疑惑
お待たせいたしました。
毎月遅くなりすいません汗
「それは、いったいどういうことですか?」
レオナールは、クロエルの耳を疑う発言に驚きの表情を浮かべ聞き返す。
そんなレオナールを横目にルーメンが念話で語り掛けた。
『困惑するのも至極当然の事よのぉ。儂は、主を介してアリウスとの勉強を見ておったが、主の試験の解答は優秀な成績と言っても過言ではないものであった。じゃが、結果はEクラス……つまり、実技試験が評価されずともEクラスに落ちる道理はないと思っておったが、やはりと言ったところかのぉ』
ルーメンは、クロエルの発言に納得の様相を呈する。
そして、そんなルーメンの後に続く形でアクアが飛翔し進み出ると皆に語り掛けた。
『先に主の潔白を証明する為にお伝えしますが、我々は、主に試験の解答を教えることを良しとしておりません。我々の主たるもの、教養は必要不可欠。今回の試験結果は、主の実力によるものです。そこは、お間違い無いように』
二頭の発言にレオナールは、驚きの表情を浮かべ声を上げる。
「いやいやいや、ルーメン達が勉強内容を覚えていること自体驚きだけど、身内に潔白を証明されても意味が無いだろ!傍から見たら不正を疑われても仕方ない状況だぞ!?」
『おいおい、ルーメンやアクア達と一緒にするなよな。俺は、勉強なんて全く興味ねぇし寝てたから覚えてすらいねぇぞ?』
「イグニス、お前は、論点ズレてるから黙ってろ」
『あはは、バカがいるんだな〜』
『だねー!私も見てなかったから黙ってたのに』
『………………イグニスが残念なのは、いつもの事。僕も人族の勉強は興味無い』
『ちょっとみんな……まだ主達の大事な話が終わってないから落ち着こうよ』
イグニスの場の空気を読まない発言にツッコミを入れるレオナール。
そんなイグニスとのやりとりにテラ、ウェントス、テネブラエがそれぞれ反応し、フルメンが場を取りなした。
漫談の様な会話を呆然と見つめていたクロエルは、小さな咳払いを行い発言する。
「……あー、宜しいか?多様な性格をしているというのが分かったところで、話を進めたいのだが?」
『連れがすまんかったのぉ。恥ずかしい限りじゃ』
「すいません……大丈夫です」
ルーメンとレオナールがそれぞれ神妙な面持ちで謝罪すると、苦笑を浮かべていたクロエルが会話を続ける。
「うむ。確かにレオナール君の言う通り、水龍王の……君の身内の発言では、不正をしていないとの確証に乏しい。しかし、君達全員の話を聞く限り嘘は付いていないというのは、君達の反応から理解出来たから安心してくれ。それに、ここにいる者達が仮に他者に告発したとしても、そもそも知性ある魔物と契約出来ることすら前人未到な状況なのに、それが年端も行かない少年が各属性龍の王達と契約しているなんて誰も思いもしないだろうし、信じようともしないだろう。そうでしょう?ルベル先生」
唐突に話を振られたことで、小さく驚きの声を上げてルベルが返答する。
「……ぇ?あ、そうですね。私もこの目で見ていても今でも信じられない状況ですし、誰も彼等を見ない限り信じないでしょう」
「……と、いうことだ」
「そうですか。信じていただけたのであれば、良かったです」
ルベルとクロエルの見解を聞き、レオナールは安堵の息を漏らす。
そして、クロエルが再度会話を続ける。
「では、脱線したが本題に戻させてもらおう。今回の件は、そこにいるルベル先生の指摘によって私の知るところとなったのだが……ルベル先生、経緯を頼めるかな?」
「はい。私は、レオナール君の実技試験を担当し実際に彼の実力を確認しました。それに、偶然ではあるのですが彼の筆記試験の採点も担当しています。その結果を見る限り、彼等の言う通り優秀な結果であったことを記憶しています。あの実技試験を担当したことで、数多くいる受験生の中でも印象に残っていたので間違いありません。仮にゴルグ副学園長が実技試験の内容を正当に評価されなかったとしても十分上位のクラスに割り当てられる結果だったと思います」
「それが、何故かEクラスという結果だった……」
ルベルの発言にアレクがボソリと呟く。
そんなアレクの発言にルベルが反応する。
「そうです。私としては、彼の実技試験が正当に評価されていればSクラスだったと言われても信じられる結果だったのに対しEクラスという結果だった。私は、入学試験の責任者である入学式の進行をしていたサフィズ教員に何故そのような結果になったのか確認したところ……実技試験は、最低評価での通過かつ筆記試験も最低合格点であったと言われました」
「えっ?さっきルベル先生が話されていたことと全然違うじゃないですか!?」
「そうです!レオは、私より魔法も使えるのにあんまりです!」
「ラーナ嬢もティアリス殿下も落ち着きなさい。ルベル先生の話は、まだ続きがあります」
ルベルの発言内容に咄嗟に思いを口に出すラーナとティアリス。
二人に対し、窘めるようにクロエルが発言しルベルが話を続ける。
「私としても、彼という才能がEクラスに埋もれてしまうなんて余りにも理不尽だと思い反論しました。しかし、返ってきた言葉は……『そうは言っても、実技試験を見たのは君と副学園長だけだろ?君からは、S評価であったものの、副学園長はE評価だった。最高責任者である副学園長も含めて入試対策委員会でも話し合ったが、正反対の評価でどちらを信じるかと言われれば、彼が不遇職である召喚士であるのを含めても長く教育に携わっている副学園長を信じるのは道理だろ?そんな状況下で彼の筆記試験に関しても高得点の評価であった君の評価は、便宜を図っていると言われても仕方がない。念の為、私から再度彼の解答を見直すことを副学園長に打診したところ副学園長も同様の疑念を抱いていたらしく先に解答を確認してくれていたのだが……解答欄の多くがズレていたようだ。ルベル教員、疲れているのかもしれないが君もしっかりと評価してくれないと困る』……と話され、私も解答が間違えている筈がない、もう一度筆記試験内容を確認させて欲しいとお答えしたのですが聞く耳を持っていただけない状況で……」
「そこでルベル先生は、学園長である私にこの一件を伝えに来てくれたというわけだ。私も忙しい身の上でね。試験の事はゴルグ副学園長に例年信じて任せていたのだが……今回のような一件は初めてでね。ルベル先生の事は、評価しているから少し調べて見たのだが……怪しい点が見つかったというわけだ。それに彼が副学園長になってから数年過去に遡っても同様に怪しい点が見つかった。本当は、入学前に証拠を掴んで正しい公平な結果を示したかったのだが……」
そう言い淀み表情を暗くするクロエルにレオナールが追求する。
「何か……あったのですか?」
「あぁ、すまない。信用していた私の落ち度なのだが、彼に入学試験の対応を依頼してからというもの……いつの間にか入学試験の解答用紙や実技試験内容を詳細に書かれた報告書がクラスが決定すると同時に焼却処分することに委員会で決まっていたようだ。例年、生徒が卒業まで全ての試験結果を保管していたのだが保管庫が圧迫するからという尤もな理由で採択されたらしい。貴族至上主義であるもののゴルグ副学園長には、教育に関して信頼していたのだがな……。委員会は、学園長の採択を必要としない自治組織であるという点を逆手に取ったようでね」
「なるほど……それで、学園長自ら調べていただいたものの既に私の試験結果が焼失していた為、証拠が見つからないというわけですか?」
「そういうことだ。一度委員会を招集し、ゴルグ副学園長を含めこの件を問い質したが……あまり良い結果でなくてな。取り敢えず、王宮と連携して残っていた最低限の資料に基づいて気になる点を洗いざらい調べていくつもりだ。すまない」
神妙な面持ちで深々と頭を下げるクロエル。
そんなクロエルにレオナールは、慌てた様子で返答する。
「頭を上げてください!調べて頂けるだけでも嬉しいです。……ですが、仮に不正が分かっても私の解答用紙が無いのであれば、上位のクラスに上がるのは困難なのではないですか?」
「その点は、安心してくれ。ゴルグ副学園長の不正が分かれば、その時点での特別試験を執り行い実力に応じたクラスに配属させてもらおうと考えている」
「なるほど。それが出来るのであれば、私も安心です」
クロエルとレオナールの話が纏まったその時。
イグニスが空気を読まず念話で語り掛ける。
『でもよ?主の実力があれば、普通にSクラスまで上がれるんじゃね?半年に一度あるんだろ?入れ替え試験』
『フォッフォッフォッ、確かにイグニスの言う通り主であれば、間違いないじゃろうな』
『そうですね。主なら間違いないでしょうね。それに特別試験を行うと言うのであれば、他の受験生が自らも不正があったのではないかと再試験を所望されるということも起こりかねないのではないですか?』
イグニスの発言に呼応する様にルーメンとアクアが追従し、アクアがクロエルに質問を投げ掛ける。
「確かに。証拠がない以上……それは、起こり得る可能性があるな。だとすれば、どうすれば……」
そんな悩みを口に出すクロエルに対し、ティアリスがポンと手を叩き解決案を提示する。
「それでしたら、副学園長の不正を問い質したと同時に複数名に不正が行われた可能性があるという名目のもと臨時の入れ替え試験を入学早々に執り行うというのはいかがですか?」
「なるほど。不正を糾弾するのは確証が無いので、名目を別に考えるべきかもしれませんが、それだと公平性を保てるか……うむ、その案でいきましょう」
クロエルは、納得した面持ちでティアリスの案を承諾するのであった。
勝手になろうランキングにも投票よろしくお願いします。




