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「鬼」+「アイドル」=おにどるっ!!  作者: 瓜姫須臾


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7/17

少女は島での生活に思いを馳せる!!

遅くなりましたが、本日分のお話です。

それではどうぞ!!


 サグメは、鬼の里にいる鬼ではかなり若い方だった。



 鬼は子どもがなかなか生まれないので、一人生まれただけでも、その年は一年中、お祭り騒ぎになる。


 彼女が生まれたときは、シキが生まれてからの五年間は、一人も生まれていなかったため、盛大な(といっても、限られた物資の中で、という注釈付きだが)生誕祭が行われたらしい。

 その後、すくすくと周囲の願い通り、明るく元気な少女へと成長したサグメは、周囲の鬼達からも可愛がられ、何をしても大抵の場合は軽く叱られるだけで済まされていた。


 だが、そんな彼女でも、一つだけどうしても許されないことがあった。



 それは、島の外へ出ること────。



 古くは江戸時代あたりに結ばれたという人間との約定により、角が大きい彼女はそれだけが許されなかった。

 そうして、出られるはずのない島の外や、踏み入れられないはずだった人間社会にあこがれを募らせ、夢を見ながら16年間過ごしてきたのである。




そんな彼女が生まれた鬼の里が、東京近郊の海に浮かぶ離島・鬼ヶ島(おにがしま)



 島に住むサグメ達の里も、元は、京都付近に位置する大江山に平安時代頃には既に存在していたらしい、と大人や老いた鬼から彼女は伝え聞いている。


 江戸時代に、幕府主導で住む場所を制限されて管理されるようになった鬼達は、明治維新以後の日本政府の下でも、変わらず居住区域や位置を管理されていた。

 特に戦後以降は、鬼が居住している区画が他の人間が住む市町村とは行政単位で隔離され、単独の自治体名や専用の役場が設けられ、直に政府の管轄下へ入っている。

 サグメの生まれた里も例外ではなく、江戸時代以降、東京近郊の鬼ヶ島へ移り住むよう指示をされ、現代まで生活してきたらしい。


 といっても、彼女が生まれたときには当然ながら、すでに鬼ヶ島に大江の里は存在していたため、京都の大江山を見たことはない。


 暮らしとしては、江戸時代の農村の暮らしの延長上にいるような感じである。


 一応、時代に合わせて、最低限の物資や道具は支給されているが、それも本当に最低限のレベルであり、決して恵まれているわけではない。

 例えば、自転車は平成に入ってから持ち込まれるようになったが、自動ではなく基本的なママチャリであり、型落ち品や古びた中古品のみである。


 これも、鬼に人間の開発した高性能な機械を与えることで脅威になることを恐れた政府が、物品の融通を渋っているせいである。


 しかし、鬼の不平不満を買いすぎるのも恐れており、結果的な折衷案として、一般家庭に自動車が普及し終わったあたりで、ようやく鬼の里へ自転車を型落ち品や中古品を少しずつ融通しているというのが実情だ。


 だが、生活的なインフラはまだまだ整備不足であり、電気もガスもまともに通っていない。


 各地の鬼の里でも電気ガス水道が通されているのは、里に開設された役場とその職員の滞在する宿舎、そして鬼の長老の邸宅、人間と鬼で行う会議や来客を出迎えるなどの用途で使う邸宅のみである。


 料理は共同の炊事場で行って各家の囲炉裏や火鉢で保温していたし、洗濯も共同の水場で女性の鬼が協力して行っている。

 本当に、江戸時代の暮らしをそのまま続けてきたような感じなのである。



 電気がほぼない暮らしであるため、鬼の里の毎朝は、日の出とともに始まる。



 サグメをはじめとした女性の鬼は、家事炊事が主な仕事であるため、毎日、朝一で共用の井戸まで水を汲みにいく。

 きっちり必要な量を水瓶の中へと汲み、重くなった水瓶を家へと運ぶ。

 鬼は女性も力持ちであるため、10リットルを汲んだ水瓶であっても軽々と持ち上げる。


 その後は、一日、炊事や家中の掃除、里の美化活動に取り組む。



 基本的に農作業や島内での家畜の世話、動物を捌く作業は男性の鬼の仕事だ。



 時期によっては、島内に作られた採石場で肉体労働をし、外貨を稼いだりもする。

 稼いだ外貨は、島に物資を融通してもらう時の対価として支払う時に使用されたり、人間社会で働く鬼を支援する用途で扱われることが多い(人間社会で働く鬼ももちろん外貨を稼いでくる)。



 土間に置かれた囲炉裏の上に吊るされた鍋が立てる湯気は、いつもお腹を空かせて帰ってくる男性の鬼にとって待望の食事の合図だった。



 炊事を早めに終えた女性の鬼は、乾いた衣服や手ぬぐいを(ひつ)長持(ながもち)と呼ばれる収納具へしまいつつ、帰ってきた男性の鬼の汚れた衣料類を受け取ると、洗濯するためのかごへと入れる。


 季節ごとに島で採れた野菜や、獲物を限られた器具で調理した質素な料理に、たまに栄養価の観点から政府より支給される食材や調理済みの料理(いわゆるレトルトパックのようなもの)を平らげた鬼達は、これまた共用のお風呂場で一日の汗や垢を濯ぎ、日が落ちるとともに就寝する。


 冬場は凍死しないように酒類を枕元に置いていつでも摂取できるようにしたり、囲炉裏の残り火に布団をかぶせて炬燵にして暖を取ったりした。


 そうした、現代の文化に染まり切った人間からしたら、かなり極限に感じる生活ではあるが、サグメからしたらそれが当たり前であり、昨日まで普通に送っていた生活なのである。


******


 いつの間にか、シキの話そっちのけで里での暮らしを回想していたことに気づいたサグメは、慌てて彼の方へ視線を動かす。



 そこには少しジト目で彼女を見つめ返す彼の姿があった。


「えっと、その、わざとじゃなくって、これは……」


「……昨日の今日だ、里での暮らしを思い返して今日から本格的に始まったこちらでの生活と比べてしまうのは致し方のないことだ。

 だからそこまで怒る気はない」


 慌てて、気が遠くへ飛んでいたことについて弁明しようと試みた彼女の考えも、彼にはお見通しだったようだ。

 慣れない環境へ来たばっかりでは、そうした物思いに耽りやすくなるのは誰であっても同じであり、彼もそのことについてグチグチというつもりはないようだ。



 そこまで追及されないと知った彼女は、ホッと胸をなでおろしたが、そこへ予想外の追撃がきた。


「だが、気が散るのはよくないな。

 故に、明日までにこの一覧表を暗記すること。

 覚えられた量に応じて、明日の食事のデザートが増減するからな」


 彼の言葉とともに、サグメの目の前に提示されたのは一枚の紙。



 そこには、こう書かれていた。




────“明日からできる、必要最低限の敬語マナー”。





 そう。



 敬語を生まれてこの方正しく使ったことのない彼女のために、人間相手でも失礼のない敬語を最低限覚えられるように単語や用例の文を簡単に集めて作られたプリントだった。

家事や炊事以外のことに向けて頭を使うのは苦手であるサグメの顔が引きつったのは、言うまでもない。


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

また、100pvありがとうございます!

これからも頑張って書いてまいりますので、しばらくお付き合いくださると嬉しいです。

次話は明後日の18時に投稿予定です!

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