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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第二部◆第一章】★*☆*★・・・・・・・★
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第五話 アリエンと真逆の調合レシピ3

 ネコ耳が生えて可愛さが増したアリエンを、芽々とエルヴィンは呆然自失で見守っていた。

 アリエンは穴が飽きそうなほど、姿見に映った自分の姿をガン見している。

 姿見には、青ざめている十三歳ぐらいのアリエンが映っている。

 芽々はハッとした。


「もしかして、エルヴィン、調合失敗したんじゃ!?」


 猿も木から落ちるっていう、アレなのか!?

 アリエンのネコ耳が芽々の声を敏感に聞き取って、ピクピクと動いている。


「えっ、でも、これは失敗作じゃないはずだけど……?」


 エルヴィンは暢気そうに言った。


「確かに、タールみたいに黒くないから、失敗作じゃないかもしれないけど……!」


 失敗作じゃなかったら、なんで……?


 アリエンがふらりと揺らめいた。


「な、なんか、気分が悪いぞ……? 眩暈が……!」


 倒れそうになっていたので、芽々がアリエンを支えた。


「エルヴィン! 失敗作じゃなくても、お医者様に見てもらわないとヤバいよ!」


 アリエンがハッとしたように顔を上げた。


「ドロップ宮殿の医者はマズイ!」

「な、なんで!?」

「いいから、街の診療所に連れて行け!」


 アリエンは必死で芽々に懇願した。アリエンがそう言うなら仕方ない。

 エルヴィンに視線を送ると、彼も神妙にうなずいた。


「じゃあ、診療所のガード先生に診てもらおう!」


 ドロップ宮殿の外に停まっているタクシー代わりの馬車に飛び乗って、街中にあるガード診療所に向かった。馬車に乗車している間も、アリエンは馬車の揺れのせいか具合が悪そうにしていた。


 診療所に着いたのは三十分後の事だ。小さいながらも清潔で明るい診療所だった。

 緊急ということで、すぐにガード先生は診てくれた。現在は検査の結果待ちだ。


 寝台の上でアリエンは仰向けになっていた。うつろな目は絶望しか見ていない。


「僕は、ずっとこのままなのか……? 芽々に子供だと馬鹿にされた挙句、エルヴィンの失敗作を飲まされて。僕のドロップ宮殿での魔法薬管理師の立場はどうなるんだ……?」


 アリエンの発言に芽々は大慌てになった。


「ね、ねえ、どうしよう、エルヴィン!」

「大丈夫だって。だって、これは失敗作じゃないから」


 エルヴィンの他人事のような暢気そうな発言に、アリエンは頭に来たのか勢いよく起き上がった。


「じゃあ、何で僕はこんなに気分が悪いんだ!? 頭にこんなものまで生えて!」


 あ、アリエンさん、復活した。


「か、可愛いけどな……!」

「っ!?」


 芽々が正直な感想を言うと、アリエンは頬を染めた。

 けど、すぐに気分が悪そうになって、ベッドに戻って行った。

 席を外していたガード先生がカルテを手に戻ってきた。


「分かりました。これは、材料に入っていた病原菌が原因ですね!」

「ハァ!? 材料に病原菌が入っていたの!?」


 材料に病原菌なんてまじありえん……!

 でも、エルヴィンが失敗したわけじゃなかったのか。


「ええ。これは、食べないと感染しませんがね。『ネコ耳感染症』ですね」

「『ネコ耳感染症』……。可愛い名前だな……」


 芽々が半眼でアリエンを振り返った。アリエンは何も言えないようだが。


「『ネコ耳感染症』はネコの耳が頭から生えてきて、気分が悪くなり眩暈がおきるっていう食中毒みたいな病ですね。この病は、特効薬がないと治りません」

「ええっ、特効薬がないと治らないの!?」

「まじありえん……!」


 絶望している芽々とアリエンの横で、エルヴィンがお気楽そうな笑みを浮かべた。


「『ネコ耳感染症』か。分かった。アリエンさんを俺のラボラトリーに連れて行って、魔法薬を調合して飲ませたらすぐに治るだろ」

「ええっ!? エルヴィンって『ネコ耳感染症』の魔法薬ってすぐに作れるの!?」

「っ!?」


「もちろん。他の国の病だけど、俺の研究ではできるようになった。それも不磨の森で簡単に手に入る材料で作れるからな」

「流石、エルヴィンだね!」


 芽々とエルヴィンはほのぼのと笑い合った。


 そのまま、アリエンを元気づけようと振り返るが、寝台の上にアリエンの姿は忽然となくなっていた。


 アレ? アリエンさんがいない?


「さ! エルヴィンのラボラトリーに行くぞっ! まじありえんけどなっ!」


 アリエンは、さっさと帰る準備をしてドアの前に立っていた。

 あ、意外と元気だった。

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