鬼とは!!
久しぶりの新作投稿であり、また、卒業制作として制作を始めた作品です。
至らぬところもあるかとは思いますが、どうぞ作品をお楽しみくださいませ。
鬼。
それは、古来より全世界に存在してきた、人間と似た姿をした者。
何時の時代より、現在のように人間に認知されるようになったのかは、考古学者の中でも意見が割れたままだ。
最も、現在のように白日の下であっても偏見に晒され、虐げられる存在と化したのは江戸以降の「被差別身分化」が原因であるというのは、どの考古学者に言わせても同じである。
得てして人間は、鬼を「自分達と全くルーツの異なる生命体だ」と考えてしまいがちだが、その実態は現代の人間と起源を同じにした人間の亜種。
突然変異した個体が普通の人間の目から逃れて集い、集落を作って細々と血を残してきた「結果」であった。
太古の昔には、角を持って生まれてきた人間は「神の御使い」と崇められたが、時代が下るとともに「卑しい者」、「不吉な存在」へとなり果てた。
何時の頃からか、角のある赤子を生んだ親は、問答無用で自らの子を山奥へ捨てねばならず、その後は子を成すことを禁じられた。
また、何らかの病気で角状の突起が生えてしまった者も、「悪霊に憑かれた」と気味悪がられ、他の者へ穢れが移らぬよう、四肢を拘束されて山奥へ投げ捨てられた。
そうした扱いの中で奇跡的に生き延びた者が集い、人目につかない山奥の秘された地にて小さな集落を作って子を成し、血統として形作られていった結果、角はいつしかその血族特有の身体的特徴として固定化された。
時々、虐げられて逃げてきたり、山へ捨てられた者を新たに同士として迎え入れ、じわじわと人数を増やしていった鬼の祖先達は、やがて日本各地へと枝分かれしていった。
その過程で、過酷な山奥での暮らしに鍛えられ、強く進化した体を武器に人間の集落を襲う者や、自身や祖先の恨みをもとに快楽的に人を嬲る者が出て、人間にも鬼の存在が知れ渡ることになった。
それ以降、度々人間からは討伐隊を組まれ、「鬼は人間に害成す存在」、「退治すべき悪しき者」という認識が浸透していった。
特に、現代に「桃太郎伝説」として伝わる「鬼ヶ島への鬼討伐遠征」は、その風潮を強め、より鬼への偏見を煽る契機になったとされる。
その後、物語の悪役として登場することも増え、勧善懲悪ものの悪役といえば鬼……という図式と化した。
戦国時代には戦力として重宝されたこともあったが、太平の世を築いた江戸幕府の主導によって、「被差別身分」として「鬼」が制定されたことで、再び虐げられて追いやられる存在となった。
こうした流れを組む現代では、鬼討伐をずっと行ってきた桃太郎一行の子孫が資産家となり、メディアで実権を握る存在として、事実上、世論を操作している。
そして今日。
一人の鬼の少女が人間達の暮らす地へ降り立った。
その背中に、鬼達の希望を背負いながら────。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。
次話は明後日の午前9時に投稿いたしますので、お楽しみに。