん!来たぜ~」
「えへへ、僕も来ちゃいました」
ブンブンと手を振りながら大声で私を呼ぶやんちゃそうな男の子と、顔を赤らめもじもじしながら男の子の後ろからこちらを見る美少女が鍛錬場にやってくる。
「ここが王家の鍛錬場ですか・・・すごいですわ。危険防止のため周囲一帯に防御魔法がかけられているようですね。これなら私の技も存分に披露することができますわね!」
目を輝かせながら鍛錬場を見回し確認するユディ。
まさかやる気・・・なのか・・・?
「そうだろう、すごいだろう?もっと褒めるがいい」
自信満々に賛辞を要求するうちの兄貴。これ建てたのお前じゃねえだろ。
「それじゃあ姫さん、早速勝負するとしようか。ルールはどうする?なんならハンデつけてやってもいいぜ」
「ハンデなど必要ありません。手加減なんてしたら私、怒りますからね。ルールは、どうしましょうカリーン先生」
おそらく私とカリーン先生の鍛錬は普通じゃないだろうし、アレはルール無用死ぬか生きるかって感じだしね。
「そうですねえ、武器も魔法も好きなものを使用可能、ただし相手に致命傷を与えることは無しで。膝をついた若しくはそこの鍛錬場の線から出たら問答無用で負けという事でどうでしょうか」
「それで異論はないですか、ライムント様」
「ああ大丈夫だ、問題ない」
さも楽しそうにライムントは頷く。この戦うことが楽しみで楽しみでたまらないという目、カリーン先生にそっくりでめちゃくちゃ怖いんだけど。
赤色は戦闘狂属性でもつくのか。
「(ああそうだ、トルーデ様、加減をするということはしなくても良いですが、勝てば良いみたいな私の教えた卑怯な感じの戦法はやめてくださいね。アレは実戦のみの技ですので)」
カリーン先生は小声で私に向かって話す。
あぁ、目潰しとか足を引っ掛けるとかそっち系の奴ですね。
それは・・・皆さんの目の前でやるとなんて奴だと思われかねないので流石にやりませんよ・・・
「なにやってんだ、そろそろ始めようぜー」
ライムントは自身が帯刀している剣を、私は地魔法で作り出した木刀の形を模したただ硬いだけのなまくらの剣を構える。
カリーン先生の攻撃を受ける際、どうやっても普通の剣だとすぐ折られてしまうために、攻撃を受けても耐えられるかつ私の馴染みのあるものの形という事でこの武器に辿り着いた為、通常でもこの剣を使うことにしている。
「準備はできましたねお二方、それでは・・・開始!」
開始の合図と共にライムントは素早く距離を詰めたかと思うと私めがけて剣を振り下ろしてくる。
しかしカリーン先生のような無慈悲なスピードではない。
私は剣の軌道を読み剣を受け止める。
(ぐっ・・・お、重い)
ミシミシと木刀もどきを支える腕の骨が軋む。
このまま力で押されれば倒れてしまう。速攻で負けるのは何だか悔しい。それだけは避けねば。
「光よ・・・」
光魔法の詠唱し目眩しを発動させ相手が怯んだ隙に抜け出し体制を整える。
「眩しっ・・・というか姫さん短縮詠唱だなんてどんだけだよ。こりゃ本気出さないとやばいかもしれないな・・・火よ」
ライムントが詠唱した瞬間私は炎の檻に包まれる。
二重・・・いや三重か。普通なら消すのも一苦労な見事な火魔法・・・
「どうだ、すごいだろー!剣術だけで慢心してはいけないって母ちゃんに言われたからな、魔法の鍛錬だって頑張ったんだぜ!どうだ姫さん、降参するか?」
「降参なんてするわけないじゃないですか」
「そうかい!まあ姫さんならそう言うかと思ったけどなッ!」
ライムントが拳を強く握りしめた途端炎の檻はどんどん狭まり、炎が私に迫ってくる。
地魔法で相殺ならまず無理かなこれは。
これは降参すべきだったか・・・?
「無よ」
なんてね、私には先日習得した無属性魔法がある。
魔法同士なら魔法同士をぶつけ相殺させる必要がある。
その時は相手の魔法と同等の威力をぶつけなければ相殺しないし、属性により相性というのもあるため、先程の場合無傷で脱出することは不可能である。
しかしこの無属性魔法というのは、必要範囲のみ消滅させることができるのだ。
そうなれば私が逃れる事の出来る範囲のみ消滅させれば良い。
そうやって炎の檻から逃れ、今度は逆にライムントへと距離を詰め斬撃を繰り出す。
私達はお互いに剣を打ち合う。
なんか剣道の稽古してるみたいだなあと思いながらも、打ち合うことに集中しているようでガラ空きの腹部に蹴りを入れてみる。
予想外の場所からの攻撃にライムントは避けることができず、腹に強烈な衝撃を受け後ろに飛びのく。
「うぐっ、キッツ・・・マジか姫さん・・・意外と足癖悪いのな」
「ちょうど良い場所に空間が出来ていたので思わず蹴りを入れてみたまでです。では次は私の魔法をお見せしましょうか。光よ!」
私は光を集中圧縮させ放つ!
「うおあああああああ!!」
ライムントは見事な反射神経で飛び退き攻撃を避ける。
私はその無防備な姿を見逃すことなく小さな地弾を浴びせる。
ライムントは魔弾を相殺させるために火の魔弾を繰り出し、ぶつかり合った魔弾が小爆発を起こし煙が上がる。
「あー、参った参った、こりゃオレもまだ鍛錬が必要だなあ」
煙が晴れると、手のひらをひらひらとあげ降参の意思を示し座り込む擦り傷だらけで座り込むライムントがいた。
「す、すごいですわトルーデ様!トルーデ様も無属性魔法を使用できるようになられたのですね!」
ユディがこちらにうれしそうに駆け寄る。
私もということはユディも無属性魔法を使えるようになったということか。
まあ私と違って無属性魔法しか持っていないユディはマナを利用したことが無いからエーテルを感知しやすかったのかもしれない。
「先程の凄まじい攻撃は光属性魔法ですよね・・・?目眩しといい光属性魔法を攻撃に活用されるなんて思ってもみませんでした」
エルンストが座り込んでいるライムントの元へ駆け寄り手を貸しながらこちらに疑問を投げかける。
「アレは・・・光線です。光を収束させ一気に放つという技です。収束させることにより、火属性魔法に負けないくらいの熱を持たせることが可能です。しかしアレ、真っ直ぐにしか撃てない上に消費MPが桁違いで滅多に使えないんですけどね」
あれ使っただけでMPが100持ってかれるんだよ。
「お前・・・こんなに強かったのか・・・」
兄貴は驚きを隠せないのか目をこれでもかというくらい丸くさせ私を見る。
「これはお前も負けてられないよな。なあに、今からきちんと鍛錬をしたならば強くなれるさ。しかしトルーデがこんなに強いとは思わなかったよ」
そう言いながら人の良さそうな、私とよく似た顔を持つ男が鍛錬場に現れた。
「「父上!」」
「「「国王様!」」」
「どうしてここへ・・・?」
というか今の時間帯公務中では・・・?まさか逃げてきたの!?
「あぁ、勘違いしないでくれ!このためにやるべき事は全てやり終えて来たんだ!なあ、アンネマリー」
「母上まで・・・」
こんな、来ちゃった♡的な感じで一国の王と王妃が来て良いのか。
「私もいるぞ。我が娘が婚約者殿をボッコボコ・・・ゴホン、我が娘が魔法を披露すると聞いてな」
「お父様!」
「なんだ、負けちまったなあライ!鍛練が足りねえぞ!こりゃ帰ったらもっと厳しくしねえとなあ!」
「父ちゃん!」
ユディとライムントのお父さんまで来ちゃったよ。
もうコレ授業参観だよ。
「なんだ、2回戦をやるんじゃないのか?ほらイグナーツ、ユーディット嬢」
兄貴はまさか恥をしのんで謝ったのも虚しく、戦う羽目になったと分かり絶望の表情を浮かべ立ち尽くす。
次回、兄貴死す!
お願い、死なないでイグナーツ!あんたが今ここで倒れたら、エルンストやライムントとの約束はどうなっちゃうの? 時間はまだ残ってる。ここで誠意を持って謝れば、難を逃れられるんだから!
次回、「イグナーツ死す」。デュエルスタンバイ!




