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凍りついた空間を、そのくしゃみは一発で溶かした。
彼は困惑した。
"何故"が彼の頭脳で暴れた。
先刻その場から離れた男の子が老婆の手を引き寄ってきた。
老婆も状況が把握できない様子だったが、彼に緑色の暖を取らせるよう申し出た。
彼は老婆の姿を見て少し落ち着いたように見える。
ゆっくり屈んで緑色に手を差し伸べる。
緑色の長い髪のようなものの隙間から見える大きな瞳は、彼の手と顔を交互に繰り返し凝視した。
彼は緑色の暖簾を分けようとした。暖簾は少し後退したが、元の位置に戻った。
暖簾の中には、彼より少し年上に見える少女の顔があった。
少女の瞳は、彼を見据えていた。
しかし何処か幼い、言ってしまえば周辺の子供達と変わらないような雰囲気を纏っていた。
まるで身体だけ成長したような、生まれたての、人間のような何か。
彼は柔らかい声色で尋ねた。返事はない。
老婆は少し唸った後、うちに連れておいで、お前さんは少し手伝っておくれと小さな女の子を連れ少し早足で戻っていった。早足と言っても老人の早歩きである。
彼は老婆から少女に視線を移し、移動を促した。少女は先ほどと同様、彼を見据えて動かない。
まるで刷り込みのように視線を移さない。
彼は頭を掻き、立ち上がった。
少女は彼が立ったのを見て、ようやく彼から視線を外した。
砂を見つめ、ゆっくりと立ち上がった。そしてすぐに彼を見据え直した。
彼が一歩下がると、少女は一歩詰め寄った。
その様子を、子供達は口を開いて見守っていた。