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瓦礫の下敷きになって、大勢の人が事切れていた。ぼろぼろになった近くの民家から発生した夕焼け色の化け物は、ごうごうと唸り声を上げて、地面を舐めるように燃え広がっていく。
地面を見れば、まるで怪物が通った後のような、おびただしい数の亀裂が走っていた。亀裂の裂け目からは、星にも似た輝きを放つ空色の粒子が生まれていく。それらは、静かに遥か上空へと昇っていった。
大量の粒子を目で追った先。いつも満天の星で美しく輝く空は、まるで星々をどこかに落としてしまったかのように、真っ暗で淀んでいる。美しい月も、暖かな太陽も、狂ったように真っ暗な空に隠されて見えない。
今この世界を照らしているのは、民家も人々も弄ぶように覆い尽くしていく、夕焼け色の化け物だけだった。
天変地異。地獄絵図。世界の崩壊。
そのような言葉で表せそうな、まさにこの世の終わりのような光景が、この瞬間、自分の世界には拡がっていた。
「―――、―――て」
ふと。夕焼け色の化け物が発する声以外に、明確な言葉をもつ声が世界に響いた。その声は、ひとりでよろよろと歩いている人影から発せられたものだった。人影は、世の神秘を集めたかのような、美しくも儚さを感じさせる、人間の女性の形をしていた。
「――か、――けて」
彼女は、生物という生物が地面に這いつくばっているこの世界で唯一、地面を踏みしめていた。そして、時折苦しそうに胸のあたりを抑えては、繰り返しなにかの言葉を紡いでいた。
「―れか、――けて」
今にも消え入りそうな声。しかし、徐々に大きく喘ぐような音量で、必死に彼女は言葉を吐き出した。
「だれ、か……だれか、
たすけて……っ