東部動乱Part2
説明を省こうにも中々難しい…汗
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◇ーミュレー湿原西部王国軍sideー◇
軍議より6日経った今日、アリウス率いる王国軍本隊はミュレー湿原に到着した。
そんなアリウスの到着の報せを受け、荘厳な鎧を身に纏う貴族が足早にアリウスの手前に参上し、片膝立ちで頭を垂れる。
「殿下、お待ちしておりました。」
「ジルベルト侯爵か、急に指揮を任せてすまなかったな。貴公以上に東部貴族の先遣軍を任せられる人材がいなかったんだ。」
アリウスは、馬から飛び降りると同時にジルベルトに返答する。
「いえ、今回の反逆は東部を預かる一人である私も気づくことのできなかった失態です。東部先遣軍の指揮官として汚名返上できる機会をお与えくださり感謝の言葉しかございません。殿下が御到着されるまでの報告をさせて頂きたいてもよろしいでしょうか?」
「そう言ってもらえると助かる。報告は、軍の幹部と共に聞かせてもらおう。ナイゼル、直ぐに軍議を開く旨を各軍の軍長及び副官に伝令しろ。」
「ハッ、畏まりました。」
アリウスは、側に控えていたナイゼルに指示を出す。また、ナイゼルも同様に自らの私兵を用いて各軍に伝令を出すのだった。
◇ー王国軍本陣天幕ー◇
「皆、揃ったようだな。」
ナイゼルは、天幕内にいる人物達に視線を向け話し掛け、全員の視線が自分に注がれたことを確認し再度話し始める。
「ではまず、前回の軍議にはいなかった者もいる為再度紹介させてもらおう。今回の王国軍の総司令は、アリウス殿下が着任し、参謀として私が軍全体の指示を出すことになるのでよろしく頼む。また、今回の王国軍は、左軍1万5千、右軍1万5千、中央軍3万の3軍に分けて行動することになる。左軍長には、疲れもあるかと思うが最前線で指揮を振るっていたジルベルト侯爵にそのまま東部貴族を纏めてもらう。そして、補佐として副官には2名ゼブルス辺境伯とデュロー伯爵が着任している。続けて右軍長には、南部のファルア公爵、副官にはグロウ侯爵とビュレル伯爵が着任。最後に中央軍長には、北部のシュルク公爵、副官にはエルド侯爵とサディル伯爵が着任する運びとなった。後詰めの人員については、西部の者が多い為早くてもあと5日は掛かるだろう。それまでに型をつけれれば重畳だが、後は貴公等には頑張り次第だ。……では、本題の現状報告をジルベルト侯爵にお頼みする。」
ナイゼルは、一人一人の名前を呼称し簡単に人事を伝えると早々に着席する。
そして、交代するようにジルベルトが席を立ち報告を始める。
「では、順を追って報告させて頂きます。まず反乱軍の現状ですが、奴等はミュレー湿原中部を進軍しています。我々は、奴等より2日程前にミュレー湿原に到着した為、簡易的にではありますが事前に魔法を用いて大規模な罠を東部方面に仕掛けました。しかし、情報にあった冒険者達でしょうが、新人では考えられない上級魔法を用いて尽く罠を破壊されました。結果、半日程度の足止めにしかならなかった状況です。今は、第1陣と我々で前線を保っていますが、徐々に後退を強いられています。また、例の者達は、罠の破壊した後に何故か陣の後方に下がり、代わって反乱軍の私兵が矢面に立っています。そして、敵私兵の隊長らしき兵士を捕らえたのですが、思わぬ情報が入りました。彼の領主であるゲルグ伯爵なのですが、半年程前に外交の為グラエス公爵に会いに行ってからというもの人が変わったそうです。以前は、温厚で国の事を一番に考える方だったのに異様にグラエス公爵贔屓し始め、神とまで崇めるに至ったようです。今回の反乱についても、信頼を置いていた側近の前隊長が王国に就くべきと進言したところ、本人のみならず家族までもが逆賊として処刑された為、私兵達は反論出来ず従軍したそうです。また、他の貴族についても同様の状況があったようです。ーー以上が私の持ち得る情報になります。」
ジルベルトは、報告を終え着席する。
アリウスは、報告を聞くや否や考えるかのように机に肘をつきながら眼前で指を組む。
暫く瞑目し、視線を一人の男に向け話し掛ける。
「ユーリス、筆頭宮廷魔術師の貴公は先程の報告をどう思う?」
ユーリスと呼ばれたローブを纏う痩せた男もまた瞑目し、暫く考えた後に重々しく口を開いた。
「……闇魔法。それも、達人の域以上の者の精神操作を受けたのだと思います。我々、宮廷魔術師の中にも闇魔法を用いることが出来るものがいますが、その者でさえ達人の域には到達できていません。皆も承知の通り光と闇属性に至っては、スキルレベルを上げることが困難です。この国にそれ程の手練れがいたとは思えません。」
「……やはりか。私もその可能性が真っ先に頭に浮かんだ。城の書物に残っていた過去の伝承に似てるとも……」
アリウスは、冷たい汗が背中に流れるのを感じ最悪の可能性が頭に過ぎり言葉を切る。
(まさか……反乱軍には魔族が付いているのか?有り得るな……魔族は、闇魔法の恩恵が高いと記述されていた。更には、ルーメンからも魔族が近くにいるということは確信を得ているしな。)
アリウスは、急に自らの世界に入ったことでナイゼルが心配した面持ちで声を掛けてきた。
「殿下、どうかなさいましたか?」
アリウスは、ナイゼルの言葉でハッと顔を上げると軍議に参加している者達と視線が合う。
「ああ、すまない。何でもな……いこともないか。そうだな……これから話すことは、皆にとって信じられないことかもしれない。だが、私の中では、高い確率で有り得る話だと思うから貴公等に話す。今回の冒険者や奴隷達の状況然り貴族連中もそうだが過去の文献にも同じ様な件が記載されていた。……奴等の背後には、魔族が存在している可能性がある。」
アリウスは、真剣な面持ちで重く告げる。しかし、暫く沈黙が続くと軍議室は笑いに包まれた。
「で、殿下も御冗談を仰られることがあるんですね。アハハハハ。」
「殿下、流石魔族なんて数百年領域から出てきてないんですよ?それに何で魔族だと言い切れるんですか?それなら他国の闇魔法に長けている者の可能性の方が高いでしょう?」
軍議室では、様々なアリウスに対する意見が飛び交う。そんな中、アリウスは思いっきり机を叩き立ち上がる。周囲の貴族は、皆瞬時に固まりアリウスに視線を向けた。
「私は、大真面目だ。兎に角、魔族がいる可能性を考慮して行動する様にしてくれ。ーー以上だ。明朝、ミュレー湿原にて開戦となるから心積もりしておいてくれ。」
アリウスは、そう言い残すと軍議室を後にするのだった。
◇ー王国軍本陣アリウス控え天幕ー◇
アリウスは、おもむろに椅子に座り込み考え込む。
(やはり誰も信じるわけがないか……。実際、私もレオから魔族の事を聞いていなかったら考えもしなかっただろうし、皆の意見も最もだ。……だが、ティアの苦しみの元凶がいるかもしれないと思ったら心境穏やかでは居られないな。)
アリウスは、背凭れに凭れつつ天を仰ぐ。そんな時、天幕にナイゼルが入室してきた。
「殿下、貴方らしくないですな。あれ程怒りを露わにするなんて。」
ナイゼルは、苦笑を浮かべながらアリウスに話し掛ける。
そして、アリウスもまたナイゼルの言葉を聞き苦笑を浮かべる。
「すまない。私も気が立ってしまったみたいだ。あの後どうなった?」
「そうですな……最初は皆殿下の冗談かと思っていた様ですが、あれだけ強く言えば殿下が本気だということは伝わったでしょう。しかし、伝承の類の話ですし、半信半疑と言ったところでしょうか?少しは魔族に重きを置いてくれると思いますが、あまり期待は出来ないでしょうな。」
ナイゼルは、その後の貴族達の様子を見て自身の見解を述べる。
アリウスは、そんなナイゼルの報告を聞き表情が少し緩みホッと溜息を吐く。
「そうか、少しでも意識してくれたのなら重畳だ。何かあった時、少しでも心積もり出来ていたら違うというからな。……あっ、そうだ。ナイゼル、ここにグリューゲル卿を呼んでくれないか?」
アリウスは、暫し安堵すると思い出した様にナイゼルに要求を伝える。
「グリューゲル卿って、あの名誉貴族のジークのことですか?それは、構いませんが何の御用なのでしょうか?」
「いや、彼の実力は私も目を置いていてね。少し頼みたいことがあって……。」
「そうですか……畏まりました。」
ナイゼルは、そう言い残し天幕を後にするのだった。
◇ーミュレー湿原東部グラエス公爵sideー◇
「ふふふ、この軍隊……いや、この力があれば私の野望が叶ったも同然ではないか。貴様も思った以上に良い働きをしてくれる。このゴミ共をこんなにも有効活用出来るとはな。」
エイルは、馬上から欲望に包まれた様な濁った目をしながら、眼下にいる5万人もの低ランク冒険者や奴隷、新人私兵を見下す。
そんな男の傍らには、漆黒のローブに包まれ所々から見える浅黒い肌を晒す人物が寄り添っていた。
「クフフフ、いえいえ私目には勿体無いお言葉です。私の使い魔によると、奴等は明日総攻撃を掛けてくる様ですね。私の力では、たったのこれ程しか操ることが出来ず申し訳ありません。」
「いや、構わん。此奴等は、本来であればゴミ同然の価値しかないが、今となっては使い捨てだが貴重な戦力だ。死兵……そう文字通り死すら厭わない人形そのものだな。」
エイルは、そう語ると濁った目が更に一段と濁る。
そんな様子をローブの人物は、フードの下から怪しげな笑みを浮かべつつ見つめる。
「それもこれも貴方様のお力です。今回の戦は、貴方様にも我々にも益があったからこその共同戦線です。共に歴史を作りましょうぞ。クフフフ。」
「ふん、歴史か……良い響きだな。」
エイルの高らかな笑い声が響かせつつ自陣に戻るのだった。
次回より開戦します。
現在修正作業を並行しています。
・以前より感想で一人称だったり三人称だったり分からないという意見をいただきました。それを可能な限り分かりやすく纏めています。物語の進行に変わりはありません。また、主人公の回想等を()で括るように纏めています。すべての話が修正完了しましたら一斉に改稿致します。
・龍の説明ですが、日本の蛇のような龍をイメージしてしまうと言う意見も頂きました。西洋風のドラゴンのイメージです。補足説明に後日記載します。
様々なご意見あるかと思いますが、これからも続けて更新頑張ろうと思います。
ゆっくりですが気長に待っていただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。
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