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落ちたる世界に剣を捧げる  作者: 黒乃レイ
プロローグ
2/4

本文中に出てくる内容は、それを推奨するものではありません。

 突然だが、空から人が降ってくると、何かしら良くない事が起こるという言い回しをご存じだろうか?

 だって、空を飛ぶ機能キノウをもたない人間が、数秒であれ「さっきまで空を散歩していたんですよ」なんて口に出すのは、大変片腹痛タイヘンカタハライタいおかしなお話だからである。

 もしも、ここで降ってくるのが光の矢や、なんかどす黒い魔弾マダンであれば、道行ミチユく人々はそこまで気にしなかったかもしれない。今でこそ常識だが、この世界には人間以外にも、精霊セイレイ魔族マゾクなんていうスピリチュアルキワまりない種族が存在するからである(それでも、大変迷惑な話ではあるが)。

 だから、空から人が降ってきた日には、何かが自分の身に降りかかるだろうことを覚悟しなければならない。未知の出来事との遭遇ソウグウは、幸運よりもまずワザワいをマネくものだ。

 例えば、創作上ではよくある筋書きだが、主人公の少年のもとに、ある日突然ヒロインである美少女が降ってくるという話。

 このヒロインは、敵である謎の組織に追われており、主人公へと助けを求めてくる。主人公は自分が巻き込まれた事態ジタイオドロきながらも、ヒロインの手を取り、共に敵へと立ち向かっていく。そして、長い苦悩クノウと戦いの末、見事敵を打ち倒し、二人はそのまま愛を誓い合うのである。


 ……なんてのは、王道の、創作の中だけにしか存在しない、都合の良い話だ。

 現実は、決してこの王道物語のように、苦悩と戦いだけでは終われない。いつだって選択の連続であり、気を抜けば不幸に見舞われる。一体いつがゴールでどれがハッピーエンドかなんて、誰にも分かりはしない。

 云わば人生とは、目指すべきゴールも選択すべき筋書きもない中で、自分が辿ってきた過去に「運命」という名前を付けて、死へとひたすら歩いていくようなものなのだ。ムシろ、もしかしたら、死という自分の一つの物語をめくくるための終焉シュウエンが、ゴールなのかもしれない。

 ……と言ったら、大多数の人間には怒られるだろう。もしかしたら中二病だと言われるかもしれない。だから、これはただの持論ジロンで、自分は超が付く冷静人間、リアリストなだけである。

 それに、ゴールが分かっていたとして、そこになにかしらキラリと光る宝物を持っていかなければ、結局その物語はつまらないに違いないと考えている。


 まぁ。何が言いたかったかというと、自分のこの一つの人生を懸けて、最後に「あぁ、割と幸せな人生だったかもしれない」と思えるような宝物を手に入れるには、どうすればいいのかということである。

 その方法を確かめるには、生という道をひたすら歩き続けるか、他人を参考にするしかないと思う。

 さて。そこで、先程の王道物語に登場する人物に、習ってみようではないか。なに。心配しなくても、彼らはキラリと光る宝物を持っている。


 それも、魂の奥底に刻みつけたくなるような。


 ただし、人物の特徴は異なるが。

 もし、お話の中で空から降ってくるヒロインが、美少女ではなくただのイケメンだったとしたら、主人公は手を取ったのだろうか?もし、お話の主人公が、少年ではなく少女であったなら、ヒロインは助けを求めたのだろうか?

 目の前に、光の矢でも魔弾でも美少女でもなく、ひとりのイケメンが降ってきたら。


 この日、名も無き少女は、呆然ボウゼンとした面持オモモちで、空から降ってきたイケメンをナガめていた。


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