第七話 謎の客のお困りごと2
なんか、名前からして怪しげな魔法薬だな……! 魔法薬の上を行っているのか!?
「『魔術薬』って一体何?」
「しらねーけど、夜中になるといつも足が勝手に動くんだ。気がつくとあの女のいるドロップ宮殿に足が向かおうとしているからな! あらがうことに必死だぜ!」
「う、うわ~……」
ホントに魔術みたいな薬だな……。でも、エルヴィンがこの異世界に魔法みたいな奇怪な力はないって言ってたけど……。
そのとき、エルヴィンがラボラトリーの奥から魔法薬のビンをもってやってきた。
「ほら、その魔法薬の中和剤だ」
どうやら、ラボラトリーの奥まで話が聞こえていたらしい。
流石、エルヴィン師匠! お仕事が早いですね~!
信じられないと言った様子で、そのお客は魔法薬のビンを受け取った。
「お代は?」
「タダで良いよ」
「えっ!? エルヴィンいいの!?」
たしかに、お客さんへのサービスは大事だけど……。いいのか?
「構わんさ」
「サンキュ!」
エルヴィンってやっぱり優しいなぁ。
「こんにちは! このラボラトリーが王都一だって聞いたんだけど!」
それまで、店内を見ていたもうひとりの男のお客さんが急に話しかけてきた。
「どうも~! 王都ファンティア一のエルヴィンラボラトリーです!」
「じゃあ、俺も『魔術草』の中和剤をくれるかな!」
どうやら、この人は彼の話を聞いていたらしい。
「あるよ。この人のついでに作ったのがあるから、持って行けよ。タダで良いぞ」
「なんか、エルヴィン今日は太っ腹だね?」
「あーざす!」
エルヴィンは、そのままラボラトリーの奥に戻って行った。
エルヴィン、やけに今日のお客さんには素っ気ないなぁ。どうしたんだ?
芽々がラボラトリーの奥のエルヴィンを気にかけていると、お客二人が親しげに話しはじめた。
「もしかして、君も俺の仲間なのかな?」
「そういうことか! フッ!」
な、なにがだ……? さっぱり分からんがな。
「じゃあ、恩に着るぜ!」
「さいなら! お代の代わりにラボラトリーの宣伝しておいてやるからな~」
「ありがとうございました~」
ふう! 良いことをした後は気持ちがいいなぁ~。
芽々はレシピ帳を持って、ラボラトリーの方まで駆けて行った。
「エルヴィン、中和剤ってどうやって作ったの?」
メモを取る用意は完璧にできている。
エルヴィンは、チラリと芽々のノートを一瞥した。
「メモを取るのか? 今回のは、使えないと思うけどな……」
「いいの! エルヴィンが出かけているときは私が調合しなくちゃならないんだからね!」
芽々に根負けしたのか、エルヴィンは仕方なさ気に指折りはじめた。
「『解毒草一〇〇グラ』に『中和草一〇〇グラ』それから……」
「ふむふむ! それから?」
完璧にメモを取るぞ!
「『未完草一〇〇グラ』を入れて魔法機にかけて、できあがり!」
エルヴィンの声は明るかった。でも、芽々は耳を疑った。
「えっ!? み、未完草!?」
よりによって未完草を入れたのか!?
「ああそうだ」
「でも、さっきの話だと作った魔法薬が全部未完成になるって……!?」
まさか、この間大変だったことを忘れてしまったのか!?
よりによって、お客さんに『未完草』を使ってしまうだなんて……!
芽々がエルヴィンの脳みそを心配していると、エルヴィンが芽々の髪の毛を撫でまわしてきた。
わわっ……!
「良いんだ。あいつらは『わけあり』だからな」
「わけあり……?」
わけありって、アウトレットってこと……じゃないよなぁ……。
「ええと、どういう意味なの?」
「まあ、芽々が気にするようなことじゃない。もう、あのお客はこのラボラトリーには来ないかもしれないしな」
ますます、よく分からん!
しかし、エルヴィンの研究を手伝っているうちに、芽々はすっかりその事を忘れてしまったのだった。




