10 仲間が増えました
「先程は大変失礼致しました、王女殿下」
コホン、と咳払いをしカリーン先生は背筋を伸ばしこちらに向き直る。
「こちらこそすみません。本物の忍者だと分かって興奮してしまいました。お聞きになるという事は、カリーン先生も転生者ということでよろしいですか?」
「はい。失礼ですが王女殿下、『救国の乙女~あなたは誰と共に歩むのか~』はご存知でしょうか」
「バッチリご存知です」
「では16の時に亡くなってしまわれる事も」
「分かっております。その為に回避しようと思って体力をつける為に体力トレーニングをしたのに高いものでも並、防御は紙、極め付けに呪い状態というチート転生とは程遠い現実に打ちのめされております」
「あぁ・・・」
カリーン先生は否定する事なく気まずそうに顔をそらす。
「あ、そ、そういえばカリーン先生の推しキャラはどなたなのですか?今までリアルで話せる友達がいなかったので沢山お話ししたいですし!因みに私の推しは悪役令嬢のユーディットちゃんです!」
「あぁ!ユーディットちゃん!良いですよねえ~ あの第一王子にはもったいないほどの美人で健気な子ですよねえ~私の推しはですね・・・あの・・・大変申し訳無いのですが・・・」
恐る恐る顔を上げてくる。えっ、何?何なの?
「そのお・・・私の推しは王女殿下・・・ゲルトルーデ殿下なのです。なので、せっかく転生したのだから推しのために頑張ろうと努力して強くなって、王女殿下の教育係にねじ込んでもらったのです・・・生まれのせいか、侍女になるという事は私の家的に無理だったのでそれならば別の方法で近づいて死亡フラグをバッキバッキに破壊してやろうと思って学校も飛び級して・・・そして今に至るのです」
「そ、それは・・・中身が私なんかですみません・・・」
性格や育ちに関しては殆ど原型を留めてない上、中身が転生者だなんてガッカリだよね。
申し訳無い・・・
「いえ!ぜんぜん大丈夫です!むしろ活発な王女様も良いなとか、ゲームと違う面が見れてちょっとお得だなとか思ったり思わなかったり!それに一番は見た目!見た目で一目惚れしたので性格は二の次なんですよ!それに二次創作だと思えばこれも良いかなとか。そう!私!基本地雷ないですし!王女殿下については二次創作ではその死因や生い立ちから【自主規制】だとか【自主規制】とかも盛んで・・・!いやとにかく何があっても私は大丈夫、むしろOKというか、生きているだけで現実に目の前で見れただけでもう感無量というか・・・尊い・・・」
カリーン先生は興奮して話すだけ話したと思うと、瞼を閉じ掌を合わせ天を仰ぐ。
なんだかいつのまにか拝まれる状況になってしまってむず痒い。
というか今聞き捨てならない酷い言葉が聞こえた気もしたがスルーしておこう。
なんか突っ込んだらそれについてまた熱く語られそうで怖いから黙っておいた方がいいだろう。
「でもまさか呪われているなんて思いませんでしたよ。誰にかけられたのでしょうか・・・繁栄の加護が失われてしまえばこの国は途端に成り立たなる恐れもありますし、やはり敵国と手を結んだ者や、それこそ敵国の間者という線が濃厚でしょうか・・・それとも王女殿下を弱らせて何もできない状況に追い込み、傀儡にしてしまおうという企みでしょうか・・・」
あっ、戻ってきた。
敵国と繋がっているものならば、褒賞や地位の約束と引き換えに要を崩すだろうし、敵国の者ならばなおさらだ。貴族の中には上昇志向というか、我こそが王にと言う者も多い。
私を無力化し、実質国を手中に収められるだろうからこの線も捨てがたい。
しかし私のこの状況・・・
「なんというか敵だらけですね王女殿下」
言われた。
そうだよ!敵だらけだよ!誰が呪いをかけたかわからない以上、下手に他人を信用することなんてできないし、私は16の時に誰かの手により不審死をとげるのだからそれを回避するためにも結局は自分自身で身を守り戦うしか無いのだ。
「しかしですね、ここに同じ場所の出身で、王女殿下の事が最推しの人間が1人いるんですよね」
「カリーン先生!」
「大丈夫です。私は王女殿下の事を何があってもお守りします。それと同時に王女殿下を完璧に完全に私好mゴホゴホ育て上げてみせます!」
カリーン先生は息を荒げ興奮した様子で迫ってきた。
頼もしいのか頼もしく無いのか色々と不安要素も多くよくわからないが、私の死亡フラグを折るための味方ができました。
「仲間がふえるよ!」
「やったねトルーデちゃん!」