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迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第6層編

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66.レストラン開業

 俺たちが新人を鍛えている一方、ケレス率いる商売組はレストランの開業に動いていた。

 まず店舗を見つけ、役所に開業の申請を出す。

 そこから内装に手を入れて、テーブルや椅子、食器類や調理道具などを揃えた。


 これだけでも大仕事だったが、俺たちもちょくちょく手伝ったので、2週間ほどで準備が整った。

 ちなみに商売組と元”女神の盾”のメンバーは、この店の2階に住むことにした。

 ”女神の盾”が住んでたスラム街の家より、俺の家に近いので行き来が便利になっている。




 そして今日はそのレストラン”妖精の盾”の開業祝いだ。

 お酒以外は全て無料にし、若い冒険者やギルドにも声を掛けて大勢の人を集めた。

 今日は人が多いので、立食形式にしてある。


 だいぶ人が集まった頃合いで、ケレスから声が掛かった。


「えー、皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。私が店長のケレスで~す。そしてこの店のオーナーであるデイルさんから、あいさつがありま~す」


 俺は嫌だったのだが、この店の趣旨を客に伝えてくれと、あいさつを押しつけられた。

 仕方なく椅子の上に立って喋り始める。


「どうも、皆さん。オーナーのデイルです。ご存じの方も多いと思いますが、私は冒険者パーティ”妖精の盾”のリーダーであり、その仲間がこの店を運営します。その目的はお金儲けにとどまらず、駆け出しや女性の冒険者の支援も目的としています。あまりお金の無い時でも、この店に来ればとりあえず腹いっぱい食べられるでしょう。もし悩み事があれば、多少は相談に乗れると思います。そうやってお互い助け合いながら、迷宮を攻略していきましょ~」


 そこまで喋ると、盛大な拍手が湧き起こった。

 俺は手振りでそれを制し、もうひと言付け加える。


「どうもありがとうございます。念のため言っておきますが、この店でオイタをした方は、もれなくこの町最強の冒険者がオハナシに応じます。そんなことにならないよう、お酒は程々に。それでは今後も、レストラン”妖精の盾”をよろしく~」


 最後にちょっと笑いを取って、あいさつを終えた。

 それから適当に歓談をしていたら、ギルドのアリスさんが話しかけてきた。


「デイル君、立派なことを始めたわね」

「ああ、アリスさん。別にそんな大したものじゃありませんよ。お金儲けのかたわら、少しはいいこともしようかってぐらいの話で」

「そんなことないわよ。この町には今、冒険者が大量に集まってきてるけど、その陰で苦しんでる人も多いから。ギルドは冒険者の事情には不干渉が原則だから、あまり相談に乗ってあげることもできず、歯がゆい思いをしてきたの。今後はこのお店を紹介できるから、私たちも助かるわ。さすがはこの町のトップ冒険者ね」


 そう言いながらアリスさんがにっこり微笑んだ。

 俺は照れながら、”はあ、どうも”とか答えていたら、ふいに少し離れた所で大声が上がった。


「なんだこりゃあ? この店は客にゴキブリを食わせんのかよ?」

「おうおうおう、とんでもねえ店だなあ。責任者出てこいやー!」


 見ると、いかにも柄の悪い大男が2人、ゴキブリをつまみあげて騒いでいた。

 どこかで見たことがあるような顔だ。


「あの2人は、最近この町に来た冒険者ね」

「アリスさん、知ってるんですか?」

「ええ、たしか狼牙団、じゃなかったかしら。何回か応対したことがあるけど、偉そうで嫌なやつらよ」


 狼牙団の奴らか。

 道理で見覚えがあると思った。

 エルザがいないところを見ると、あいつらだけで因縁を付けにきたのか?


 ケレスが必死になだめようとしてるが、全く聞かずに暴れ始めた。

 あっ、とうとうテーブル壊しやがった。

 これはちょっと、お灸を据えてやらんといかんねえ。


「ちょっとちょっとお客さん。乱暴はやめてください。どうせゴキブリも自分で入れたんでしょ?」

「なんだあ? ガキ。俺たちのせいだってのか? ふざけんじゃねえぞ、こらっ!」

「ふざけてんのはそっちでしょう。めでたい開業日に言いがかりつけにきやがって。死にてーのか、こら!」

「……んだと、こら。後悔させてやるぜ、このガキがぁ」


 そう言って殴りかかってきた男に、俺はキョロを投げつけた。

 顔に取り付いたキョロがじかに雷撃を撃ち込むと、一瞬で気絶して崩れ落ちる。

 それを見たもう1人の男が、また殴りかかってきた。


 しかしそこにカインが割り込み、腹にパンチを1発入れた。

 それだけで動けなくなった男を片手で抱え、カインが言う。


「デイル様、俺が裏でよく言って聞かせます。サンドラ、手伝ってくれ」

「フハハハハッ、もちろんじゃ。ていねいにオハナシすれば、おとなしく帰ってくれるじゃろう」


 カインとサンドラが男たちを抱え、店の裏に消えた。

 たぶん、顔の形が変わるぐらい殴られるんじゃないかな。

 歩いて帰れるのかどうか疑問だが、それは自業自得というものだ。


「皆さん、お騒がせしました~。引き続き歓談をお楽しみくださ~い」


 そう言うとまたなごやかな雰囲気が戻り、会話が再開された。

 俺はまたアリスさんの所に戻って話を続ける。


「フウッ、やっぱり商売を始めるといろいろありますね」

「いろいろって、デイル君。彼らあれでもBランクよ。それを一瞬ってあなた、どれだけ……」

「あんなのでもBランクなんですか? たしかあいつら、西の迷宮で5層に潜ってたって話だけど、西はレベル低いんですかねえ」

「ハアッ、もう……難易度は迷宮によってまちまちだからなんとも言えないわね。でもすでに”狼牙団”はここの4層に潜ってるんだから、そんなに弱くないと思うわよ」

「それもそうですね。しかし明日辺り、面倒臭いことになりそうだなぁ」


 どうせあの男たちがボコボコにされて帰ったら、リーダーのエルザが文句を言ってくるんじゃなかろうか。





 すると案の定、翌日の午前中に狼牙団が店に怒鳴り込んできた。

 呼び出しを受けて店に行くと、奴らが勢ぞろいしている。

 もうじき昼飯時だというのに、迷惑な奴らだ。


「遅いよっ! いつまで待たせる気だい」

「そんなに待たせてないだろ。それで、なんの用だ?」


 目の前には包帯だらけになった昨日の男たちがいるので、言わずもがなではあるが。


「昨日はうちの人間をかわいがってくれたらしいじゃないか? おかげでこいつらは迷宮に潜れなくなっちまった。この責任はどう取ってくれるんだい?」

「元々、そっちが言いがかりをつけてきたのが悪いんだぜ……しかしカイン、こんなにひどくやったのか?」

「いいえ、顔が腫れるぐらいには撫でましたが、他はほとんど傷つけていません」


 しかし目の前の奴らはボロボロで、椅子に座ってるのも辛そうな有様だった。

 大方、負けて帰ったから身内にヤキ入れられたんだろう。


「なんだい、骨まで折っておいてしらを切るってのかい? この町のトップ冒険者ともあろう者が、みっともないじゃないか」

「ハッ、笑わせるな。どうせ負けて帰ったそいつらを、お前らがヤキ入れたんだろうが。言いがかりも大概にしとけ」

「あくまでしらを切るってんなら、衛兵に訴え出るよ。あんたらがこいつらと揉めたところは大勢が見てるんだからね」

「こっちは軽く撫でただけでお帰り願ったんだ。骨を折ったところなんて誰も見てないぜ。そんな状況で、Aランクでこの町の領主にも顔が利く俺を、逮捕できる衛兵なんかいねえっての」

「クッ、小憎らしい……」


 エルザが鬼のような形相で睨みつけてくると、後ろの野郎どもからも殺意が膨れ上がった。

 あわや大乱闘かと思われたその時、エルザが再び口を開いた。


「それなら、あんたらに決闘を挑んでやる」

「ハア? なんでそんなことに付き合わなきゃなんねーんだ。馬鹿じゃねーの?」

「あたしは今からギルドに行って事情を話す。ウチの団員がお宅らにやられたのは事実だから、申請は通るはずだ」

「だったらこっちもギルドに事情を話すだけだ。俺たちは軽く撫でただけなのに、お前らが身内でヤキ入れて言いがかりを付けてきたってな。それぞれの実績や今後の期待度からして、どっちの言い分が通るかは明白だと思うがな」

「チッ……それなら賞金を懸けようじゃないか。こっちが負けたら金貨100枚付けるよ」

あねさん、それは譲歩しすぎだ」

「黙ってな。負けなきゃいいんだよ」


 その後も狼牙団の中で揉めていたが、結局エルザが押し切った。

 問題は俺がそれを受け入れるかどうか、だが。


「……いいだろう。ただし、決闘にはごく少数の立会人のみとして、秘密保持契約を結んでもらう」

「ご主人様っ!」

「ハハハッ、ようやくやる気になったかい。この町のトップ冒険者の実力、とくと見せてもらうよ」


 こうして狼牙団との決闘を了承した俺は、奴らと一緒にギルドへ赴いて決闘の仲介を申し入れた。

 当然ギルドからは大反対され、アリスさんのみならずコルドバも出てきてやめるよう言われた。

 しかし俺が絶対に勝つと言って押し切り、とうとう決闘は了承される。

 決闘は3日後の朝に行われることとなり、俺は半日ぶりに解放された。



 ようやく家に戻った俺は、今度は仲間たちに囲まれた。


「ご主人様、なぜあのような決闘を受けたのですか?」

「俺も納得がいきません、デイル様」

「あのような者など、放っておけばよいのじゃ、我が君」


 矢継ぎ早の抗議を受け、俺は彼らを手で制した。


「まあ待て、みんな。とりあえずお茶をもらえるか? ボビン」

「はいな、デイルはん」


 家付き妖精ブラウニーのボビンが出してくれたお茶を飲みながら、ゆっくりと話しだす。


「決闘を勝手に決めてしまったのは悪かった。だが、こうしないと、誰か仲間が傷付けられる気がして仕方なかったんだ」

「あんな奴らの攻撃など、返り討ちにすればよいのじゃ」

「俺たち1軍だけなら、それもありだろう。しかしあいつらが2軍を狙ってきたらどうなる?」

「それは……たしかに心配ですね。今後、2軍には独自に2層を突破させる予定ですし、我々も6層を攻略しなければなりません」

「だろ? 今日のエルザの様子だと、弱いところを狙ってくる可能性が高いと思ってな。なんてったって、俺たちはあいつの弟を殺したんだ」

「言われてみればそうじゃな……ならば先手を打ってこちらから襲撃すればよい」

「そんなことして犯罪者になるくらいなら、決闘を受けた方がマシだろ?」


 そう言うと、さすがに脳筋のサンドラも黙り込んだ。


「しかしあのエルザという女、妙に強気じゃったのう。6層探索者である儂らに挑むというのにじゃ」

「チャッピーもそう思った? 俺も不思議だったんだけど、あいつの目、なんかおかしかった。何かに魅入られているみたいっていうのかな」

「悪霊に操られている、とでも言うのか?」

「分からない。でもあいつらは西の迷宮に潜ってたらしいから、そこで何かおかしな存在に遭ったのかもしれない」

「なるほどのう。だとすると、見た目以上の能力を発揮する可能性もある、か…………よし、儂が偵察してこよう」

「敵の情報が分かるなら助かるけど、大丈夫か? それにあいつらの拠点は?」

「すでに調べてあるわい。何かおかしな存在がいる場合も考慮して、慎重に探ってこよう」

「……そうだな、やらずに後で後悔するよりはマシか。頼むよチャッピー」

「うむ、それでは行ってくる」


 そう言ってチャッピーが消えると、カインが聞いてきた。


「決闘に参加する人選はどうしますか?」

「ああ、ドラゴの代わりに、ケレスを入れたフルメンバーで当たる」

「えっ、あたいも参加するの?」


 ケレスが嫌そうに聞いてきた。

 ちなみに決闘は迷宮攻略と同様に、10人まで参加が許される。


「人間相手にドラゴは不利だと思うんだ。それに魔法防御を強化した方がいいような気がする」

「たしかに、すでに4層に入っているからには、魔法が使えるとみるべきですね」

「でも、あの人たちは全員、戦士系に見えましたけど」


 カインの言うことに、レミリアが反論した。


「たしかにそう見えた。だけどアイテムを使うとか、武器に属性を付与するとか、手はいろいろあると思う。チャッピーの報告待ちだけど、やれることは全部やっておこう。だから頼む、ケレス」

「もうー、しょうがないなぁ。また美味いもの食わせてよ」

「ああ、勝ったらセイスで美味いもの巡りでもしよう。だからみんな、生き残るぞ」

「「「ハイッ」」」


 さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。

 しかし俺たちは絶対に生き残ってみせる。

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エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

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