第六話 謎の客のお困りごと
エルヴィンがドロップ宮殿から帰ってきた。ドアチャイムの音と共に、エルヴィンが木の箱一杯の材料をもって割り込むようにして入ってきた。
「エルヴィン、お帰り~」
「ああ、芽々ただいま。実はアリエンさんに訊いたんだけど」
エルヴィンの話によると、『未完草』は一緒に作った魔法薬が全部未完成になるらしい。
「ま、まじで!?」
「嵌められたかもしれないけど、何とかする」
エルヴィンは、アリエンから使い物にならない材料を貰ってきたとも言っていた。そんなもの貰ってきてどうするんだろうな~。天才の考えることは分からんな~。
エルヴィンは張り切って、ラボラトリーの奥に消えて行った。
芽々は、ラボラトリーの奥で研究しているエルヴィンの背中を見ながら、空いた店内の棚に魔法薬を補充していた。
そんなとき、ラボラトリーのドアチャイムの音が寒い外気に鳴らされた。
「こんちは~……」
寒そうにして入ってきたのは、旅人の格好をした釣り目のお兄さんだった。
「アレ? この間の?」
ティーモ大臣を見て逃げ帰ったあの人だった。周りの客の顔を恐々確かめている。どことなく不審人物だ。
「今日はあの女はいないよな……?」
「ティーモ大臣のこと?」
「ああ」
ティーモ大臣をめっちゃ恐れているらしい。不審人物だと決めてかかったけど、親近感がわく。こちらもティーモ大臣に嵌められたので、立場が似ている。
「まだ依頼を完了してないから、ティーモ大臣は来ないと思うよ」
芽々の言葉に安堵したのか、彼は胸を撫で下ろしていた。
「ああ、良かった~! 実は、あの女と付き合っていたんだけど、別れるって言ったら変な魔法薬を飲まされてさぁ~! もう無理!」
な、なんだって~!? 変な魔法薬を飲まされた!?
ラボラトリーをやっている者としては『用法容量を守って適切にお使いください』だよ!
でも、このラボラトリーの魔法薬を悪用されたとしても、そんな悪人の責任なんてとる気はさらさらない。普通に飲めば健康になる薬をそんな使い方をするのだから、それは全て使用者の責任なのだ。
「それは、ガーディアンに訴えたほうが良いよ!」
ガーディアンとは、このファーグランディア王国で言うところの警察みたいな組織のことだ。
「行ったけど、相手にしてくれなくてさぁ~。何しろ、ティーモは大臣だろ?」
「な、なるほど……」
権力者が相手だからどうにもならないわけか……。しかし、付き合っていた相手にそんなことできるもんなのかな。付き合ったことがない私にはわからん事だが。ものすごい愛情が歪んじゃったのかな。
なんとか、力になれないかな。私じゃダメでもエルヴィンなら何とかなるかもしれないから。
芽々は頷いて、考えをめぐらせた。
「それで、魔法薬は何時飲まされたの?」
「一週間前……」
一週間前なら私の薬草入りチョコレートじゃ無理か。
すでに、魔法薬は体に吸収されてしまっているだろうからな。
「ふむ。一体ティーモ大臣に何を飲まされたの?」
「『魔術薬』だって言ってた」
「ま、『魔術薬』?」
な、なんじゃそりゃ……!?




