第八話 芽々VSパトリオット大臣
お付きの者に案内されて、芽々はクリストファー王子の部屋に通された。
しかし、そこには先客がいた。
芽々の絨毯を踏む静かな足音に気づいて、彼は顔を上げた。
「芽々さん、クリストファー様のお部屋に何のご用かな?」
この間クリストファー王子と一緒にいた、パトリオット大臣だ。
パトリオット大臣は、相変わらず細い目で愛想良く微笑んでいる。
「クリストファー様にお話があって」
「クリストファー様は今席を外しておられる」
そっか、席を外していらっしゃるのか。
「じゃあ、待たせてもらいます……」
でも、このパトリオット大臣と一緒に待つのは嫌だなぁ。なんとなく、手玉に取られそうで苦手だなぁ。
「芽々さん、君はクリストファー様の事はお好きかい?」
パトリオット大臣の問いに、吹き出しそうになった。
案の定、訊きにくいことをパトリオット大臣は直球で尋ねてきた。これは、下手な回答をすると後が大変なことになりそうだと芽々は直感した。
「……まあ、恋愛対象外としては敬愛してます……」
芽々は恋愛対象『外』を強調して言うと、パトリオット大臣は気色ばんだ。
げっ、なんか、怒ってる!? な、なんかまずいことを言ったかな!?
「そ、それよりも、フォルティア国の取り引きのことでお話が!」
「女が政治の事に口を出すなんて、君は常識がないのかな?」
友好的な空気は、すっかり冷ややかな空気に取って代わった。
でも常識って……!
この異世界では女が政治に口出ししたらいけないのか!?
「私の元居た国では、女も政治に参加しています! それに王妃様だって国王様とご公務でご同行されていたとお聞きしました!」
「王妃様は特別なんだよ。それとも、君は王室の地位でも持っているというのかな?」
「違いますけど! 私はクリストファー様にお話が……!」
パトリオット大臣はフフンと目を細めた。まるで一癖も二癖もある狐のようだ。
「じゃあ、私と取引しよう?」
じゃあって……!?
なんで、私がパトリオット大臣と取引せにゃならんのだ?
「と、取り引きって……?」
自分の声が震えている。怖かったが一応訊いてみた。
「私の言うことを聞いてくれたら、芽々さんも政治に参加しても良いよ?」
「っ!?」
さ……流石クルーエル大臣の配下さんだ……!
言うことがクルーエル大臣そっくりすぎてひっくり返るかと思った……!
「二人で何の話をしているのかな?」
やっとクリストファー王子が帰って来られた。
芽々とパトリオット大臣の会話に興味津々のご様子だ。
「お帰りなさいませ」
パトリオット大臣はクリストファー王子を前に跪いた。けれど、芽々は素早く進み出た。
「クリストファー様! お話があります!」
「芽々さん! 出過ぎた真似は!」
芽々が、出し抜けにクリストファー王子に話しかけたものだから、パトリオット大臣が慌てて止めに入った。
「パトリオット! 芽々は構わない。黙っていてくれ」
「っ……!」
「それでこそ、クリストファー様だね!」
パトリオット大臣は面白くなさそうだったが、かしこまって脇に控えた。そして、仏頂面で芽々を盗み見ていた。
芽々は構わずに続けた。
「クリストファー様、フォルティア王国の取引で使えるお話をクルーエル大臣からお聞きしました!」
「ほう、是非とも聞かせてくれ」
クリストファー王子は、目をキラキラさせたまなざしで見つめて、芽々の話に耳を傾けた。




