召喚
「よし、契約の陣はこれで完成だな。あとは……。」
召喚術には、契約の陣と呼ばれる魔法陣を描く必要がある。召喚術の詠唱をもってして召喚士の魔力と引き換えに召喚獣が現れるのだ。普通は1匹だけだが、時々多数現れることもあるため後は運次第なのだ。
「じゃあ、いっちょ行きますか。スライム2匹や3匹出たとしてもなんとかなるだろ‼︎……我、レオナール・フォン・グリューゲルが命ずる。古の盟約に従い従者を求む。我が前に現れし強者よ、我と戰い我の望みを叶えよ。」
瞬く間に眩い光が辺りを包む。
俺は、目を開けていられなくなり視線を逸らした。
光が収まると召喚の陣に何かが現れた。
……。
…………それは、7つの卵だった。
「ぇ……卵?しかも7つ?失敗した?」
俺は、産まれて一番くらいパニクっていた。
過去の召喚に置いて卵が出た等という前例を聞いたことがないのだ。
しかも、7つなんて論外だ。
詠唱間違えた?いや、そんなはずはない。
もしや、魔力が多いからか?
……等と延々と自問自答していると、卵に変化があった。
ピキッパリ、ピキッパリパリパリ
一つの卵が割れたのを機に全ての卵が割れたのだ。
そして、現れたのは……りゅ、龍の子供。
…………。
「ハァーーーーーー⁉︎⁉︎⁉︎」
いや、俺の人生終了。さようなら父さん母さん、期待してくれていたのにごめんなさい。先立つ不孝をお許しください。
両膝をついて天を仰ぎながら手を組んで祈る。すると、龍達の方向から思いもよらない音が聞こえてきた。
グー……
「……へ?」
龍達をみると、俺のバックにある昼飯の鶏肉のサンドイッチをみていた。
「……たべるか?」
ハッと一斉に顔を上げる龍達、それぞれに少しずつだがサンドイッチを切り分けると嬉しそうに頬張っていた。
ピコーン。
「ん?」
頭の中で何かなった気がしたため、ステータスを開いてみた。
名前 :レオナール・フォン・グリューゲル
性別 :男
年齢 :7
種族 :人族
レベル:10
職業:召喚士
スキル:召喚術レベル10
【火龍王 イグニス】
【水龍王 アクア 】
【地龍王 テラ】
【風龍王 ウェントス】
【雷龍王 フルメン 】
【光龍王 ルーメン】
【闇龍王 テネブラエ】
大剣術レベル1
盾術レベル1
火魔法レベル3
(水魔法レベル4)
(風魔法レベル3)
(地魔法レベル3)
(雷魔法レベル3)
(光魔法レベル3)
(闇魔法レベル3)
称号 :グリューゲル家嫡男
転生者(他者からの閲覧禁止)
女神の加護(他者からの閲覧禁止)
……。
「ハァーーーーーーーー⁉︎」
け、契約してる?てか、召喚術がレベル10になってるじゃねえか⁉︎
それに、上位ランクの龍と言うだけでもあり得ないのに龍王種だと⁉︎いやいや、意味わかんねえし、マジありえねぇ‼︎
龍王種とは、その名の通り各々の属性に応じた龍の王達だ。自らの身体が老いて亡くなった際に自ら卵となり転生すると言われている。
また、卵から孵るのも数十年、下手すれば数百年に渡って世界に漂っている魔力を集めることで誕生するらしい。
ってか、なんでみんな一緒に卵が孵んだよ⁉︎
自分でノリツッコミして虚しい時間を過ごしていると頭の中に声が聞こえてきた。
『おそらく貴方の魔力が大き過ぎたのが原因ですね。』
『そだな。俺は、すげぇ大量の魔力感じたと思ったら何か呼ばれちまったな。』
『おらもそうだよ!おら、めっちゃ気持ちいい魔力で強えな!って思ったら呼ばれちった。』
『…………僕も同じ。』
『私も‼︎てか、みんな同じなんだ!すごいわね〜全員で会うのって何百年振りってぐらいじゃない?こんな人族いたのね?貴方何者なの?』
『儂もそうじゃな。おそらく転生者じゃろ。昔一度会ったことがあるわい。』
『なるほどね、僕も初めて会ったよ。それより、ねぇみんな主が話についてこれてないよ?』
一斉に龍達が話しかけてきた。
えっと、俺は頭がおかしくなったのか?
取り敢えず、一番最初の青い鱗の諭すようなお姉さん的口調の話し方をしたのがアクア。
そして、次の赤い鱗の俺口調のノリの良さげな話し方がイグニス。
焦茶の鱗の田舎っ子のような口調が、テラ。
黒い鱗の言葉数の少ない暗いやつは、テネブラエ。
緑の鱗の活発そうな女の子の口調が、ウェントス。
白い鱗の爺さんのような話し方が、ルーメン。
最後の黄色の鱗の僕っ娘がフルメンだな。
ん?てか、どうやって話しかけてきたんだ?
『念話じゃよ。』
あっ、そうなんだ。なるほどね〜念話か、そうかそうか……
「って、俺の考えてたこと勝手に読むなよ。」
『そう言われてものぉ〜それが念話じゃからな。心そのものと会話するようなもんじゃから何となくわかるんじゃよ。まぁ念話を使えるのは儂ら龍王種を含む一部の者くらいじゃから驚くのも無理ないかのぉ。』
「へ〜そうだったのか。よし、7頭も一緒に召喚出来たのは俺の魔力の所為だとしよう。そこは置いとこう。質問なんだが、何で俺と契約できてるんだ?戦ってもねえし屈服もさせてねぇだろ。
この状況を普通に考えても、お前ら相手だと俺は死んでるレベルだぞ?それに契約することでお前らの自由は俺が死ぬまで強制力が働いて自由になれないんだぞ?お前らにメリットないだろ?」
『そうでもねえぜ。俺は、今まで召喚されることすらなかったし、精々長くても人間なんて100年くらいだろ?俺ら龍王種に対して100年なんてあっと言う間のことなんだよ。だから、楽しそうだし契約したんだ。』
『おらは、暖かい気持ちいい魔力が気に入ったからかな。』
『私は、全龍王種が召喚され一緒に孵ったのは何かしらの運命を感じたらからですね。』
『……僕は、みんなと一緒にいたいから。』
『そうねー。私はイグニスと同じかな‼︎こんな経験今後もあるかすらわからないし楽しみじゃん‼︎』
『僕もみんながほとんど言ってくれた通りかな。人間の世界にも興味あるしね。』
『フォフォフォ。儂は、全龍王種の纏め役じゃ。一番転生を繰り返しておるし、皆が契約するのなら年長者としての纏め役が必要じゃろ?よろしく頼むぞ主よ。』
それぞれが思い思い語ってくれた言葉は納得できた。龍王種として生まれたことで、人間世界とか見れるわけ無いよな。確かに、俺と契約することで高々100年くらい過ごすだけだが刺激はあるだろう。
「そうだったのか、理由は分かったよ。じゃぁこれからよろしくな‼︎俺は、てっきりサンドイッチが美味くて契約した現金な奴らだと思ってたよ。」
『『『『『『『………。』』』』』』』
「ん?何この沈黙?……え、もしかして?」
『ん、んなわけ無いだろ⁉︎俺らは龍王種だぜ⁉︎』
『そ、そ、そうよ‼︎私達は、そんな美味しい食べものなんて食い飽きてるんだから‼︎』
『…………でも、美味しかった。』
『おらも同感〜。』
『僕らがさっき言ったことは本当だし、主の魔力がすごいのが一番の理由だよ‼︎でも、確かに美味しかったから他にも美味しいの食べれるかと……。』
『…………。』
『フォッフォッフォッ。』
……。
おいおい、マジかよ……てか、なんで俺の心は読まれるのに、俺がこいつらの心の中分かんねえんだよ‼︎
それにアクア、お前って奴は、自分の立ち場が悪いからって喋らずそっぽ向くってどうよ?ルーメンも笑って誤魔化そうとしてるし。
でもまあ、そんなこと言っても変わらないし仕方ないか。
それに、こいつらと一緒だと楽しそうだし、面白いことが起こりそうだから儲けものだよな。
「じゃー改めてよろしくな‼︎俺のことは、主でもレオでも好きな方でよんでくれ!まぁ美味しいものは俺もまだ詳しく知らないからその時その時ということで‼︎」
俺は、7頭の幼龍に向かって仁王立ちで高らかに宣言する。
『『『『『『『よろしく(な)(ね)(…)(のぅ)(お願いします)(〜)』』』』』』』
こうして7頭との生活が始まった。