第十一話 目覚めのキスを回避せよ! 2
一時間後、全ての材料を使った魔法薬ができた。ノーア社長とフームス隊長は早々と取りに来ていた。
「邪魔するぞ!」
「こんにちは! 芽々さん!」
「フームス隊長! ノーア社長! いらっしゃいませ~!」
「例の成功率一パーセントの魔法薬ができたそうだな」
「流石は芽々さんだ!」
ノーア社長は芽々の手を握手してブンブンと振った。
「い、いえ、エルヴィンが、成功率百パーセントまで上げて作ってくれました~……!」
「エルヴィン君がか!」
ノーア社長はラボラトリーでタンクに魔法薬を詰めているエルヴィンに駆け寄って握手を迫っていた。芽々は苦笑しながらそれを見て、フームス隊長に向き直った。
「奥に、魔法薬の入ったタンクがありますので、百倍に希釈して使ってください」
「おい、お前たち運んでくれ!」
「はっ!」
フームス隊長はすぐに部下に指示して、外の荷馬車に魔法薬の入ったタンクを運び込んでいた。
「……それで、これが成功率百パーセントのエルヴィン作の調合レシピです! エルヴィンによると、各ラボラトリーに配って活用してくださいとのことです!」
「流石は、天才調合師だな!」
「そうなんです、エルヴィンはすごい師匠なんです!」
「お蔭で、芽々に治療してもらうこともなくなったわけだ……」
「ん? 何か言いました?」
「いや……?」
フームス隊長は呟いたようだが、芽々は聞き取れなかったのだ。
「芽々さんエルヴィン君、ありがとう!」
「いえ、お気をつけて!」
「では、また!」
ノーア社長の部下がタンクを馬車に積み込んだようなので、ノーア社長も帰って行った。
フームス隊長の後ろで部下が一列に並んで敬礼した。
「フームス隊長、荷馬車に運び終わりました!」
「よし! すぐに茨姫病沈静化の任務にあたれ!」
「はっ!」
すぐさま、ガーディアンたちは外に飛び出して行った。
ガーディアンたちの荷馬車と馬が走り去る音がした。
「それから、芽々は、一緒にドロップ宮殿に行ってもらおうか」
「どうしてですか?」
どうして、ドロップ宮殿に行かねばならんのか。芽々はさっぱり分からなかった。
フームス隊長はため息を吐いた。
「クリストファー様とクルーエル大臣が芽々に治療してもらいたいそうだ」
「は、ハァ!?」