第二話 魔法薬依頼とティーモ大臣と謎の客
今日はみんな元気なのか、客足が途絶えていた。
昼間の長閑でアンニュイな午後のことだ。
芽々はお昼ご飯を食べたあと、やることもなくてストーブの前でぬくぬくしていた。
そんな時、ラボラトリーのドアチャイムが寒々と音を立てた。
「ごきげんよう……」
「いらっしゃいませ~って、こないだ薬草を拾ってくれた人じゃないですか!」
あの、長いストレートの金髪に青い目の知的な女性だ。今日は外套を着て、マフラーをしている。雪は降っていないようだが、外は相当寒いみたいだ。
「ティーモです。反国王派の大臣をやっています……」
「ティーモ大臣ですか。私は芽々――いや、私の名前ってご存じなんですよね?」
「ああ。芽々さんの事は良く聞き及んでいます……」
「そうですか! 私って超有名人だな~!」
芽々は頭を掻いていたが、ティーモ大臣はこちらを無表情で静観していた。
な、なんだか、美人に見つめられると照れるぜ……!
芽々が照れて言葉に詰まっていると、奥からエルヴィンが顔を見せた。
「なんだ? お客さん?」
「こちら、ティーモ大臣」
「どうも、エルヴィンさん。それで、今度他国に売るための美容薬を開発してもらいたくて、王都ファンティアのラボラトリーを回っているんですが……」
美容薬かぁ……! エルヴィンの作った美容薬だったら、私も飲んでみたいな~!
滅茶苦茶美人になりそうな感じがするなぁ~!
「エルヴィン、どうする?」
芽々はワクワクしながら隣のエルヴィンに振った。
「エルヴィンさんは、王室付きの調合師だと伺いました。毎月の研究費が出ている以上、断る権利はないはずですが。勿論、報酬も出ますけど……」
そっと、契約書を渡してきた。報酬は一〇〇万ティアだ。
芽々とエルヴィンは顔を見合わせてにやりと笑った。
「命令ですか。じゃあ仕方ないな」
エルヴィンは断る理由がみつからないようだった。
ちょっと強引な気もするけれど、私もこの条件なら良いと思うよ~!
エルヴィンは契約書にサインしている。
「それで、今回は他国から輸入した『未完草』を使ってください。あとの、薬草は自由に組み合わせてくださって構いませんので……」
「かしこまりました!」
久しぶりの研究だ! 滅茶苦茶心が躍るなぁ!
ティーモ大臣は『未完草』の薬草を配下に持ってこさせて、大袋を隅に三つ積み重ねた。
そんな時、またドアチャイムの音が鳴った。
「こんちわ。このラボラトリーって王都ファンティアで一番有名だって聞いたんだけど……」
旅人のような恰好をして、切れ長の目が格好良い。いかにも健康そうに日焼けしていて、この人が病気なんて信じられない。それほどに、物怖じしなさそうなお兄さんだった。
「っ!? うわああああ、何でもないです! 失礼しました!」
けれど、何かに恐れをなしたように、逃げ帰ってしまった。
それには、エルヴィンも芽々も呆気にとられた。
「な、なんだぁ? 冷やかしか?」
「な、なんだろね……?」
一体、何を見て……。旅人のお兄さんが見ていた視線の痕跡を追った。
見ていたのは――えっ!? ティーモ大臣……!?
そのティーモ大臣は、厳しい目をしてドアの向こうに去っていった彼を睨んでいた。
「ティーモ大臣……?」
「ああ、すみません……」
二人は、知り合いなのかな……?
しかし、芽々はティーモ大臣が引き上げて行った後、その事をすっかり忘れてしまった。
それほど、他人事で自分には関係ない事だと思っていたからだ。




