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くじけない少女!!/青年とトップアイドルの邂逅!!

250pv超えてました!

そしてブクマが3つも付いていました……大感激です……!

本当にありがとうございます!

それでは、お話の方をどうぞ!!


「うんうん!

 いい感じいい感じっ!

 サグちゃんは目鼻立もはっきりしてるし、体型もすごくメリハリがあるし、化粧さえ気をつければばっちしアイドルらしくなるね!」


「さ、サグちゃん……」


「ん?

 あー、ごめん。馴れ馴れしかったかな?」


「いっ、いえ!!

 そんなことありません!

 ちょっぴりこそばゆいというか……慣れてなくて照れたというか…………でも、すごく嬉しいです」


「そっか。それならよかった」



 サグメの頭にポンっと優しく手を置いた瑠衣は、そのまま自分の指で彼女の柔らかい髪を撫で梳いた。


 サグメはとても努力家であることを、ここ数日間で瑠衣はもの凄く感じ取っていた。




(こんなに努力家で、素質もあるこの子を壊そうとしたヤツらのこと、わたしは許さない)





 瑠衣は、一週間くらい前の今頃の出来事を思い浮かべ、サグメをしっかり育てようと心に誓った。



******



 瑠衣から渡されたチラシを持って拠点へ帰宅したサグメは、改めて鞄からチラシを取り出して眺めていた。



(……さっき見てきたL.I.A.のステージ、すごかった。

 あたしは、アイドルってなんなのかあんまりよくわかってなかったけど、あの女の子たちのステージで歌って踊る姿を見て、なんとなくわかった)



 チラシを眺めながら、彼女は頭の中で昼間に見てきたライブの光景を脳裏に浮かべていた。



(……アイドルは、ファンとか多くの人に「夢を与える存在」なんだって!

 あたしは、鬼のみんなから希望を「託された」。

 だから、使命のため、人間に鬼を知ってもらおうと思って歌ってた。

 けど、きっと、それだけじゃ良くないんだ。

 鬼のみんなのためだけじゃなく、ファンのために、聴いてくれる人達に希望を抱いてもらうために、歌って踊って笑顔を振りまく。

 きっと、元気になってもらおうとかそういう相手のために、歌ってこそ真のアイドルになれるんだ。

 だからこそ、あのL.I.A.が人気アイドルとして多くのファンがいるんだ、きっと……)



 サグメは、ライブでのアイドルファン達の様子やライブの光景を目の当たりにして以降、「アイドルとは何なのか」を考え始めていた。



 この間の路上ライブでは、「鬼のことをわかってほしい!」という気持ちが前面に出ていたため、人間に白けた目で見られていた部分もあったのではないか。




 独りよがりになっていたから、心に響かなかったのではないか。




 真剣に考えるサグメに、シキは気分転換どころか彼女の心に闘志を燃やすきっかけになったことに予想外の驚きを感じていた。



「サグメ、今日は何が食べたい?」


「…………えっ?晩御飯?

 んーと、ハンバーグかな!」




 何にせよ、プラスに働いてくれたのはとても良いことだ、と納得した彼は、密かに本日の晩御飯を少しだけ豪華にするべく、どんなハンバーグを作ろうかと頭の中で考え始めた。


******



 翌日────。


「違うっ!!

 そうじゃない!」


「はぁはぁ……っはぁ……はい!」



 ピアノと譜面台、メトロノームの置かれた防音室。


 そこでは、時折、怒号が飛んでいた。




 ここはボイストレーニング教室であり、今日、初めてその門を叩いた少女が厳しい指導を受けているのであった。



「あなた、発声もしっかりできていないのにアイドルなんて無理じゃない?

 人間に恐怖を与える大きな角もあるし、きっと向いてないわよ。

 ちょっとくらい見目がよくとも、その角と歌声のせいで台無しね」


「……でも、あたしはそれでもやらないといけないんです」



 鬼の生活を支援する機構の職員の紹介で来たはずのボイストレーニング教室なのだが、どうやら今日担当のトレーナーは鬼に対する偏見を強く持っている人間だったらしい。

 人間社会に出てきてまだ日の浅いサグメは、こうして一対一で直に偏見を言い放たれるのが実は初体験であり、彼女は少し心が痛むのを感じた。


 だが、それでも彼女は食らいついていこうと必死になっていた。



 先日のライブで見たアイドル達の姿、その熱量、そしてファン達の熱気。

 それらを思い起こし、自分を奮い立たせているのだ。



 全ては、自分もあのアイドル達と一緒になってステージで多くの存在……人間も鬼も関係なく、多くの存在に夢を与えたい、希望を届けたい、と心に強く誓ったからだ。


 瑠衣が渡してくれたオーディションのチラシで、目標を実現させる手段は見えてきた。


 その最初の一歩となるこのボイストレーニングくらいで心が折れていては、これから先の活動をこなしていけない、と彼女は考えている。




 だから、どんな言葉にもくじけずに食らいついている。



「はぁ……まあいいけど。

 とりあえずもう一回、さっきと同じ音を引くから教えたように声を出してみなさい」



 瞳に燃えるサグメの闘志に、ため息をつきつつピアノを再び弾き始めるトレーナー。


 その音に合わせ、お腹に力を入れて声を絞り出すサグメだった。


******



 サグメをボイストレーニング教室へ送り届けたシキは、単身、都内のとある公園へと来ていた。



「お待たせしました!

 あなたが磯城タカヒコさん……ですね?」




 後ろからかけられた声に、ゆっくりと振り返る。






 そこには、きちんと手入れの行き届いた髪を一つに結び、カジュアルな服装に身を包んだ少女が立っていた。


「ええ。

 あなたが間広瑠衣さんですね。

 お忙しい中、ご足労いただき申し訳ない」



 言葉とともに瑠衣へ頭を下げたシキだが、彼女はすかさず頭を上げるように伝える。



「今日、お声をかけたのは他でもない、オーディションに関してお伺いしたいことが……」


「サグメさんに渡したチラシのことですよね?

 もしかしたら心配してるのかもだけど、大丈夫です。

 ちゃんと、社長でもある春野プロデューサーには話を通してありますから」



 どうやら、瑠衣はシキが懸念していることを見越していたらしい。


 前もって最高責任者へ話が通っているのなら、彼も安心してサグメにGOサインを出せる。


「こちらの懸念事項まで予測して対応しておいてくださっていたとは……。

 ……ところで、何故、ほぼ初対面である我々にそこまでしてくださるのですか?」



 感心したような表情を一変させ、瞳を鋭く尖らせるシキ。



 彼が一番警戒しているのは、実は瑠衣である。


 見ず知らずの鬼に優しくできる人間なんてほぼおらず、こうした情けを盾に金銭や見返りを要求されてもおかしくない、と彼は考えている。

 彼は、仕事として人間社会へよく来ていたが、人間同士であってもそうした醜い事件をよく見聞きしてきた。




 その経験上、警戒はしてもし足りないし、何よりサクヤから頼まれたサグメのサポート役である以上、彼女を守るために警護するのも任務の一つである、と思っている。



「その疑問はもっともな物だと思います。

 ……実はわたし、幼い頃に鬼の男性に助けてもらったことがあるんです。

 周囲の人間は誰も信じてくれなかったというか、鬼のことを悪者だと決めつけていましたけど。

 人間の中では、差別は良くないみたいな世の中の流れになってますけど、鬼に対しての差別は未だに公然と黙認されているって、おかしいと思うんです。

 わたしは鬼ではなくて人間だけど、だからこそ人間の鬼に対する意識を変えたい。

 そう思ったことが、わたしのアイドル活動の原点なんです」



「意識を……変える……」



「先日、偶然ではありますが、柏駅前での路上ライブを見かけて、わたしは鬼であるあなた方のライブに輝きを感じました。

 光る原石とは、正にこういう風に感じるものなんだな、と。

 あなた方の活動を手助けしたいし、わたしはサグメさんを育てて、近くで成長していく姿を見てみたい。

 そう、思わせられるだけのものがあのライブにはありました。

 鬼である彼女とあなただからこそ、できるアイドルの形がきっとあるはずです。

 それを、わたしもプロデューサーもサポートしたいと考えています」


「…………」


「プロデューサーは、機構からもあなた方の引き受けを依頼されていますし、責任をもってお二人とも迎え入れる準備をされています。

 体裁や形式の都合上、オーディションにて、他の受験生と一緒に実力を披露していただかないといけませんが、わたしがサグメさんを指導して合格ラインまで実力を伸ばすお手伝いをしますので、そこはご安心ください」



 すごい熱量の瑠衣に圧倒されていたシキだが、一通りの説明を聞いて、彼女ならば信頼して協力を仰げると判断したらしい。



「……そうですか。

 理由や経緯はよくわかりました。

 初っ端から躓いていた我々にとって、これ以上ないほど渡りに船であるのは事実です。

 機構で紹介をされていた方がプロデューサーであるなら安心ですし、これほど熱意ある瑠衣さんが指導してくださるなら、何も懸念する必要はなさそうですね。

 しかし、わざわざここまでしていただいて何のお礼もないのは申し訳ないので、是非、今度サグメも交えた食事会でもどうでしょう?」


 口を開いて、理解した旨を伝える。


 その表情は、変わらず真剣な表情ではあったが、先程まであった瞳の鋭さはなかった。

 最後にさらっと食事会を提案できるあたり、(サグメには若干甘かったり空回りしているものの)シキもまた相当できる男なのである。


「ええ、是非、その際にはご相伴に預かりたいですね。

 あ、そういえば連絡先、ちゃんと交換しておいた方がいいですよね?」


「そうですね。

 サグメには私の方から伝えておくので、とりあえず私と瑠衣さんの分を交換すれはよろしいかと」



「わかりました。

 えっと、こっちがアドレスで……」


「……はい、登録しました。

 ついでに、LINEAでも連絡先交換しておきますか」



 アドレスやLINEAというSNSでの連絡先を交換し終えた二人は、公園を後にしてそれぞれの帰路についた。


ここまでお読みくださりありがとうございます!

これからも頑張って更新していこうと思います!!

次話は明後日の18時に更新します!

よろしくお願いします!


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