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自身の脳では考えられないようなことばかり並べられても、すぐに納得できるはずがなかった。
仮にもし、長老が言っていたことが本当だったら、と十数年ものの脳を回転させ考え得る可能性を探した。しかし物心ついた時にはこの島で生活していた彼には到底掴むことなどできるわけもなかった。
唯一彼が掴むことができたのは、「人間ではない」以上、島の人間はともかく島の外、王都やその向こうの別の国から彼女を目当てにこの島までやってくるかもしれないということだった。
島の人達と、彼女とを守るために、何か行動を起こすべきだ。と言うより、何も無いように守るべきだ。しかし自分にできるだろうか。いや、やらなくてはいけない。
沸々と湧き上がる責任と、長老の話の内容の強い衝撃になんとか耐え、彼は老婆の待つ家へ辿り着いた。道中、少女はずっと彼の顔を心配そうに覗き込みながら彼の横を歩いた。
老婆は彼の顔を見て、話してみなさいと柔らかく尋ねた。
彼がぽつぽつとゆっくり老婆に伝えた。
老婆は聞き終わると大きな声で笑った。
彼と少女は同時に顔を上げて老婆を見た。
お前ひとりで背負う必要はない。その子とお前は島全体で守らなければいけない。お前一人で英雄にはなれない。
彼は大きく見開いた目をゆっくり閉じ、同意して笑った。
少女は笑い合う二人を交互に見てはしきりに瞬きを繰り返した。