表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2015/08/11

作者:

気が付くと外は生ける屍ばかりになっていた。原因など知る由もない。

生の人間に香りがあるかのように、死体たちがこぞって僕に寄ってくる。

食べられちゃあいけないから、恐怖に突き動かされるまま人のいない方へいない方へ逃げた。

幸運にも山奥に小屋を見つけたので、僕はそこに勝手に居座ることにした。

しかしこんな辺鄙なところだからって安心できなくて、窓に影が通るたびに体がすくんでしまう。

なんで僕はこんな目に…。

苛立ちと不安で体を掻きむしる。

ぼりぼりぼりぼりばりばりばりばりぼりぼりぼりぼりぼりぼり

引っ掻いても引っ掻いてもむず痒いもんだからひたすら爪を体に立てる。

爪が血だらけになっても止まらないもんだから、だんだん怖くなってくるもんだ。

ぼりぼりぼりぼりばりばりばりばりぼりぼりぼりぼりぼりぼり

身をよじるような痒みに加えて皮膚の下から虫が這いずり回るような奇妙な感覚が加わった。

皮膚の表面を見たって変わらないのだが、感覚だけは生々しい。

ずるり、ずるりなんて蠢くもんだから喉からヒュッと息が漏れる。

「あ、あ、あ、」

痒いし気持ち悪いしむずむずするしで混乱した僕の頭は、目の前を通った小さな羽虫にすら鳥肌を立てた。痒い。

肌が真っ赤に赤く腫れて血が出ているのに必死に掻きつづける僕を、いつからか少女は見つめていた。

「ねぇ。」

「ひっ」

間抜けな声で振り向いた僕だったのだが、少女は構わず僕の手を握った。

「こっち。」

少女は僕をどこかに連れて行ってくれるようで引かれるままに付いて行く。

連れられた先は地下空間でこんな小さな小屋のどこに入り口があったのかわからないが、感心した。

「ここなら、大丈夫だから。」

彼女は長い黒髪を揺らしながら微笑んだ。耳鳴りが頭を響かせた。

「っ。」

きいいいいん。

すると天井から死人が這いずってきた。

驚いた少女はパニックになって叫んでいる。

僕はぼんやりとそれを眺めながらつっ立って

あぁ、こんな話何かのマンガで読んだぞ。

と、ぼんやりと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ