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十物語  作者: ジェムシリカ
1章
3/5

もちよこ 3話

ついに当日を迎えた。

一応作るものは決まったが、それでもなんかいてもたってもいられず、授業なんてちっとも耳に入らなかった。

部室に恐る恐る入ると、2人の先輩が各々正反対の角っこに座ってた。


「こんにちは」


大きな声で2人に気づくように声をかけると、


「お、チヨ。ヤッホー」

「千代ちゃん、こんにちは」


2人ともいつも通り、にっこりと笑って迎えてくれた。

しかし、3人でわいわい話し出すわけでもなく、3人とも端の席に座って黙り込んでいる。

非常に気まずい。

かといって話せる状況でもない。

そんないたたまれない状況の時に


「こんにちはー、また僕が最後ですかー」


この場の救世主、卓司がやってきた。


「じゃ、始めようか」


部長の合図で一斉に調理に取り掛かる。

いつもなら1つの調理台で作業をするのでわいわいがやがやと楽しいのだが、今日は1人に1つの調理台。

今までにない沈黙がこの部屋に漂う。

カチャカチャと食器同士がぶつかり合い焦らせてくる。

こんなにドキドキが止まらない中での調理は初めてだ。

ただ鍋にあんこを入れて温め、その間にトースターで餅を焼けばいいだけなのに、トースターを見てるかあんこをかき混ぜてるかのどちらかをしていないと気が紛れない。

私がそんなことをしているうちに


「完成ー」


卓司が作り終えた。それをきっかけに、


「できたぞー」

「できました」


次々とみんなは作り終え、残るは私だけ。

尋常じゃないほど焦っている私は、グツグツになる前に火を止めてお椀に投入。

いい色のお餅をささっと入れて


「終わりました」


料理番組とかで見たことのある銀色のお皿まで隠してしまう蓋を被せ、中央の調理台に運ぶ。

これで全員の料理が揃った。

そして、


「それじゃ、せーの!!」


部長の一声で全員が一斉に蓋をあける。

そこには、おはぎが3つとお汁粉が1つ。


「え、えっーーーーー!!!」


私以外の全員がおはぎを作ってきたこの状況に思わず叫んでしまった。

3人ともそんな私を見て笑いはじめた。


「いやー、チヨ以外が同じものを作ってくるとはなー」


部長が追い打ちをかける。


「千代ちゃん、お汁粉もおいしいよ」


夢乃先輩はフォローになってない。


「ちょっと、答えは出てるって言ってたじゃん」


卓司を問いただす。


「いやー、あの時におはぎがなかったから、てっきりこの時のために作っていないものだと思ってた」


んー、おはぎのことはまったく考えてなかった。

そして、卓司のわかりづらい表現。

ストレートに言ってくれれば良かったのに。などと卓司への文句を考えている時に


「ユメノ、その、ごめんな。こんなんで意地はっちゃって」

「私の方こそ、ムキになって言い返してごめんなさい」


2人はどうやら、仲を取り戻したようだ。

良かった、良かった。


「まさか、同じことを考えていたとはね」

「そうね」


喜んでいい状況のはずなのに、私だけお汁粉を作って、みんなと以心伝心ができていないみたいで釈然としない。

大体、お汁粉もおはぎも材料は同じじゃん。ただ単にあんこが固いか柔らかいかの違いだ。

それで、まぁなんでみんなはおはぎを選ぶのだろう。

この季節は熱々のあんこに浸った餅をホフホフしながら食べる方が絶対に美味しい。

とぶつぶつ言い訳を考えていると、部長が


「というわけで餅は美味しいってことで!」



何事もなかったかのように4人はおはぎとお汁粉を囲んで和気あいあいと話し合った。

私の心はすっきりしないまま。

一件落着(?)ですね。残り2話、お付き合い下さい!

次回の投稿は23日(月)の0時です。よろしくですm(_ _)m

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