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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第五章】★*☆*★・・・・・・・★
55/102

第四話 成功率一パーセントにかけろ!?

 芽々は改めて『茨姫病の特効薬の調合レシピのAとB』に目を通した。


『『茨姫病の特効薬の調合レシピA』材料『パサパサ草の根五〇〇グラ』と『パサパサ草の葉五枚』で『成功率一パーセント』……』


 『茨姫病の特効薬の調合レシピA』は確かに成功率一パーセントだ。その下の行に目をやる。


『『茨姫病の特効薬の調合レシピB』材料『カサカサ草の根五〇〇グラ』と『カサカサ草の実五粒』で『成功率一パーセント』……』


 『茨姫病の特効薬の調合レシピB』も成功率一パーセントだ。

 調合レシピを見ていると、芽々の口から疲れ切ったため息が出てきた。


「……できっこないよ、こんなの!」


 エルヴィンが何かを言いかけた時、ドアチャイムの音がして誰かが入ってきた。

 芽々は、気を取り直して振り返った。


「いらっしゃいませ~! って、フームス隊長!?」


 ガーディアンのフームス隊長とその部下三人がぞろぞろと入ってきた。ガーディアンとは、私の世界で言うところの警察みたいな組織だ。


 なんか、嫌な予感! 私は、何もしてないはずだけど……!

 フームス隊長はギロリと私たちを見回した。

 今日のフームス隊長は、機嫌が悪そうだ。そういえば、今日のフームス隊長はタバコを吸っていない。だから、機嫌が悪いのか……?


「おい、芽々! それにエルヴィン!」


 芽々はフームス隊長の大声にビクッと飛び上がった。


「な、なんですか!?」

「俺はついでか!」


 ついで扱いされて、エルヴィンは怒っている。

 フームス隊長は、芽々とエルヴィンをビシッと指差した。


「命令だ! 今すぐに、この『茨姫病の特効薬の調合レシピC』と『茨姫病の特効薬の調合レシピD』を作れ。レシピはここに用意してある!」


 二枚の調合レシピをフームス隊長は、レジ台に叩きつけるように置いた。

 ちょ、ちょっと! 私はフームス隊長の部下じゃないんだけど……!

 でも、これって、デジャビュ!?


「ま、まさか……」


 嫌な予感がしながら、芽々はエルヴィンと一緒にその調合レシピを覗き込んだ。


『『茨姫病の特効薬の調合レシピC』材料『パサパサ草の根五〇〇グラ』と『カサカサ草の実五粒』で『成功率一パーセント』……』

『『茨姫病の特効薬の調合レシピD』材料『カサカサ草の根五〇〇グラ』と『パサパサ草の葉五枚』で『成功率一パーセント』……』


 やっぱり! 『茨姫病の特効薬の調合レシピC』も『茨姫病の特効薬の調合レシピD』も成功率一パーセントじゃないか!


「成功率一パーセントのレシピなんて無理ですので!」

「フームス隊長、お引き取りください!」


 芽々もエルヴィンも、キッパリとシッカリ断った。

 フームス隊長は、諦めたように嘆息した。どうやら、強い口調だと引き受けるだろうと思ったらしい。あてが外れたのか、フームス隊長は一気にトーンダウンした。


「……やはり無理か。王都ファンティアは大混乱している。普通の『モンスター駆除の魔法薬』では、すぐに復活してしまうが……仕方ないだろう……。よし! 今すぐに、この『モンスター植物駆除の魔法薬A』をタンクに一〇〇〇個作れ! 材料は揃えてある!」


 フームス隊長は、新しい調合レシピをレジ台にバシッと置いた。芽々とエルヴィンは再びそれを覗き込む。


『『モンスター植物駆除の魔法薬A』材料『ナエナエ草五〇〇グラ』と『クタクタ草五〇〇グラ』に『水一〇〇〇リト』で『成功率百パーセント』……』


 よし! 『モンスター植物駆除の魔法薬A』は成功率百パーセントだ!

 芽々は、しっかり確認して頷いた。


「これなら良いよね! エルヴィン!」

「分かった、すぐに作ろう!」


 エルヴィンは、フームス隊長の部下から材料の入った袋を受け取って、ラボラトリーに移動した。そして、早速、魔法薬を作り始めた。

 ラボラトリーにいるエルヴィンの後ろ姿を、フームス隊長は一瞥した。そして、芽々に視線を向けた。


「芽々!」


 エルヴィンに駆け寄ろうとしたら、フームス隊長に声をかけられたので、芽々は立ち止まって振り返った。


「な、何ですか……?」


 フームス隊長に、じ~っと見つめられた。

 な、何だ!?

 更に、じ~っと見つめられた。

 ほ、ホントに何なんだ!?

 芽々は、蛇に睨まれた蛙のように固まった。


「私が茨姫病にかかったら、是非とも治療を芽々にお願いしたいものだ」

「は、はぁ?」


 治療を私にってどういうこと……?

 怪訝な目をフームス隊長に向けると、彼はすっと目をそらした。


「また、一時間後に取りに来る! おい、行くぞ!」

「は、はっ!」


 何故か、一部始終を見ていたフームス隊長の部下は、ニヤニヤを押えたような顔をしてこちらをチラリと見た。芽々が怪訝な顔を斜めに傾けて視線を注ぐと、部下はペコペコとお辞儀して出て行った。

 本当に、何なんだ……?


 ドアチャイムの音が鳴り終わった後も、芽々の嫌な予感は消えなかった。

 もしかして、治療って魔法薬を茨に散布するだけじゃないのか?


「な、なんだ? 私に治療をって……?」


 すると、目の前に上半身のホログラムが現れた。


『教えて差し上げましょうか~!』

「烏羽玉先生! 元気だった!?」


 芽々は、久しぶりに烏羽玉先生に会ったので喜んだ。


『お久しぶりですね、芽々さん! 私は忙しいけど元気ですよ~!』

「創造主の烏羽玉先生がいたら百人力だよね! 丁度良かった、『茨姫病』の特効薬をどうやって作ったらいいのか悩んでいたの!」


 烏羽玉先生は、にこにことして頷いた。


『実は、その『茨姫病』っていう伝染病は、私が考え出したのですよ~! グリム童話の茨姫をモチーフにして!』

「……は、はぁ!? 烏羽玉先生が茨姫病を考え出した!? あの謎の女じゃなくて!?」

『芽々さんが、イケメンとの恋愛がしたいと仰っていたので、治し方にもこだわったんですよ!』


 烏羽玉先生は、いきいきとして話している。

 あの夜の地団太は、しっかりと見られていたようだ。


「そ、それで、治し方って……?」


 芽々は気を取り直して訊いた。烏羽玉先生は頷いた。


『茨を特効薬で消した後、感染者に『キス』すれば、たちどころに良くなります! どうです? 恋愛のきっかけができるし、ロマンチックでしょ~?』

「は、ハァ!? キスぅ!?」


 それで、あの部下たちはニヤニヤしていたのか……!

 烏羽玉先生はにこにこして、芽々の周りを犬のようにまわっている。


「う……」

「うってなんです?」


 烏羽玉先生が芽々の顔を覗き込んだ。


「烏羽玉、いい加減にしろッッッ!」

「わわっ!」


 芽々の大声に吃驚したのか烏羽玉先生は、パッとホログラムを消した。


「クッ、逃げられた……!」


 芽々は久しぶりに神様に祈った。

 どうか、知り合いが茨姫病になりませんように~……!

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