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迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第5層編

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53.深部攻略

 ようやくバーンナックルゴリラを1匹仕留めたと思ったものの、もう1匹のゴリラがけたたましい雄たけびを上げた。

 おそらく増援を呼ぶ声に違いない。


「シルヴァ、増援がどっちから来るか分かるか?」

(あちらから魔物の足音が聞こえる)


 彼がすぐに増援が来る方向を教えてくれた。


「カインたちはあそこの通路を押さえてくれ。もう1匹を片付けるまで耐えればいい」

「了解です」


 カインたちが移動するのを確認しつつ、もう1匹のゴリラに目を移すと、こちらもだいぶ弱っていた。

 度重なる雷撃とシルヴァの攻撃で、すでに傷だらけだ。

 しかし、それでもまだ元気に動き回っている。


「シルヴァ、なんとかそいつを押さえ込んでくれ。魔法で片付ける」

(了解した)


 それからしばらくシルヴァとゴリラが揉み合っていたが、キョロの助けを借りてシルヴァが押さえ込んだ。

 そこに俺たちの魔力弾と火球が殺到し、ゴリラの右腕を潰すことに成功する。

 片腕の利かないゴリラの首筋にシルヴァが食らいつき、大きく振り回す。


 強靭な防御力でしばらく耐えていたゴリラも、とうとうシルヴァの牙で喉を切り裂かれた。

 そいつは断末魔の声を上げることもできず、静かに息絶えた。


「フウッ。カイン、こっちは片付けたから入れていいぞ」

「了解です」


 カインの返事と共に、2匹のゴリラが飛び込んできた。

 あっちもほとんど限界だったみたいだ。

 2体の遺骸を見つけたゴリラが怒りの咆哮を上げる。

 こいつらも同族が死んで悲しいのかね?


 すぐに襲い掛かってきたゴリラを、1匹はカインたちが取り囲んだ。

 しかしもう1匹の方は、シルヴァがまだ疲れていて対応できない。

 そこで俺たちが魔法で援護していたら、ゴリラの注意がこちらへ向いてしまった。

 凄い勢いでこっちへすっとんできた。


「なんとか耐えろよっ! ケレス」

「マジでーっ? 勘弁してよ、ご主人!」


 ケレスが悲鳴を上げながら、俺たちの前面に全力で障壁を張った。

 目前まで迫ったゴリラがその障壁に拳を叩き付けると、凄まじい爆発が発生する。

 凄まじい威力に何歩か押し戻されたものの、なんとか初撃を耐えきった。


「リューナは奴の頭を狙え。バルカンは腹に連発!」


 そう指示しつつ、俺も魔力弾を目の前のゴリラの胸板にぶち込んだ。

 さらにバルカンの火球2連弾が腹に命中すると、ジュウジュウと肉を焼きながら食い込んでいく。

 最後はリューナの魔力弾が駄目押しとなり、ゴリラは後ろにぶっ倒れて2度と動かなくなった。


(済まぬ、主よ。押さえきれなかった)

「シルヴァは疲れてたんだし、結果的に素早く倒せたから気にするな。むしろ敵を引き付けて、至近弾で倒した方がいいかもな、ケレス」

「絶対にイヤっ!」


 あいにくと全力で拒否されてしまった。

 いい手だと思うんだがな。


 そうこうするうちに、カインたちが最後のゴリラを追い詰めつつあった。

 カインとリュートがゴリラの注意を引く横で、サンドラとレミリアが魔力斬を次々に叩き込んでいく。

 やがて後脚を斬られて動きの鈍ったゴリラの脳天に、リュート渾身の塊剣が炸裂し、戦闘が終わった。


「よくやったな、みんな。少し休憩してから剥ぎ取りをしよう」


 さすがに激しい戦闘だったので、前衛陣に疲労の色が濃い。

 部屋の中央で車座になって休憩を取った。


「苦戦はしたけど、増援も含めて対処できた。やっぱりリュートの強化は正解だったな」

「はい、この間は凄く怖かったのに、今日はそれほどでもなかったです」

「リュートが安定した分、俺たちにも余裕ができました。想像以上の成果ですよ」


 カインも手応えを感じているようだ。


「そういえばご主人様も攻撃を受けてましたけど、おケガはありませんか?」

「ああ、ケレスがなんとか耐えてくれたからな。逆にゴリラを返り討ちにできてよかったくらいだ」

「あたいは死ぬかと思ったよ~!」


 必死で恐怖を語るケレスを見て、みんなが笑う。


「それよりもシルヴァの方が攻撃食らってたけど大丈夫か?」

(うむ、風の鎧でほとんど躱したのだが、少しキツイので治療してもらえるだろうか)

「いいぞ。どの辺が痛いんじゃ?」


 最近のシルヴァは風魔法で攻撃を緩和できるようになったらしく、それを”風の鎧”と呼んでいる。

 しかしどうしてもダメージは受けるので、チャッピーの治癒魔法が役に立つ。

 ついでに魔力を消耗したキョロとチャッピーには、俺から魔力を補充しておいた。


 十分休養が取れたので、ゴリラから剥ぎ取りをして探索を再開する。

 結局、その日はもう1回だけゴリラとの戦闘をこなし、早めに野営に入った。

 増援を含めると4匹ものバーンナックルゴリラを相手にするのは、心身ともにこたえるのだ。

 早めに体を休めて、翌日に備えた。





 翌日、翌々日と似たような探索を繰り返し、4日目に地上へ帰還した。

 今回の探索では実に26匹ものゴリラを倒し、他にパンサーやサーベルタイガーも狩っている。

 その素材たるや凄い量だったが、ドラゴがいるのでほとんど持ち帰れた。


 地上でバーンナックルゴリラの素材と魔石を鑑定してもらうと、魔石は銀貨28枚と今までで最高だった。

 素材の方は、派手なオレンジ色の毛皮が平均で銀貨40枚、不思議な爆発を産み出す拳が銀貨20枚で売れた。

 拳の方は今はまだ使い道が分からないので、今後の研究次第で値段は変わるかもしれない。


 いずれにしろ俺たちは今回の探索でゴリラの攻略法を確立し、金貨30枚ほどの儲けを手に入れた。

 苦労しただけの甲斐はあったというものだ。





 それから休息を1日ずつ挟んで4日間の深部探索を2回繰り返し、3回目で5層の宝石部屋らしき場所に行き当たった。


「ゴリラが6匹か……1度に相手するには厳しい数だな」

「いかに慣れたとはいえ、同時に戦えるのは3匹がいいとこですからね」


 入り口からこっそり覗き込むと、そこにはゴリラが6匹もたむろっていた。

 最初から6匹の相手はかなりキツイ、というか勝てる気がしない。


「やっぱ、ケレスの障壁でおびき寄せてから逆撃するか?」

「むむむ、無理無理無理っ! 1発だけならまだしも、何発もくらったら耐えられないって、ご主人!」


 ケレスに相談したら、全力で拒否された。

 たしかに複数同時はキツイかと思っていたら、キョロから提案があった。


(それなら僕らの”暴風雷”サンダーストームで弱らせたらどう? ご主人)

「うーん、”暴風雷”サンダーストームかあ……ちょっと発動までに時間が掛かり過ぎないか? たぶん障壁がもたないぞ」

(それならこの通路から魔法を発動すればよかろう。それならば攻撃も限定されるし、カインやサンドラの盾でも防げるであろう)


 発動するまでの時間を気にしたら、シルヴァが解決策を提案した。

 たしかに狭い通路から”暴風雷”サンダーストームが使えるのなら、守りやすいかもしれない。


「なるほど、その手があったか。通路だけ守るんなら、ケレスはどれぐらい耐えられそうだ?」

「えーっ……やってみないと分かんないけど、障壁の面積が減るから2発ぐらいは耐えられる、かなあ」

「よし、障壁で耐えられるだけ耐えて、壊れたらカインたちに替われ。”暴風雷”サンダーストームが発動したら、近場の奴から集中攻撃で倒していこう」

「そうですね。場合によっては、俺とリュートは押さえに回ります」

「うん、それで頼む。まずはケレス、ここに障壁を張ってくれ。魔法を通す隙間を開けてな」

「本気でやるの?……もう、また美味いもの食わせてよ~」


 障壁を張ると、俺たちのいる通路と宝石部屋の間がへだてられた。

 ほとんど透明でガラスみたいな障壁なので、中は見える。


 続いてキョロとシルヴァが”暴風雷”サンダーストームの発動準備に入った。

 この魔法は大量の魔物を殲滅できる、キョロとシルヴァの合成魔法だ。

 彼らが寄り添って意識を集中すると、やがてシルヴァの口から細く切ない遠吠えが漏れ始めた。


「アオォォォォーーーン…………」


 彼の遠吠えによって宝石部屋の中に雷雲が発生し、空気がざわめき出す。

 ここでゴリラも異変に気が付いてこちらへ向かってきたが、何が起きてるか分からず、しばらく攻撃をためらっていた。

 やがて俺たちを敵と認識したらしく、奴らの拳が障壁に叩きつけられる。


 その凄まじい攻撃を受け止めるケレスの額に、汗が浮かんでいた。

 そして膨大なエネルギーを蓄積した雷雲にキョロから魔法が飛ぶと、とんでもない風と雷が周囲に吹き荒れた。

 雷の閃光と轟音が炸裂し、しばらくは何も見えない。


 そしてようやく風と雷が過ぎ去ると、部屋の中に残っていたのは、息も絶え絶えな6匹のゴリラだった。


「良くやった。前衛は1人1匹ずつ倒せ。残りは俺たちが始末するぞ」


 俺の指示と共に前衛が通路から飛び出し、1匹ずつゴリラを相手取った。

 そして残る2匹には、俺とリューナ、バルカンから魔法が撃ち込まれる。

 すでに瀕死だったゴリラは魔力弾と火球攻撃の前に、あっけなく息絶えた。


 カインたちもやり合っていたが、1匹、また1匹とゴリラを打ち倒していく。

 やがて最後のゴリラがカインに倒され、5層の宝石部屋はあっけなく陥落した。


「フウッ、わりと簡単にケリが付いたな。これもキョロとシルヴァのおかげだ。ありがとうな」

(でしょ、でしょ、でしょ? 撫でて撫でて~、ご主人~)


 キョロが嬉しそうにすり寄ってきたので、抱き寄せて体中撫で回してやった。


(これ、キョロ。主の役に立つのは当然のことではないか。は、はしたないぞ……)


 羨ましそうにしていたシルヴァもたっぷり撫でてやり、ついでに魔力も分け与えた。


 剥ぎ取りをしてから部屋の中を探索すると、4層以上に大量の宝石が見つかる。

 今までのルビーやサファイアに加えてエメラルドという宝石も入っていた。

 その質と大きさから破格の値段が付いたので、売却は一部のみとする。

 それでも金貨40枚になったのだから、凄い儲けだ。


 ちなみにゴリラの毛皮は雷で焼け焦げていたので、普通の半値以下だった。

 しかしそれでも俺たちは5層を探索し尽した。


 残るは守護者との決戦のみ。

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