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日が昇っていた。
居間へ向かうと老婆が少女の髪を結っていた。
少女は老婆が気になっていたようだが、目の前で話しかけてくる女の子を見つめては瞬きを繰り返していた。
この島の話をしていると思われる女の子は、少女が理解していることなど問題ではなく、少しお姉さんになった気分でずっと話し続けていた。
女の子はぱちん、と小さな手を打ち、少女に名前を尋ねた。
小さな破裂音に少女の肩が反応し、ゆっくりと溶けていく。そして瞬きを繰り返す。
名前がわからないのか、と緩やかに尋ねた。
小さな女の子は首を傾げ少女の顔を覗き込んだ。つられて少女も首を傾げる。老婆は髪を結い終わっていた。
小さな女の子は、少し興奮気味に”名前がないと不便だ”と主張し、
女の子は返事を待たず腕を組み、少女の名前を考え始めた。
彼は少女の横に腰を下ろし、女の子が真剣に名前を考えている様子を眺めた。少女は彼と女の子を交互に見つめた。
女の子は声を張り上げ、考えた名前を世に放った。少女の肩は声に連動して強張った。
彼は復唱し尋ねた。
彼は笑った。女の子が微笑ましかった。少女の名前を呼び微笑んで見せると、少女はやはり首を傾げた。
日が高くなる前に彼は少女を連れて家を後にした。
昨日に比べ注意力散漫になった少女は、温かさを持つ女に結ってもらった、自慢の太い一本の三つ編みを大きく揺らしながら進んだ。