第十三話 クリストファー王子の目覚め
その日、王都ファンティアの茨姫病は沈静化した。芽々はネコのぬいぐるみを手にドロップ宮殿を訪れていた。まず向かったのが、クリストファー王子の部屋だった。
すでに、茨は取り除かれていた。
「芽々様、こちらにどうぞ!」
「あ、はい」
芽々は、緊張しながらクリストファー王子の天蓋付きのベッドの方に回り込んだ。
「芽々様、クリストファー王子を熱いキスで起こしてください!」
お付きの者たちは、やけに熱心だった。
「いや、この猫のぬいぐるみでチュッとしたら起きますので……」
芽々が苦笑しながら言うと、お付きの者たちは「ええっ」と、残念そうな声を出した。
な、なんだ? 何を私に期待しているんだ?
芽々は不可解に思いながらも、クリストファー王子のベッドのカーテンを開けた。
クリストファー王子はベッドに横たわっていた。
芽々は、クリストファー王子に、ネコのぬいぐるみでチュッとした。
「う……!」
すると、クリストファー王子の閉じたまぶたが震えた。クリストファー王子は、今まさに目覚めようとしている。
やった、成功だ!
芽々が、その旨を伝えようと身を起こそうとした。すると、後ろからドンと押された。
「どぅわ!?」
芽々は、反動でクリストファー王子の胸の中に飛び込んで行ってしまった。
「あら、手が滑ってしまいましたわ~。芽々様、すみません~」
お付きの者たちの仕業だ。どうやら、芽々とクリストファー王子をくっつけようとしているらしい。
芽々は焦って、身を起こそうとした。しかし、クリストファー王子が目をパッチリ開けた。
「芽々……!? どうして芽々が私のベッドに……!?」
「いや、何でもないんですよ! ネコのぬいぐるみでチュッとして、茨姫病から救っただけですので!」
芽々は、大慌てでクリストファー王子から離れた。
「そうか、芽々、ありがとう」
「いえ! もったいないお言葉です!」
まだ横になっているクリストファー王子は、こちらに顔を向けて本当に嬉しそうに微笑んだ。
「で、では、私は、これで失礼いたします。お大事に!」
芽々は、お付きの者たちがニヤニヤしている中を引きつりながら退室した。
「ふう! ビックリした~!」
冷や汗を拭い去って、次にクルーエル大臣の部屋に向かうのだった。




