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十物語  作者: ジェムシリカ
1章
5/5

もちよこ 5話

2月14日火曜日。

なぜか緊張している私がいる。

今日は先輩方の無駄な計らいで部活はない。あれから何度か卓司と話したり行動を共にしたりすることがあったが、これといったことがなく平常心のまま、過ごせていたと思う。

が、今日は違う。

登校中は前日に作ったチョコかけクッキーが気になり、何度もカバンの中をチラチラ。

卓司とすれ違っても、意識しちゃって普段の挨拶さえもままならない。

授業なんて耳に入ってくるわけがない!


そうしているうちに昼休みになっていた。

今日は女子が出たり入ったりの連続で教室中にチョコレートが飛び交う。

しかし、どれも友チョコ。

今時、女子が男子に本命を送ることはないのかもしれない。

義理でも女子が男子に渡しているところを見たり聞いたりすることはなかなかない。

だから、義理だとしてもそういうところをクラスメイトに見られると付き合っているのではないか?という噂が学年中に広がる。

実際、中学の時は卓司に渡すところを見られていてカップル疑惑が浮上してた。

まぁ、そんな噂は時間とともに消えていったけど。

結局、昼休みにも卓司に渡せなかった。

というのも、先輩方へお礼を込めて渡しに行ったら親戚のおじさん並の絡み方で、


「卓司には渡したの?」

「まだです」

「えぇ〜!まだなの。とっとと渡しなよ」

「あ、はい。じゃあ失礼します。っっってなんで2人とも付いて来るんですか!」

「面白そうだから」

「私達がいないと千代ちゃん、渡せないかなぁ〜っと思って」

「先輩方がいる方が渡しにくいですよ。自分のクラスに戻ってください!」

「そんなの嫌だ〜」

「分かったわ。見えないところに隠れるね」

「何も分かってないじゃないですか!隠れて見るくらいなら隣にいる方がマシですよ!」

「そう?なら隣にいるね」

「そういうことじゃないんですよ!!!」


というわけで先輩方を説得させるのに昼休みを使い切ってしまった。


放課後、廊下でスタンバイ。

卓司が出てきたらその後ろから追いかける。


「卓司、今日も一緒に帰ろっ!」

「いいよー」


これが部活のない日の放課後の日常。

卓司は「待つ」ということができない。

だから、こうでもしないと一緒に帰れない。べっ、別にいつも一緒にいたいから帰るわけじゃない!

2人での帰り道。

いつもよりそわそわする私。

心臓の鼓動のせいで卓司が話していることがかき消される。

しきりにカバンの中を気にしてしまう。

クッキー割れてないよね?

ちゃんとカバンの中に入ってるよね?

最悪の展開が脳裏をシュタタタとよぎる。

けれど、何も変わらない帰り道。

卓司の話をただただ私が聞いてるだけ。

学校で起きたことや家での些細なこと、卓司がふと思いついたことなどを聞く。

学校の帰り道はそんな時間。

そんな帰り道が私は好きだ。

だって、卓司の思っていることって私からしたら、おかしくて新しくて不思議なことなんだもん。

そんなこんなであっという間にいつもの交差点に着いてしまった。

この交差点を渡りきったら別れてしまう。

信号待ちをしている今しかない。


「それで、ケッチャプに二酸化炭素をいれたらいいんじゃないかって思ったんだ」

「あ、あのさ.....」


卓司の面白発言をガン無視して、私はカバンから取り出した。


「...好き?」


卓司を前にして言えた言葉がこれだけだった。

卓司の目をじっーーっと見つめてると何やら真剣な表情で私が差し出した袋を受け取り、中を確認し始めた。

あれ?

クッキーを詰めた袋ってこんなに銀色だったっけ?

そんな疑問を解決する余裕もなく卓司が口を開いた。


「ずっと前から好きだよ。その滑らかな白い肌。優しく、甘く、けれどしっかりとした自分を持ち、責任感がある。そんなあなたに僕は心を奪われてしまいました」


冷静に考えれば背中に虫唾が走るほどギトギトしたコメントだろう。

けれど、この時の私は恋する乙女モード全開だった。

彼の真剣な眼差しに私の心は溶けていってしまった。


「た、卓司!私と付き合ってくれる?」

「いいよ。どこまでも付き合うよ」


いつものこの軽い感じ。

これこそ彼だ。

なんて考える余地なく私の頭が沸騰していく。

耳のさきっちょまで赤くなるのが鏡を見なくともわかる。

なんか嬉しさと恥ずかしさと今までの変な緊張感からの解放とその他もろもろで、私の脳内はお花畑になっていた。

その場で棒立ちになった私に彼がなんか話しかけてくるが耳に入ってくるわけがない。


辺りが暗くなってきた頃、まだまだ顔は熱いし頭がふわふわしてるが、歩けるくらいには脳みそが復旧した。

そこで考えてしまったのが彼との関係。

これって.....


恋人って呼んでいいんだよね?


そうだよね?

うん、そう。

そういうことにしよう。

卓司と、恋人同士。


恋人かぁ。

デートとかするんだよね!

2人で遊園地に行って、観覧車の中で2人きりになって、夕日が差し込む中、卓司の手を握って、見つめ合って…


ってなに妄想してるのよ私!

まだ付き合って1日も経ってないのに!

これにてオノショーによる第1章「もちよこ」は完結です。ここまで見てくださった方、本当にありがとうございましたm(_ _)m

終盤はかなりぶっ壊れな感じでしたが、それも含めて楽しく読んでくれたら良いなと思います(´∀`)


5/27 改稿

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