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つまらない話  作者: GOMI
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1

波の音と、駆け回る子供達の声が交じる。

いつも通りの光景、帰るはずのない人間を待つ子供。

いつしか待っていたはずが、遊びの場と化した海岸。

彼は待つしかできなかった。

今日も見えるはずのない王都を眺めては考えることを止め、子守をすることで安らぎを感じた。

日が暮れる前に子供達を家まで送り、帰路に着いた。


国王が変わってから、随分と便利になった。

船を一日一度は見かけるようになった。空便も時たま届くようになった。ごく僅かだが星石機も持ち込まれ、暮らしも豊かになった。決して若者が多いとは言えない集落に於いては、星石機の存在は大きかった。

そんな田舎の小島は、幸せで満ちていた。

彼もまた幸せだった。


彼は子どもたちの相手をしていた。但しこの日だけは、ただならぬ胸騒ぎを抱えて海辺に立った。

小さな女の子が彼に駆け寄り、両手いっぱいの輝く球体を差し出した。彼は褒め、微笑みながらその中の一つを摘み上げ陽射しに翳した。

間も無く女の子と同じくらいの年頃の男の子数人が彼に駆け寄り、手を引き駆け出した。

彼の胸騒ぎは大きくなる一方だった。何故だかは分からなかった。

駆ける先に一人の男の子が大きな物体の側で手招きをして叫んでいた。

見たことのない大きな黒い木箱が漂着したように見える。海水に浸かっていたせいか腐敗が進行している。

所々に腐れ落ちたような穴があり、随分長い間流れていたと見える。

彼は一人の男の子に大人を呼ぶよう伝えた。

男の子達の恐怖を含んだ好奇心は口から漏れ出していた。

釣られるように彼の小麦色に焼けた手が箱に伸びると、触れたところから木材は崩れ落ちた。

大きさから、中型星石機が入るほどの大きさではあるが、それほど最近のものには見えない。仮に星石機だったとしても、何処かに塗装か刻印が入っているはずだ。星石機ではなく服や食料の可能性は、ない。物資は木製の容れ物に入れてこの島まで運ぶと、潮風で傷んでしまう。彼は考えられる限りの可能性を探したが、頭の中に当てはまるものが見つからなかった。

彼と木箱が耐えられなくなり、覆っていた木材は箱の形を留めることが出来ず崩れ落ちた。

大人はまだ来ない。箱は木材の山になった。

彼らは暫く固まった。

先程の小さな女の子が追いついた頃、山が小さく動いた。

子供達は瞬く間に彼の後ろに隠れた。

深呼吸を一回、彼は屈んで山に近づき手を伸ばした。

届きそうな距離で山は自ら崩れ、淡い緑色が現れた。

その瞳は、固まった彼を見つめた。


"へくちっ"


彼は緑色から発せられた音に合わせて膝から落ちた。

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