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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第五章】★*☆*★・・・・・・・★
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第五話 成功率一パーセントにかけろ!? 2

「ありがとうございましたー!」


 走り出した荷馬車に芽々はお辞儀した。

 フームス隊長率いるガーディアンができあがった『モンスター植物駆除の魔法薬A』の魔法薬を取りに来たのだ。荷馬車にタンクを積みこんだ後、ガーディアンは引き上げて行ったというわけだ。


「あ、雨が降り出した……!」


 雨脚が激しくなってきたので、芽々は店の中に駆け込んだ。ドアチャイムの音が雨音に混じって鳴った。


「ふぅ。ひと段落だな」


 大仕事を終えて、エルヴィンは椅子にぐて~っと体重を預けている。

 芽々はエルヴィンが作った栄養剤のドリンクを手渡した。


「お疲れ様だね!」

「サンキュ!」


 エルヴィンは、嬉しそうにそれを飲み始めた。

 芽々もそれのフタを開けて、飲もうとした。

 ふと見たレジ台に、紙切れが二枚置かれてあった。その横には、ノーア社長が置いて行った調合レシピが二枚ある。芽々はレジ台の方に回り込んで、それを覗き込んだ。


「フームス隊長、成功率一パーセントの調合レシピ忘れて行っているよ?」


 栄養剤のビンをそれ用のゴミ箱に捨てる音がした。顔を上げると、エルヴィンが歩いて来ていた。


「せっかくだから、作ってみるか?」

「おお~! 成功率一パーセントの『茨姫病の特効薬レシピ』に挑戦だ!」


 芽々とエルヴィンはその調合レシピ四枚を手に、ラボラトリーの方に移動した。

 すでに、材料はラボラトリーの方に運び込まれてある。


『『茨姫病の特効薬の調合レシピC』材料『パサパサ草の根五〇〇グラ』と『カサカサ草の実五粒』で『成功率一パーセント』……』


 エルヴィンが、しっかりと量りの目盛を見ている。パサパサ草の根っこの部分なので、切ったり足したりしながら重さを調節している。


「パサパサ草の根……五〇〇グラ……」

「カサカサ草の葉五枚だね!」


 芽々は、出来るだけ綺麗なカサカサ層の葉を五枚選んだ。


「これを、魔法機にかける……っと!」


 エルヴィンが手形に手を置いた。

 魔法機が伸縮を繰り返してポンと音を立てた。


「できた!?」


 できあがった音は、成功した時と変わらないけど――。

 ドキドキしながら、ビンに流し込む。

 すると、真っ黒なドロドロの液体が出てきた。何だこれ!?


「ああ、これは失敗だな。失敗作は真っ黒なヘドロみたいになってるからな」

「そうなんだ……これが失敗作か……」


 そう言えば、失敗作は見たことがなかった。エルヴィンは天才調合師だから滅多に失敗しないし、芽々も今のところツイていたからかもしれないが。


 芽々もエルヴィンも一通り試してみたが、どれも失敗だった。


「うう~ん、うまく行かないなぁ。エルヴィンでも、ダメだからな~。成功率一パーセントを成功率百パーセントにあげる方法ってないのかな~」

「……芽々ならうまく行くんじゃないか?」

「持ち上げたってなにも出ないよ!」


 芽々は空笑いして、飲みかけの栄養剤のドリンクを傾けた。


「いや、俺の病気を治してくれた調合レシピ。あれは成功率二パーセントだったからな!」


 芽々は、思わずむせそうになった。


「えっ!? そ、そうなの!?」


 今明かされる真実……! あの状況って綱渡りだったんだな……そう思うと怖いな!


 その時、店の方からドアチャイムの音が聞こえた。雨で湿気た空気と土のにおいがふわっと香った。


「邪魔するぞ!」


 芽々は、店の方では聞き慣れないが、良く知っている声に驚いて店の方に走って行った。

 びしょ濡れの外套を着た一人の身なりの良い男が立っていた。

 彼は、フードを下げて髪を掻き上げた。

 やっぱり……! それは、クルーエル大臣だった。


「どうされたんですか、クルーエル大臣……! アレ? 今日は、お一人ですか?」

「今日は、芽々さんに用があってこっそりと馬で来た」

「ハッ、芽々にね!」


 笑顔で親しげに話しているせいか、エルヴィンは吐き捨てるように言って、ラボラトリーの奥に消えた。

 な、なんだ?

 芽々が、エルヴィンの方を気にしていると、クルーエル大臣が深刻そうな顔になった。

 えっ……? なんか嫌な予感!


「実は、クリストファー王子が茨姫病でお倒れになった」

「は、ハァ!?」


 ま、まじで!? 烏羽玉先生、何やっちゃってくれてんの!?


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