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迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第6層編

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72.6層突破

 6層の宝石部屋で2匹のライノサウルスをくだした俺たちは、またもや宝石をゲットした。

 今回は様々な宝石にダイヤモンドが加わっている。

 俺でも知ってるような有名な宝石が一体いくらになるのかと宝石商に持ち込んでみれば、とうとう金貨100枚を超えた。

 現状、特に金が必要でもなかったので、今回は換金せずに持っておくことにした。





 休息を1日取ってから再び6層に潜り、守護者部屋の中を覗いてみた。

 するとそこに待ち受けていたのは、ライノ2匹とファイヤーゴリラ2匹だった。

 どちらも既知の魔物ではあったが、あまりに凶暴な組み合わせに呆れながら外へ出る。


「おいおい、ライノとゴリラ2匹ずつって攻略させる気ねーだろ、あれ」

「まったくですね。ここまで来ると、悪意を感じます」


 部屋を出てすぐに口を突いて出てきたのは愚痴だった。

 あれほど厄介な魔物が2匹ずつとは、難易度が高すぎる。

 しかしどんなに愚痴をこぼしても事態は改善しないので、みんなで攻略法を考え始めた。


「まずライノを倒すには俺とカイン、サンドラ、リューナは欠かせないよな」

「はい。そうするとレミリアとリュート、シルヴァ、キョロ、バルカン、ドラゴで残りの3匹を押さえねばなりません」

「しかしバルカンの攻撃はゴリラには効かないから、ライノにてるしかないな。ドラゴもゴリラと相性が悪そうだから、やっぱりライノか」

「もう1人ライノに回すとして、残りの3人でゴリラ2匹を押さえられるかというと、かなり心許こころもとないですね」


 しかしここでサンドラが口を挟んできた。


「レミリアは意外にゴリラと相性がいいのではないか?」

「なんでだ?」

「5層でファイヤーゴリラと戦った時、妾のビキニアーマーがけっこう役に立ったからじゃ。これには温度調節機能が付いておるじゃろ? ゴリラと戦っている時にあんまり熱かったので、”冷えろー”と念じたら少しマシになったのじゃ」

「そういえばあの時、サンドラはカインほど火傷やけどしてなかったよな。あれはビキニアーマーのおかげだったのか」

「うむ、だからレミリアもゴリラとは戦いやすいと思うぞ」

「ウウッ、俺はあの時、メチャクチャ熱かったのに。サンドラだけずるい……」


 サンドラの話を聞いたカインがうなだれ、ブツブツと恨み言を言っている。

 たしかにあの時、カインは火傷だらけになりながらも頑張ってくれたからな。

 彼にもビキニアーマーがあったら良かったのか、などと考えていたらふいに思いついた。


「そうか、リュートにも温度調節機能の付いた魔道具を持たせれば、レミリアと2人でファイヤーゴリラを押さえられるかもしれないな」

「……なるほど。ライノを倒す間だけであれば、やれるかもしれないですね。しかし、そんな都合のいい魔道具がありますかね?」

「それは探してみないと分からないけど、無ければ作ることも考えよう。よし、せっかく来たけど、すぐに地上へ戻るぞ」


 こうして俺たちは守護者とは1度も干戈かんかを交えることなく、地上へ戻った。

 そして以前、魔導コンロを買ったことのある魔道具屋を訪れた。


「すいません、身に着けるだけで温度調節ができるような魔道具ってないですか?」

「あん? 変わったもんを欲しがるな、お前さん」


 店にいたのはエルフのおっさんだった。

 魔道具ってのは精霊の力を借りることが多いから、作るにはエルフが向いてるらしい。


「迷宮で炎をまき散らす魔物と戦うんですよ。彼女が着てるビキニアーマーが以前、役立ったんで、もうひとつ欲しいんです。ちなみに使うのは彼です」


 そう言うと、エルフ親父がサンドラのビキニを観察していた。


「ほほーう、なかなか良い術式を使っておるな、この鎧。これに匹敵するような魔道具というと……」


 エルフ親父がしばらく奥に引っ込んでガサガサやっていた。

 やがて出てきた親父の手に握られていたのは、銀色の腕輪だった。


「この腕輪は風精霊シルフの加護を受けたものでな、周りの温度を調節する機能がある。おそらくその鎧に匹敵する機能はあるだろう。金貨5枚だが、買うか?」

「それなら買います。ところでこの手の魔道具って、明確なイメージを持って魔力を注ぐと、効果が上がりますよね?」


 試しに聞いてみたら、親父が警戒する表情になり、やがてニヤリと笑った。


「さすが、この町のトップ冒険者だけはあるな。我ら魔道具製作者ですら意識していない者が多いのに、よう気がついた」

「やっぱそうなんだ? いくつか思い当たることがあったんですよ。じゃあ、これもらってきます」


 金貨5枚を払って店を後にすると、その日は家に帰って守護者戦の作戦を練った。





 翌日、いつもの原っぱで守護者戦の練習をする。


「それじゃあ、ファイヤーゴリラ戦の練習をするから、バルカンは火球を出して空中に保持してくれ」

「了解した」


 バルカンが上を向いて口を開けると、その上に火球が発生した。

 おそらく無属性魔法で保持しているのだろうが、火球から凄まじい熱が放射されている。

 あまりに暑いので、俺たちは少し離れた。


「レミリアとリュートは温度調節機能を使いながら、その火球に近づいてくれ。全ての熱は消せないにしても、かなり緩和できるはずだ」


 そう指示すると、レミリアとリュートが徐々に火球に近づき始めた。

 遠目に見ていても熱いのに、至近距離では相当なものだろう。

 しかしレミリアは額に汗を浮かべつつも、ジリジリと火球に近寄っていく。


 一方、リュートは火球から3歩ぐらいの所から先に進めないでいた。

 やはり使い慣れない魔道具では効果が出しにくいのだろうか。


 やがてレミリアは苦痛に顔を歪めながらも、火球のすぐそばに到達した。

 さすがはレミリア。


「よし、一旦休憩しよう。バルカン、ありがとう」


 火球が消えたので、レミリアとリュートに水を渡しながら話しかける。


「レミリアは上手くできたみたいだけど、リュートはまだよく分からないか?」

「フウッ……はい、まだ使い始めたばかりで、どうやったらいいかよく分かりません」

「それなら私もほとんど同じですよ、リュート。私だって鎧の機能がイメージで強化できるなんて、昨日まで知らなかったのです。でもご主人様のことをひたすらに信じれば、結果は出るのです」


 うん、それは駄目な教え方だな、レミリア。

 お前、ほとんど根性でやっただろ、さっきの。


 その後、俺も何かアドバイスできないかと、風の腕輪を使って火球に近づく練習をしてみた。

 最初はやっぱりメチャクチャ熱かった。

 しかし周辺の空気で熱を遮断するイメージを描きながら腕輪に魔力を注ぎ込むと、周辺の空気が動いて少し楽になった。

 それを少しずつ繰り返して近づくと、ようやく火球のすぐ近くまで到達することができた。


 俺なりの腕輪の使い方をリュートに教えてやると、悔しそうな顔をしつつも、それを習得しようとしていた。

 その後、何回か同じ訓練を繰り返すと、ようやくリュートも火球に近づけるようになる。

 レミリアも、さっきより余裕でやれるようになっていた。


 さらに火球の近くで組手ができるようになると、目的に達したと判断して帰路に就いた。





 そして翌日、本格的に守護者へ挑むべく6層に潜った。

 3刻弱で守護者部屋前に到着すると、準備を整えて部屋に侵入する。

 侵入するとすぐにライノとファイヤーゴリラが2匹ずつ現れたので、いきなり先制攻撃を掛けた。


「”ゴリラのおひたし”なのですっ!」


 リューナの掛け声から少し遅れて巨大な水塊が発生し、敵にぶちまけられる。

 それはライノには効かないものの、ゴリラは水に押し流され、転げ回っていた。

 すぐに激怒して暴れ始めたゴリラの前に、レミリアとリュートが立ちはだかる。


 レミリアが華麗に攻撃を避けながらゴリラに斬りつける横で、リュートは巨大な塊剣でゴリラを正面からどついていた。

 その近くではシルヴァがビュンビュンと風の刃を放ち、ゴリラを牽制していた。

 この分なら、ゴリラは彼らに任せておいてよさそうだ。


 一方、こちらはライノの1匹をキョロ、バルカン、ドラゴが誘い出していた。

 キョロの雷撃とバルカンの火球で牽制しつつ、ドラゴが一撃離脱で攻撃をする。

 こちらも見事にライノを拘束していた。


 そしてもう1匹のライノは、突進してきたところを俺たちの複合障壁がガッチリと受け止めた。


「”ライノの棺桶”なのですっ」


 棺桶で完全に動きを止められたライノの頭部に駆け寄り、片目に炎の短剣を突き込む。

 そして頭蓋の中身を炎で焼いてやると、絶叫を上げながらライノが息絶えた。

 相変わらず怖いぐらいのはまりっぷりだ。

 リューナがいて、本当に良かった。


 その後、残りのライノも同様に片付けると、ゴリラの始末に取りかかった。

 ビキニアーマーと風の腕輪は期待どおりの機能を発揮しており、高熱を発するファイヤーゴリラを2人はよく押さえていた。

 そこに俺とリューナが水弾を撃ち込むと、一気に形勢が逆転していった。


 水で弱ったところにサンドラとキョロも参戦し、ゴリラをどんどん追い詰めていく。

 やがてサンドラの魔力斬とリュートの超重量攻撃がとどめとなり、2匹のゴリラが地に伏した。


「やったのです、兄様っ!」


 近くにいたリューナが真っ先に俺に抱き着いてくる。

 俺はそれを受け止め、彼女の功績を褒めた。


「やったな、リューナ。今回はお前の竜人魔法が本当に役立った。ありがとうな」

「私のおおざっぱな魔法を使いこなす兄様こそ凄いのです。さすが兄様なのです」

「そのとおりです、デイル様。あなたの作戦勝ちですよ」

「そんなことないさ。みんなが全力を尽くした結果だ。俺はお前らを誇りに思うよ」


 結果的に短時間で済んだ守護者戦だが、俺たちの誰が抜けても得られなかった勝利だ。

 こいつらが仲間で、本当に良かった。


 その後、剥ぎ取りを済ませ、奥の水晶前に集合すると例の奴が現れた。


「やあ、また会えたね」


 迷宮の管理者 ベビンである。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

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