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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第六章】★*☆*★・・・・・・・★
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第十四話 特効薬が効かない!? 9 クルーエル大臣快復編

 クリストファー王子が続けた。


「芽々は役立たずではない。何故なら、芽々がクルーエル大臣に飲ませた特効薬は、エルヴィンが持参した特効薬を『飲んだ時にやっと完成する』からだ」


 エルヴィンは頷いた。


「そうです。材料が足りなかったから、私がドロップ宮殿の保管庫に寄って調合していたので、芽々より到着が遅れてしまったのです」


 エルヴィンが、クルーエル大臣の方に歩いてきた。手には魔法薬を持って。


「な、なんだと……!?」


 レベル大臣は狼狽しきっている。


「クルーエル大臣、これをお飲みください」


 エルヴィンは、魔法薬をクルーエルの口に流し込んだ。クルーエル大臣がそれを飲むと、みるみるうちに顔色が良くなっていく。


「私は治ったのか……!」


 クルーエル大臣は憑きものが落ちたような顔をして上体を起こした。クルーエル大臣は寝起きのような顔をしているが、普段通りに快復した。クルーエル大臣と目が合って、レベル大臣は総毛立っていた。


「さ、流石、エルヴィン君だ。見直した! クルーエル大臣もお元気になられて良かった! で、では、私は失礼いたします……!」


 レベル大臣は、尻尾を巻いて逃げ出した。部屋の中でお付きの者たちの歓声が上がった。


「流石は、エルヴィン様と芽々様です!」

「クルーエル様が回復されて本当に良かったわ!」


 お付きの人たちは口々に喜んでいる。

 けれど、クルーエル大臣には、どうして露出病の特効薬が効かなかったのか理解できなかったらしい。


「どうなっている? どうして、私には効かなかったのだ?」

「実は……」


 芽々は詳細をクルーエル大臣に教えた。クルーエル大臣も『毒消し』の効果が持続する薬を過去に飲んだことがあるのではないかということと、露出病の特効薬は毒の成分が主だということを。


「それで、クルーエル大臣の病歴リストをアリエンさんに見てもらって、毒消しの材料を使ってないか確かめたのです!」


 芽々の言葉をエルヴィンが引き継いだ。


「そうしたら、過去に『黄金蛇の鱗』を使った魔法薬をお飲みでした。これも、『毒消し』の作用が持続するものでした。だから、『毒消し中和剤B』を作ることになりました」


 芽々は、調合レシピをクルーエル大臣に見せた。


「『毒消し中和剤B』は『赤秘草のしぼり汁一カップ』と『青秘草のしぼり汁一カップ』に『ストスト菌』を入れて『発酵一時間』なのですが、『青秘草のしぼり汁一カップ』の材料がエルヴィンラボラトリーにはありませんでした! だから、材料を取りに行って調合をしているエルヴィンと後でおち合う約束をしてドロップ宮殿で別れたのです。そして、私だけが先にクルーエル大臣のお部屋に着いたというわけです!」


「そうか! 芽々もエルヴィンもご苦労であった! クルーエル大臣が快復してくれたので、レベル大臣に好きにされなくて済む!」


 クリストファー王子が芽々とエルヴィンの手を握手してきた。芽々もエルヴィンも恐縮してしまった。


「前々から疑問だったんですけど、どうしてクルーエル大臣なら大丈夫なんですか?」


 クルーエル大臣もレベル大臣も似たようなものだと芽々は思っていたのだが、クリストファー王子は違うようだ。


「十年前、クーデターが起きた。私たちを救ってくれたのが、他ならぬクルーエル大臣だ」

「ええっ!?」


 クルーエル大臣って、滅茶苦茶凄い人やないか!

 目を見張っている芽々を、クルーエル大臣は楽しそうに見ている。


「しかも、クルーエル大臣が国王となっても良いようなものなのだが。クルーエル大臣が私たちの味方をしてくれているので、未だ父上は国王の座にいることができるのだ」


「私は、国王様とクリストファー様の幸せを願っておりますので、これからもクリストファー様たちをお守りしてまいります」

「で、でも! クルーエル大臣は!」


 芽々がついにクルーエル大臣の悪事を暴露しようとした。

 だが、クリストファー王子が、フッと笑って続けた。


「芽々に私を葬るための毒薬を作れと脅した事か?」

「ええっ!? なんでクリストファー様がそれをご存じなんですか!?」


 ま、まさか、クリストファー王子とクルーエル大臣はグルなのか!?

 芽々はハッと我に返って、エルヴィンを振り返った。


「な、なんだ、それは……! 初耳だぞ……!」


 エルヴィンのこめかみがヒクヒクしている。ま、マズイ……!

エルヴィンが生まれる二十年前にリロイ国王とドロティア王妃がご結婚されました。


そして、その十年後にクーデターが起きました。その時に、クルーエル大臣が王家を救助しました。


クルーエル大臣が国王となってもいいはずなのに、クルーエル大臣は国王の座をリロイに譲りました。


権力はクルーエル大臣とリロイ国王で二分したとなってますが、立場上はクルーエル大臣の方に権力があって、王家はお飾りなのです。


国王一家とクルーエル大臣は仲が良いし、クルーエル大臣はリロイ国王を敬愛しているので、仲良く手を携えて国務を行っている形になっているという。そんなファーグランディア王国です。


でも、クルーエル大臣が病気にかかったり、亡くなりでもすれば、レベル大臣のような狡猾な人物に支配されてしまうというデメリットがあります。それほどに、クリストファー王子たちの権力はもろいのです。

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