第十二話 お祝いと心配事
その日、エルヴィンラボラトリーでは、釈放されたブランダ先生と一緒に祝勝会が行われていた。エルヴィンとブランダ先生は発泡酒で乾杯している。
「エルヴィン、ありがとう!」
「芽々のお蔭なんだ」
ブランダ先生は、エルヴィンとグラスをカチンと鳴らした。
「芽々ちゃんも、ありがとう!」
芽々は嬉しくなって、ブランダ先生と柑橘系のジュースとグラスをカチンとさせた。
「ブランダ先生、アベリルを褒めてあげてください! 必死だったんですから!」
「芽々おねえちゃん……!」
アベリルがあたふたしている。
「アベリルもありがとうね!」
ブランダ先生は、アベリルの柑橘系のジュースのグラスともカチンと鳴らした。
「はい……! お師匠様が釈放されて本当に良かったです……!」
アベリルは、独り感動して、声を詰まらせていた。
いやぁ、良かった良かった! 一件落着だね!
「さあ、みんな食べようぜ!」
「うお~、おいしそう……!」
テーブルに並べられた料理を見て、芽々の喉が鳴る。
今日は、エルヴィンがごちそうを作ってくれたんだ。鶏肉のソテーに、香草のサラダにとろける野菜のスープ。それに、トマトマの果実のパスタにそれからそれから――。
キラキラ光るごちそうに目移りしながら、フォークをどれに刺そうか迷っていたとき、エルヴィンは席を立とうとした。
エルヴィンは、ふわりと飛び出しそうになってよろめいた。
「おっと……!」
「エルヴィン、大丈夫~?」
グラグラした声で言ったブランダ先生はすでにへべれけだ。
って酔うの早ッッッ!?
「って、まだ一滴も呑んでないじゃな~い」
ブランダ先生は、エルヴィンのグラスを覗き込んで言った。
えっ!? 一滴も発泡酒を飲んでないのに……!?
「エルヴィン、体調悪いの!?」
「あ、ああ、徹夜したからかな……」
ま、まさか、クルーエル大臣が本当にエルヴィンに毒を……!?
でも、クルーエル大臣はそんなに悪い人に見えなかった。クリストファー王子もあんなに信頼を寄せておられたし……。
「あ、治ったよ。心配かけたな!」
料理をキッチンからまた持って来て、エルヴィンは発泡酒を飲みだした。
か、考えすぎかな……? でも、本当だったら……。
ああ、もうっ! クルーエル大臣には振り回されっぱなしだ……!
芽々は、終始エルヴィンの事を気に懸けながら、味気なくなったごちそうをやけ食いするのだった。
◆◇◆◇◆ 第四章完結! 第五章に続きます! ◆◇◆◇◆