第十話 特効薬が効かない!? 5 回答編その3
ラボラトリーの中を物珍しそうに見ながら、アリエンは芽々の後ろを付いてきた。
アリエンの目が、テーブルの上に置かれてあるファイルを見つけた。
「これは?」
「クルーエル大臣とフームス隊長の病歴のリストだよ。もしかしたら、アリエンさんなら、共通点が分かるかもって!」
「ふむ」
真面目な顔をして、アリエンは病歴のリストを捲っている。アリエンは、指でリストをなぞりながら注視していたようだが、落胆したようにため息を吐いた。
「やっぱり、これだけじゃよく分からん……! まじありえん……!」
病歴のリストは芽々の手のひらの中に戻ってきた。
アリエンさんでもダメなのか~。
芽々は、気落ちしながら自分でも確認する。
げげっ!? 病気を発症した数が半端ない!?
芽々は、病歴リストを見てぶったまげた。
クルーエル大臣やフームス隊長の病歴は、それぞれ百にも及ぶぐらい並んでいたからだ。
ぜ、全然、不死身じゃない……!
確かに、王都ファンティアは病気が蔓延しているから仕方ないかもしれないけど。
というか、この場合の不死身って、病気にはかかるけど死なないってことなのか……?
なんだ、それ……?
「あれっ? フームス隊長のこの病気……」
しかし、フームス隊長のある病気に芽々の目が留まった。
「どうしたんだ?」
アリエンが、不思議がって手元を覗き込んできたので、病歴のリストのファイルを渡した。
そして、指で示す。
「ほら、ここ見て!」
「『瘴気中毒症候群』……? あの、難病の……?」
アリエンが訊き返してきたので、芽々は頷いた。
「『瘴気中毒症候群』にフームス隊長もかかったことがあるって書かれてあるの。エルヴィンと同じだったから……」
この病は、不磨の森の瘴気を吸い込みすぎるとなる難病だ。特効薬さえ手に入れれば容易く治るのだが、材料が高価すぎてなかなか手に入らない。
「生きていたってことは、二人は助かったんだろ?」
「うん、エルヴィンはね。おそらく、フームス隊長もドロップ宮殿に関わる仕事をしていたから、特効薬が手に入って助かったのだと思うけど……」
芽々はついでにクルーエル大臣の病歴リストを見た。
クルーエル大臣はこの病にはかかってないらしいが――。
「ちなみに、その『瘴気中毒症候群』の特効薬の作り方は?」
芽々は上を向いて「んーと」と、唸った。
「確か、『瘴気中毒症候群』の材料は、『鳳凰の巣一〇〇グラ』と『金蝶と銀蝶の鱗粉五〇グラずつ』だったよ! すごく、高価な材料だって、クルーエル大臣が言っていたよ」
合点がいったように、アリエンの目が生き生きした。
「ふむふむ。『鳳凰の巣』と『金蝶と銀蝶の鱗粉』ね! 確か、『金蝶と銀蝶の鱗粉』は『毒消し』に使われる材料だな」
「毒消し……」
アリエンは頷いた。
「それで、それを使った魔法薬は『身体に残りやすい』って本に書いてあった」
「な、なんだって~!? 薬が体に残りやすい~!? ま、まじで……!?」
確か、頭痛薬も体に残りやすいって聞いたことがある。
「じゃあ、三人に毒が効かないのって、まだ『毒消しの効果が持続している』からってこと!?」
「そういうことになるよな! まじありえんけど! ……じゃあ、『毒消し中和剤』を作ろう!」
アリエンが、サラッと中和剤の事を口にしたので、芽々の胸は期待に膨らんだ。
「もしかして、アリエンさんって『毒消し中和剤』の作り方わかっちゃったりする!?」
「勿論!」
「流石、アリエンさん! まじ尊敬!」
芽々がアリエンを尊敬のまなざしで見つめると、アリエンの頬がほんのり赤くなった。
アレ? もしかして、褒められて照れてる……? あのアリエンさんが……?
いやいや、まじありえんだろ。気のせいだろ。
気を取り直した芽々は、材料を取りにラボラトリーの中を往復するのだった。




