2015/08/11
気が付くと外は生ける屍ばかりになっていた。原因など知る由もない。
生の人間に香りがあるかのように、死体たちがこぞって僕に寄ってくる。
食べられちゃあいけないから、恐怖に突き動かされるまま人のいない方へいない方へ逃げた。
幸運にも山奥に小屋を見つけたので、僕はそこに勝手に居座ることにした。
しかしこんな辺鄙なところだからって安心できなくて、窓に影が通るたびに体がすくんでしまう。
なんで僕はこんな目に…。
苛立ちと不安で体を掻きむしる。
ぼりぼりぼりぼりばりばりばりばりぼりぼりぼりぼりぼりぼり
引っ掻いても引っ掻いてもむず痒いもんだからひたすら爪を体に立てる。
爪が血だらけになっても止まらないもんだから、だんだん怖くなってくるもんだ。
ぼりぼりぼりぼりばりばりばりばりぼりぼりぼりぼりぼりぼり
身をよじるような痒みに加えて皮膚の下から虫が這いずり回るような奇妙な感覚が加わった。
皮膚の表面を見たって変わらないのだが、感覚だけは生々しい。
ずるり、ずるりなんて蠢くもんだから喉からヒュッと息が漏れる。
「あ、あ、あ、」
痒いし気持ち悪いしむずむずするしで混乱した僕の頭は、目の前を通った小さな羽虫にすら鳥肌を立てた。痒い。
肌が真っ赤に赤く腫れて血が出ているのに必死に掻きつづける僕を、いつからか少女は見つめていた。
「ねぇ。」
「ひっ」
間抜けな声で振り向いた僕だったのだが、少女は構わず僕の手を握った。
「こっち。」
少女は僕をどこかに連れて行ってくれるようで引かれるままに付いて行く。
連れられた先は地下空間でこんな小さな小屋のどこに入り口があったのかわからないが、感心した。
「ここなら、大丈夫だから。」
彼女は長い黒髪を揺らしながら微笑んだ。耳鳴りが頭を響かせた。
「っ。」
きいいいいん。
すると天井から死人が這いずってきた。
驚いた少女はパニックになって叫んでいる。
僕はぼんやりとそれを眺めながらつっ立って
あぁ、こんな話何かのマンガで読んだぞ。
と、ぼんやりと思っていた。