第十一話 特効薬が効かない!? 6 エルヴィン快復編
芽々は、早速『毒消し中和剤』の魔法薬製作に取り掛かった。
赤秘草を細かく切ったものをすり鉢で擦ると、水分が出てくる。それをガーゼの上に乗せて、ビーカーの上で絞ると、『赤秘草のしぼり汁』ができる。
「アリエンさん、『赤秘草のしぼり汁を二カップ』作ったよ!」
これは、アリエンの指導のもとで行われているのだ。
「じゃあ、ここに『ストスト菌』を入れて」
ビーカーに入っている『赤秘草のしぼり汁』の中に『ストスト菌』を芽々は振りかけた。そして、ガラス棒でかき混ぜる。
「魔法機で『発酵』させる」
そして、魔法機の中に流し入れた。
「発酵させるのは何時間?」
「一時間だけど、魔法機に『発酵一時間のボタン』が付いているだろ?」
「うん、付いてるね!」
「それを押したら、一時間の発酵が一分でできる」
「すごっ!」
「まじありえんけどな!」
芽々は、早速魔法機のスイッチを入れた。すると、激しく振動し始めた。
一分経った頃、魔法機は伸縮してポンと音を立てた。
出来上がりの合図だ。
「せっかくだから、毒消しの中和剤Aもメモしておけば?」
「うん、そうだね!」
アリエン指導の元、芽々は魔法薬の調合レシピをメモした。
『『毒消し中和剤A』は『赤秘草のしぼり汁二カップ』に『ストスト菌』を入れて『発酵一時間』
★ ★ ★
芽々がラボラトリーから魔法薬のビンを持って出て行くと、フームス隊長の部下の二人が待ち構えていた。
「芽々さん! そのビンってもしかして!?」
「魔法薬は完成されたのですか!?」
芽々は首肯して、魔法薬のビンを掲げた。
「一気に飲ませれるように、『露出病の特効薬』と『毒消し中和剤A』を混ぜてみました~っ!」
「おお~!」
部下その二とその三は拍手喝采した。
気を良くした芽々は、そのままエルヴィンの部屋に乗り込んで行った。
「芽々さん!? もしかして、魔法薬ができたのですか!?」
「部下その一さんも、看病お疲れ様です~!」
エルヴィンは、高熱を出して汗をかいているようだ。暑そうに寝返りを打っている。
芽々は早速、エルヴィンの枕元にしゃがんだ。魔法薬のビンのフタを開けて、エルヴィンに差し出した。
「エルヴィン、魔法薬ができたよ~!」
エルヴィンはぼんやりとまぶたを開いた。
「口移しで飲ませてくれるのかい……? マイスイートハニー……!」
「完全にキャラが変わっとるがな」
芽々の頬に自然と安堵の笑みが浮かぶ。
「でも、意外と元気そうで安心したよ。脳みそまでやられてないのかすっごく心配だけどな」
エルヴィンの横に落ちている絞ったタオルで、芽々はエルヴィンの頬の汗を拭いた。
「芽々……」
「どうしたエルヴィン? 魔法薬を飲ませようか?」
エルヴィンは荒い呼吸をしている。高熱が出ているのだろうか。
「芽々……! 芽々が早く欲しい……!」
エルヴィンが、シャツをバッと開いた。
「良いから早く飲め!」
エロい発言にげんなりした芽々は、エルヴィンの口に魔法薬のビンを突っ込んで問答無用で飲ませた。
「うっ……? あれ? 俺……?」
エルヴィンは、高熱を出した後のように気怠そうだ。
でも、呼吸も安定して目には光が宿っている。
「芽々がなんで俺の部屋にいるんだ……?」
「やっと正気に戻ったか!」
どうやら、エルヴィンの脳みそも大丈夫だったらしい。
「あのね……!」
今までの事を説明すると、エルヴィンは安堵したらしかった。
「芽々がいてくれてよかった。でないと、俺の人生はとんでもない事になるところだったな……!」
「エルヴィン……! 本当にエルヴィンが元気になって安心したよ~!」
芽々とエルヴィンは、ほのぼのとして快復を喜び合ったのだった。