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26 魔法とは




 「まず属性魔法というものについて。属性魔法とは、自然に含まれる『自然魔力(マナ)』と自身の体内に含まれる『体内魔力(コア)』を組み合わせることにより発動するの。『コア』は人によって違うものだから相性の良さも人それぞれで、それによって自分が使える属性が決まってくるの。私の場合、『コア』は闇の『マナ』と結びつくことができるけど、他の『マナ』とは結びつくことができないからイメージをしても闇以外は発動させることができないといった感じね」



 なるほど、それじゃあ私は、地と光と無の3つの『マナ』と結びつくことが出来て、それ以外とはくっつこうと思ってもくっつかないから魔法は発動しないということか。



 「では、固有魔法については、『マナ』を利用せずに自分の体内に含まれる『コア』というものだけを消費して発動するということでしょうか」


 「そうよ。中々物分かりが良いじゃない。えっと」


 「カリーンですニーレ様。イメージをすることによって魔法が発動するという事は間違いないでしょうか?」


 「イメージしたものがその属性の範囲内であるのならば例外なく発動するわ」


 「では無属性についてはどうなのでしょうか。こちらのトルーデ様とユディ様は無属性に適性があり、無に関するイメージをし、幾度なく発動させようと試みたのですが、全くと言ってもいいほど反応がなかったのです」



 無に関してイメージし得る事象、例えば消滅ということをイメージしても、ものが消えることは一度としてなかった。

 先ほどのニーレの言い方だと、その時点で発動していないとおかしいことになる。



 「ああ、無属性に関しては例外なのよ。マナとは別の物質、『エーテル』と呼ばれるものを利用して発動させるの。『マナ』は自然に含まれるもの・・・だから世界に満ち溢れる元素である【火・水・風・地・光・闇】についてのみに結びつくのよ。対して無とは自然には存在しないものであり、空や星、天体の輝きに含まれる物質である『エーテル』を利用して発動させるのよ。無属性を持つものは確か、生まれながらにしてそれを感じ取る力があるはずなんだけど」



 『エーテル』初めて耳にする名前のはずなのに昔からそれについて知っている、知っていたはずなのに知らないでいたという気持ちに襲われる。



 「他と違うものは淘汰される・・・人間の性かしら」



 【対象者の認識を確認。スキル及び加護を修正します】

 【スキル:繧ィ繝シ繝?Ν理解及び繧ィ繝シ繝?Ν感知はエーテル理解、エーテル感知へ、加護:繧ィ繝シ繝?Νの加護はエーテルの加護へと修正されました】


 最初から必要なものは持っていたのだ。

 足りなかったのは、その未知なる、異質なものへの認識だった。



 「やっぱり人間ってものはつくづく憐れなものよね。固定観念にとらわれそれを良しとし、異質なものへの理解を示さず、異質なものは見ないように、考えないようにする。貴方達の所で無属性が語り継がれることもなく忌み嫌われてさえいるのは、その自然の理を離れた力に対する恐怖心から、異質なものと判断し排除しようとしたという理由もあるんじゃないのかしら。私の勝手な妄想だけど」



 なんだか今私、新しい力を得た私はなんだってできるといった自信に満ち溢れているって感じで猛烈に試し撃ちがしたい気分だ。

 なんかこの力を使えばカリーン先生をぶっ飛ばすことも夢ではないのではと思い始める。



 「さて、もう聞く事はないかしら。無いならここら辺にはクソジジイの手がかりはなかったし、次の場所へ行くことにするわ」



 あ、そうだ。1つ聞いておきたい事があったんだった。

カリーン先生をギャフンと言わせよう作戦は後ほど考えることにしよう。



 「最後にもう1つだけ良いですか?さっき私の事を『神憑き』と仰っていましたが、アレはどういう意味ですか?」


 「あー、それ、それね、えーとそれはね、私が拠点にしてる国では貴女みたいなのを神憑きって呼んでるから思わずそう呼んでしまったのよ。嫌だったなら謝るわ」


 「謝るって事は・・・差別用語か何かなのですか」



 こっちでいう欠陥品のようなものだろうか。



 「ち、違うのよ!ただ私の知り合いの子はそう言うとすっごい不機嫌そうにしてくるから同じように嫌なのかと思って・・・神憑きっていうのは、神が愛し取り憑いている特別なモノという意味を込めて言っている呼び方よ」



 おおう、なんだか神に愛されてるとか言われると悪い気がしないかも。

 特別感というか選ばれしものというかチート感があるなあ。



 「神憑きがいることによってその土地は守られ、大きな力を得ることができるのよ。ただ、神憑きは大切にされる事が多いのだけれど、得体の知れない力を持つ事を恐れられ、時には戦争の道具として扱われたり、神憑きによって与えられた幸せは紛い物だと言って追放されたりする事もあるわ。そんでもって取り憑いた神の強さによってデメリットがあったりとかも聞いた事があるわね」



 上げて落とされた感。

 というかなんだデメリットって、まさかそのデメリットが我が身に蔓延っている呪いとかか?まさかの呪いは永遠に解けません的なサムシングですか!?


 そ、そんなー!



 「魔法とか分からない事があるなら、あのクソジジイの書いた本ってのが癪だけどこれを読んでおくと良いわ」



 そう言ってニーレは分厚い本をこちらに放り投げる。

 それをカリーン先生が素早い動きでキャッチをする。



 「なになに・・・《サルでも分かる!魔法丸分かりBOOK【決定版】~今日からあなたも魔法の達人だドン~》いや何コレ」



 カリーン先生がなんとも言えない表情を浮かべながらしげしげと本を眺める。



 「私もこのタイトルは頭沸いてんのかクソジジイってなったわよ。だけどね悔しいことにコレ、メチャクチャ分かりやすいのよね。それがまたさらにムカつくんだけど・・・」



 ニーレはまた最初のように不機嫌そうな顔をし始める。



 「あぁ、そうだわ。ついでに1つ頼みごとをしても良いかしら」


 「魔法の事を教えていただいた上に、本までいただきましたし、私達に出来ることがあるならばお手伝いしますよ」



 そうだよね、対価は必要だよね。

 一体何を求められるのだろうか。



 「なら良かったわ。この辺に居ないと信じたいんだけど、緑色の目と髪で、長い髪を後ろまとめ、耳に変なモノを付けたやけに見目の良いクソジジイにもし会ったなら、『お前の拾ってきた子がお前が居なくなったせいで寂しがってるから早く帰ってやれ』って伝えといてくれないかしら」



 普通にただの言伝のお願いだった。

 しかももし会ったならばという条件付きの。

 ニーレさん、魔法について教えてくれた普通に良い人・・・いや精霊さんだった。

 誰か何か捧げものでもしなければいけないのだろうと思った数秒前の私を消し去ってくれ・・・



 「よし、それじゃあ私は別の場所へと行くことにするわ。短い間だったけど、面白い子もいたようだし楽しかったわ。はぁ、一体どこに行きやがったのかしら・・・過労死女神のお願いもあるしあの子には悪いけど後回しにしちゃお。」



 今までの不機嫌そうな表情から一転して、ニコっと笑顔を浮かべ手を振り私達に別れを告げると、ブツブツと何か言いながらニーレは闇へと消えていった。


 完全に予想外ではあったが、魔法に関する胡散臭そうな表紙の本も手に入れたし、無属性についても分かったことだしおおよそ予定通り・・・なのかな・・・?



 「そんな・・・嘘だ、俺はこんなの絶対に認めない・・・認めないからなあ!!」


 「イグナ、諦めろ。コレが世界の真実という奴だ。そして無属性魔法まで手に入れてしまったユーディット嬢は恐らくイグナの倍以上、いやそれ以上の力を持つだろうとオレは推測する。引くに引けなくなったってのは分かるがよ、でも素直に謝った方が良いとオレは思うぜ?」


 ライムントは兄貴の肩をポンポンと叩きながら謝罪を促す。

 兄貴は黙ったまま動かない。



 「兄上・・・父上は今日謝るようにと仰られていました。先延ばしにするとまた怒られますよ?」



 私も追い打ちをかけてみる。が、依然として兄貴は項垂れたままだ。



 「イグナーツ王子殿下、自分の非を認め、悪かったと反省することが出来るのが大人というものですよ。それに自分を省みることが出来るというのははっきりいうとかっこいいですよ。そういう誠実なタイプの方がぶっちゃけモテますよ」



 兄貴がピクリと反応する。

 もう一声。



 「はっきり言って今のイグナ様、猛烈にダサいですよ。もう頓珍漢な事を言って暴言を吐くという恥を行ったのですから、その上勝負に負けて恥を上塗りする前に謝ったら如何ですか?」



 エルンストが最後の最後に兄貴の心を最も抉る言葉を浴びせた。

 

 兄貴はゆっくりと顔を上げユディを見る。



 「う・・・悪かったよ・・・すまなかった(小声)ほら、コレで良いんだろ!オレは謝ったからな!」



 そう言うや否や、兄貴はプイと顔を背けスタスタと部屋を出て言ってしまった。



 「ユーディット嬢!アイツも一応は謝った事だし許してやってくれねえか」


 「すみませんユーディット様。後できつく言っておきますので、またお会いになられてください。それでは失礼致します」


 「それじゃあまたな!姫さん、対戦、楽しみにしてるぜ!」



 そう言い残し2人は兄貴の後を追って行ってしまった。



 「えぇーっと、では私達も今日のところは解散します?」



 なんか鍛錬をしたわけでもないのに疲れてしまった。

 それにユディは早く無属性魔法が使ってみたいといった感じでウズウズしているみたいだ。

 横で当然見せてくれるんですよねアピールをしながら、こちらに視線を向けウズウズしている赤い人の事は視界に入れないことにした。


ニーレさんただの良い人だわ。

兄貴は友達には恵まれてると思うからあの歪んだ性格はその他の事で生まれたんだ。


ライムントは普段王子のことは呼び捨てにしていますが、姫と令嬢達の前だったのもあって一応最初は様付していました。

途中で面倒くさくなったか忘れちゃったんでしょうね。


登場人物紹介に色々追加しました。

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