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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第二部◆第一章】★*☆*★・・・・・・・★
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第六話 謎の調合レシピの正体

 芽々たちはエルヴィンラボラトリーに帰ってきた。アリエンは椅子に座ってぐったりしている。エルヴィンがペンを走らせてメモに走り書きをした。メモを切り取って、芽々に手渡してきた。


「芽々、これを調合してくれ」


 芽々は、メモを確認する。達筆な字で調合レシピが書かれてあった。


『『ネコ耳感染症の特効薬』は『ビオビオ草五〇グラ』に『フェルフェル草五〇グラ』に『ミンミン草五〇グラ』で『成功率百パーセント』』


「分かった!」


 芽々は早速材料を量りにかけ始めた。


「『ビオビオ草五〇グラ』に……『フェルフェル草五〇グラ』に……『ミンミン草五〇グラ』っと!」


 ってこれって、ビオフ〇ルミン……!?

 だれだ、こんな言葉遊び考えたやつは!? 烏羽玉先生か……?

 元の世界に思いを馳せると、烏羽玉先生はくしゃみをしていた。


 魔法機の手形に手を合わせている間に、魔法機が伸縮してポンと音を立てた。


「できた! 成功したよ~!」


 芽々はグラスに注いで、アリエンに手渡した。青汁のようなカンジの液体に仕上がっている。


「アリエンさん、どうぞ?」


 子供の口には苦いかもしれないけど……と言ったら、アリエンさんは怒るかもしれないので、芽々は黙っていた。


「ううっ……まず! まじありえん!」


 アリエンさんは、ピーマンを食べるような顔で魔法薬を飲み干した。

 すると、ピョッと生えていたネコ耳が頭の中に引っ込んで綺麗に消滅した。


「おおお! な、治ったぞ!」


 アリエンはまじありえんくらい大喜びしている。


「これで、僕は無敵だ! これでネコ耳が生えていると馬鹿にされることもない!」

「よかったな~」

「一件落着だね」


 アリエンさんが悦に入ったように大笑いしているので、芽々とエルヴィンも釣られるようにして笑った。

 その喜びを奪うように、ドアチャイムの音が鳴った。


「じゃまするぞ」

「あれ? フームス隊長?」


 入ってきたのは、ファーグランディア王国の警察のような組織ガーディアンのフームス隊長とその部下三人だ。

 フームス隊長は相変わらずへビースモーカーらしい。タバコを吸いながら入ってきたので、もわっと煙が部屋の中にわだかまった。


 喜びに沸いていた三人の笑い顔が固まった。


「今日はどうされたんですか? 芽々がまた何か?」

「わ、私は何もしてないよ!」


 た、多分、何もしてないはずだ……と思う。自信がないのは、私が無意識のうちに何かしでかしているかもしれないからだ。


「今日は、魔法薬管理師のアリエンに用があってきた」

「アリエンさんに!?」


 芽々は、ギョッとした。一番何もしなさそうなアリエンが名指しされたからだ。エルヴィンの視線がアリエンに集中する。だから、成長したアリエンを見ても、フームス隊長は驚くこともなく、本人だと悟ったらしい。


「アリエン。門外不出の『若返り薬』のレシピを持ち出したな?」

「えっ? 『若返り薬』って?」


 聞いたことない魔法薬だけど、嫌な予感がするのはなんでだ!?


「僕が、芽々に教えた魔法薬の調合レシピの事だ」


 アリエンの補足した答えに芽々は驚愕した。


「ええっ!? アレって、そんなに大層なレシピだったの!?」

「ああ、王妃様の門外不出の『若返り薬』だよ。まじありえんけど」


 アリエンが気落ちしたように告白した。


「ええっ!? よりによって王妃様の!?」


 フームス隊長は頷いて、美味しそうに煙草をふかした。


「王妃様はお怒りだ。アリエンの魔法薬管理師の資格を剥奪すると仰られている」

「まあ、仕方ないな……」


 アリエンは簡単に肩を落とした。


「ええっ!? 諦めちゃうの!?」

「間違った判断をした僕の責任だろ。まじありえんけど仕方ない」


 い、いや。アレは、私がアリエンさんを子供だって言って怒らせたからのような……。

 芽々の罪悪感が募りに募っていく。


「ふ、フームス隊長!」


 悩んだ挙句、芽々は端を発した。フームス隊長はマイペースにタバコをふかしていたが、チラリとこちらを見た。


「私を王妃様の元に連れて行ってください!」

「えっ!?」


 アリエンが驚いて瞳を揺らしている。


「私が何とかしてくる!」


 芽々はついに腹をくくった。王妃様とは知らない仲じゃない。なんとか、許してもらえるように説得してくるのだ。


「俺も付いて行――」


 エルヴィンが続けようとしたとき、ドアチャイムの音がせわしなくなった。

 お客さんだ。

 確か、『CLOSE』の札をかけていたんだけど。


「赤ほっぺ病の特効薬をください!」

「私も!」

「俺も!」


 お客さんは必死だ。

 この様子だとエルヴィンじゃないと対処しきれないだろう。


「仕方ない。俺は店番だな。アリエンさんも手伝ってくれ」

「……資格を没収されたらここで雇ってもらおうかな。まじありえんけど」


 アリエンはらしくなく、弱気なことを言っている。


「ダメだよ! 私が何とかしてくるから待ってて!」


 フームス隊長たちと同じ馬車に乗車して、芽々はドロップ宮殿に向かったのだった。

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