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迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第6層編

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69.2軍の強化

 魔族に操られていた狼牙団を、なんとか撃退した俺たちだったが、前衛陣は大きなダメージを負った。

 チャッピーの魔法で治ったとはいえ、痛みはしばらく残る。

 それでしばしの休息と、2軍メンバーに武器や防具を買い与えることを兼ね、港湾都市セイスへ行くことにした。


 幸い、決闘の賞金と奴らの装備を売り払った金で、金貨150枚もの臨時収入があった。

 せっかくなので、パーッと散財してやろう。


 しかし、さすがに1台の馬車には全員乗れなかったので、金貨40枚の馬車を買い足した。

 何も馬車を買わなくてもって声もあったが、商売でも使えるからと思い、奮発した。

 今回のはドラゴ用の馬車にこそ劣るものの、それなりに頑丈だし乗り心地もまあまあだ。

 これをアイスとグレイに交代でかせ、商売組を除く24人を詰め込んでセイスへ旅立った。





 いつもどおり2日で到着してその晩は宿に泊まり、翌朝早くにゴトリー武具店を訪れる。


「いらっしゃいませ~、デイルさ~ん」

「おはようございます、リムルさん。今日は手紙で頼んでおいた武器を買いにきました」

「はい~、バッチリ準備してありますよぅ。おと~さ~ん」


 いつもの調子で親父さんが呼ばれると、すぐに彼が現れた。


「おう、デイル。ずいぶんと数の多い注文だったが、何を始めるつもりだ?」

「親父さん、どうも。いろいろあって、仲間が18人も増えたんですよ」

「18人もか? そんなに増やしてどうすんだよ?」

「いずれやりたいことがありましてね。それで新人にバンバン迷宮攻略させて鍛えるための、武器新調ってわけです」

「ふむ、まあウチは大歓迎だけどな。しかしこれだけの数を確保するのは大変だったぜ」

「それは苦労を掛けました。それじゃあ早速、魔鉄製の武器を見せてください」


 それから店の中の一角を空け、そこに大量の魔鉄武器が並べられた。

 まずはそれぞれに好きな武器を取らせ、俺たち1軍と親父さんがアドバイスをしていく。

 こうして決まったのが以下の組み合わせだ。


両手剣のみ:ジード、ザムド、ナムド、ダリル

盾、片手剣:アレス、アイラ、アニー、ヒルダ、メイサ、キャラ、カレン

盾、槍  :ガル、ガム

弓、片手剣:シュウ、ケンツ、ケシャ

弓、短剣 :チェイン、レーネ


 力の強い獅子人と虎人は、盾の使い方があまり上手くないので、両手剣でガンガン攻撃する。

 力は強いが背の低いドワーフは、盾と槍を使う。

 素早い動きが身上の狐人は、弓と片手剣を装備した。

 そして魔法職のチェインとレーネには、弓と護身用の短剣を持たせた。

 それ以外は盾と片手剣の組み合わせだが、狼人はちょっと大きめの剣を使うなど、それぞれの特色に合わせている。


 これだけで金貨150枚ほどの支払いになった。

 盾と鎧は従来のものを使いまわしているが、それでもこの出費だ。

 今までで最大の支払いに、眼鏡っこが喜びを通り越して、青くなっていた。


 さらにチェイン、レーネ、リューナには、ガルドでニードルスパイダーの糸で作ったローブを買ってある。

 この新作のローブは防御力が高く、魔力活性も高まる高級品で1着金貨10枚なり。

 今回のを合わせるとかなりの出費だが、強い仲間を育てるための先行投資と思えば、それほど高くもないだろう。


 武器の調整に1日掛かったので、俺たちは買い物や観光を楽しんだ。

 そして翌日、武器を受け取るとまっすぐにガルドへ帰還した。





 戻ってきた次の日、武器の使い勝手を確認しょうと、さっそく迷宮へ潜った。

 強力な武器を手に入れた2軍メンバーが張り切ってしまい、ずいぶんとかされた。

 おかげでいつもより早く2層深部にたどり着くと、さっそくオークを探し回った。


 しばらくして見つかったオーク2匹に、まずはAチームが襲いかかる。

 レーネの支援を受けた攻撃班が、1匹のオークに攻撃を加える横で、牽制班がもう1匹を拘束している。


 最初は慣れない武器に戸惑っていた攻撃班だが、魔鉄武器の性能を実感して動きが良くなってきた。

 レーネの魔力弾は相変わらず効いてないが、それでオークの気が逸れた隙にアレスたちが攻撃している。

 やがてヒルダが膝裏を切り裂くと、とうとうオークが膝を着いた。

 動きが鈍ったオークに魔力斬が降り注ぎ、最後は虎人のナムドにとどめを刺されていた。


 歓声を上げる攻撃班の横で、ケンツたちも健闘していた。

 攻撃班ほど力が強くないので致命傷には至らないものの、地味にオークの体を傷付けている。

 今まで全く歯が立たなかったのに比べれば、敵の攻撃も減って安全性も高まっていた。


 そこに攻撃班が合流してくると、さらに一方的な展開になる。

 またもやヒルダに膝裏を切られたオークが膝を着くと、短時間で決着がついてしまった。


 互いに抱き合ったり、肩を叩いたりして喜び合うAチームに近寄り、声を掛ける。


「みんな、よくやったな。武器の使い勝手はどうだった?」

「兄貴、やっぱり魔鉄の剣は凄いですよ。俺たちでもオークに傷を付けられる」

「それも普通の武器で苦労したからさ。ただし、ただ武器の性能に頼るんじゃなくて、今後も自分の技を高めることを忘れるなよ」

「「「はいっ!」」」


 そんな話をしていたら、シュウがせっついてきた。


「デイルさん、俺たちも早く試したいんだけど、もう行っていいかな?」


 見ると、シュウを始めBチームがウズウズして、今にも走り出しそうな様子だった。


「ああ、いいぞ。カイン、リュート、Bチームの面倒を見てくれるか? シルヴァはオークを見つけて、案内してやってくれ」

「分かりました」



 Aチームに剥ぎ取りをさせてからBチームに追い付くと、すでにオークを倒した後だった。

 今回はシュウも上手くやったらしく、誰にも被害は出ていない。

 大喜びしているBチームにも、声を掛ける。


「こっちも上手くいったようだな、シュウ。どんな感じだった?」

「…………ハハハッ、武器が変わっただけでこんなにも違うんだ。自分が強くなったと勘違いしちまいそうで、怖いですよ」


 自分のやったことがまだ信じられない、といった顔でシュウが答える。


「そうか。しかし普通の武器で倒せてこそ一人前なんだから、今後も修練を怠るんじゃないぞ」

「「「はいっ!」」」


 その後は両チームにもう1回ずつオーク狩りをさせ、野営に入った。

 夕飯ができるまでにケンツ、ヒルダ、シュウ、チェインと話をする。


「明日は3匹の群れとやらせようと思うんだが、どうだ?」

「3匹ですか? うーん、ちょっと不安だな」

「いや、3、3、4で分けて、4人のところに戦力を集中すれば、やれるんじゃないか?」

「まあ、やるとしたらそうだろうね。だけど、グレイとアイスがちょっと心配かねえ」


 偽竜フェイクドラゴンのグレイとアイスはまだ戦い慣れてないし、意志の疎通がしにくいってのもある。

 しかしそれなら俺が手助けできる。


「それだったら、俺が彼らにしっかりと作戦を伝えてやるぞ」

「えっ、そんなことできるんですか?」

「ああ、俺は今までさんざん動物と付き合ってきたし、直接契約を結んでる分、意志疎通がしやすいんだ」

「でもグレイたちは、それを理解して実行できるんですかね?」

「おいおい、あまり彼らを馬鹿にするなよ。使役リンクにつながってから急速に知能が発達してるから、今はミントと同じくらいの理解力があるんだぞ」

「えっ、そうなんですか?」


 ケンツを始めみんな疑ってるようだが、これは事実だ。

 使役契約を結んだ当初はあいまいだった彼らの思考が、日に日に明晰になってきているのを俺は知っている。

 おそらく日常的に人間と意志をやり取りすることで、学習しているのだろう。


 その後、どのようにグレイとアイスを動かすかを話し合い、俺が彼らに説明してやった。

 基本的に彼らの役目はオークを拘束することなので、声を上げたり、突っ込むふりをして注意を引くのがメインだ。

 状況によってはケンツとシュウの指示に従うことも、理解させておいた。


 さらに夕食後は、チームごとにオーク3匹を同時に相手取る作戦を練らせる。

 やがて就寝時間となり、交代で見張りをしながら眠りに就いた。





 翌朝もオークを探し回り、やがて3匹の群れを発見した。

 準備を整えたAチームが部屋に侵入し、3人、3人、4人の班でそれぞれオークを囲む。

 よく見ると、当初の打ち合わせと違って主力のアレス、ヒルダ、ナムドが別々の班になっていた。


 黙って見ていると、彼ら3人がオークの後ろに立って膝裏を攻撃していた。

 他の仲間はそれをサポートするように、オークにちょっかいを出しては逃げるを繰り返している。

 唯一の魔法職であるレーネも、石弾を放って各班の援護をしていた。


 やがて最初にヒルダが、そしてアレス、ナムドの順に膝裏を傷付けることに成功すると、オークの動きが目に見えて悪くなった。

 動きの鈍った獲物に容赦なく刃が降り注ぎ、1匹、また1匹とオークが倒されていく。

 そして3匹目のオークが音を立てて崩れ落ちると、歓喜の声が湧き起った。


 喜ぶAチームに近寄り、ケンツに声を掛ける。


「結局、主力は分散させたんだな?」

「ええ、まず敵の足を潰すのが、倒すにも守るにも一番だろうってことになったんです。まずかったですか?」

「いや、ちゃんと倒せたんだからいいさ。チームごとに特色があってもいいんじゃないか?」


 そんな話をしていたが、その後のBチームも同じように主力を分散させて戦っていた。

 結果的にケガ人も無く倒せたんだから、これでいいのだろう。


 さて、この分なら2軍は自力で攻略ができそうだ。

 そろそろ俺たちも、6層の攻略に取り掛かるとしようか。

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新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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