表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第六章】★*☆*★・・・・・・・★
72/102

第六話 特効薬が効かない!?

 そうして、芽々はアリエンと別れると、クルーエル大臣の部屋に入って行った。


「クルーエル大臣、失礼します」

「芽々さんか……」


 クルーエル大臣の熱っぽい声が迎えてくれた。

 ん? 熱っぽい声……?


「クルーエル大臣?」


 芽々が近寄っていくと、クルーエル大臣の後姿があった。衣擦れの音がしたかと思うと、何故かクルーエル大臣はネクタイを外していた。


「え゛?」


 嫌な予感が襲ってきた。

 な、なんで、クルーエル大臣はネクタイを外しているの!?

 芽々は、その場で硬直した。


 クルーエル大臣は、そのままスーツを脱ぎ落としてシャツの胸を肌蹴た。

 そうして、クルーエル大臣は芽々を振り返って髪を掻き上げた。クルーエル大臣の氷のような瞳が融けそうに熱い。


「芽々さん、良く来てくれたね……」


 烏羽玉先生の言葉が急に脳裏に蘇った。


『芽々さんも十八禁にならないように気を付けてくださいね?』


 ヤバい襲われる……!

 芽々は後ずさりして逃げようと思った。

 脱ぎ落したスーツを革靴で跨いで、こちらに来ようとしている。

 クルーエル大臣の息遣いが妙に熱っぽい。


 うん、逃げよう! って、あれ……?

 でも、私が流感で倒れる前の浮いた言葉遣いに似ているような?

 それに気づいた途端彼に違和感を覚えた。クルーエル大臣の額から大量に汗が流れ落ちていたからだ。

 芽々が困惑しているそのうちに、クルーエル大臣は芽々の前まで来ていた。


「芽々さん……」


 これってもしかして――。芽々の動揺と心拍数が一層増した。


「今日は……暑い……!」


 これってもしかして、――露出病!?

 そうして、クルーエル大臣は芽々に体重を預けたまま、倒れてしまった。

 た……! 大変だ……!


「だ、誰か! クルーエル大臣が!」


 大声を張り上げると、お付きの者たちが飛んできた。

 すぐに、クルーエル大臣はベッドに運ばれた。芽々は衝撃の現場を目撃してしまったせいか、その場から動けなかった。


 クルーエル大臣は、全然不死身じゃないじゃないか!


 けれど、おかしなことに気がついてしまった。

 露出病の特効薬はすでに国民全員に配られていて、クルーエル大臣も飲んでいるはずだ。

 何故、クルーエル大臣は露出病にかかった?


「あの! クルーエル大臣は、露出病の特効薬はお飲みになったんですか!?」


 芽々は、お付きの一人に確認した。お付きの者は、力強く頷いた。


「はい、勿論です! すぐに、クルーエル様は特効薬をお飲みになりました。でも……」


 な、なんか、歯切れが悪いな?

 芽々は、不審に思って首を傾げた。


「でもって……?」

「自分にはこの薬は効かないだろうと仰っていました」


 ええっ!? 薬が効かない!?


「ど、どういうことですか!? 薬が効かないって!?」

「わ、分かりません……! でも、クルーエル様は特効薬を確実にお飲みになったし、そう仰っていたことも事実です!」


 それで、自分が飲んでも良い特効薬を私に飲ませたのか……!

 古いからでもなく、すり替えられたのでもないとしたら、なぜ効かないんだろう?


 クルーエル大臣のベッドに近付いたが、今のクルーエル大臣は何も話せないらしく、高熱にうなされていて無理だった。


「露出病の特効薬が効かないだと!?」


 主治医の大声が聞こえてきた。

 主治医は特効薬を飲ませたらしい。だが、お付きの人の言葉を裏付けるように、特効薬が何故か効かないらしかった。芽々は現場を目の当たりにして狼狽えた。


 もっと早く――。

 発症する前にもっと早く、私に言ってくれればよかったのに――!


「芽々様! どうか、クルーエル様をお救いください!」

「お願いします!」「どうか、どうか!」「お願いいたします!」


 芽々はお付きの人全員に懇願されて、引き受けないと帰れない雰囲気になった。


「わ、分かりました。エルヴィンに協力してもらいます……!」


 その時、クルーエル大臣の部屋にクリストファー王子が飛び込んできた。


「クルーエル大臣が倒れたというのは本当なのか!?」

「は、はい、左様でございます!」


 お付きの者が慌てて答えている。

 情報が早いな!


「芽々! クルーエル大臣を必ず治してくれ!」

「えっ……?」

「でないと、私はレベル大臣に権力を奪われてしまう! 必ず、治してくれ! 頼む!」


 芽々はクリストファー王子に手を取られてとんでもない迫力で言い募られた。


「は、はい! わ、分かりました!」


 右向け右の迫力で、ついに魔法薬を作ると約束してしまった。メロメロティの果実の手土産まで持たされて、芽々は王女様のようにお付きの人たちに見送られた。


「はぁ……!」


 特効薬が効かないのに、私に何ができるって言うんだ?

 でも、天才調合師のエルヴィンならなんとかしてくれるかもしれない……!

 馬車の御者に頼んで、芽々はエルヴィンラボラトリーへの帰路を急いだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ