第七話 調合師たちの危機2
ドロップ宮殿の庭を歩いていると、向こうから煙のにおいが漂ってきた。
もしかして、これは……!
芽々は、煙の方へ走って行った。すると、部下たちに囲まれてタバコをふかしている一人の男がいた。
「やっぱり、ガーディアンのフームス隊長!」
ブランダ先生の事でドロップ宮殿に捜査に来ていたらしい。
駆け寄って行った芽々だったが、フームス隊長はマイペースでタバコをふかし続けている。まるで相手にされてない。
「なんだ。芽々か」
と思ったら、私の名前を覚えていてくれた!?
い、いや、それよりもだ!
「ブランダ先生が捕まったって本当ですか!」
芽々が尋ねると、フームス隊長は人払いをした。部下たちが一礼して去っていく。
「ブランダは三日後に処刑だ」
「そ、そんな!? ブランダ先生は何もしてないと思うんです!」
「何もなかったら、王妃様は倒れたりしないだろうが」
こないだは、ブランダ先生に頼り切っていたくせに!
芽々は文句を呑みこんだ。
「魔法薬は調べたんですか! ブランダ先生は、毒を盛るような人でもないし、そんなミスをするはずがありません!」
クッと、フームス隊長が笑った。
「ほう? では、以前のように、お前が解決してみせるんだな?」
くっそ~、そう来たか!
「わ、分かりました! じゃあ、時間をください!」
「時間? どれぐらいあれば事足りる?」
「え、えーと、三週間……」
「二週間だ。二週間で何とかしてみせろ」
とにかく、時間稼ぎだ。すぐにブランダ先生が処刑されるよりはマシだ。
「わ、分かりました! できなかったら……」
「刑が執行されるだけだ。分かったな?」
話は終わりだと言わんばかりに、フームス隊長はどこかに歩いて行ってしまった。
とにかく、元凶を何とかしなくてはならない。おそらく、クルーエル大臣のせいだろう。芽々はそう決めつけていた。だから、すぐにクルーエル大臣の部屋に向かったのだ。
お付きの人と顔見知りだったせいか、芽々はすぐにクルーエル大臣の部屋に通された。クルーエル大臣は、椅子に座って資料を読んでいた。何やら忙しそうだ。
「クルーエル大臣!」
芽々に気づいたクルーエル大臣がどことなく嬉しそうに顔を上げた。
「芽々さんか。疫病の特効薬は作れたのかな?」
「どういうことですか! 私だけじゃなく、ブランダ先生まで陥れる気ですか!」
「なんのことだろうか……?」
クルーエル大臣は迫真の演技だった。まるで、本当に知らないような。
くっそ~、どこまでとぼける気なんだ!
「私、絶対に、クルーエル大臣には負けませんから! 必ず、王妃様とブランダ先生を助けて見せ――」
その時、クルーエル大臣が天井を見て目を閉じた。そして、そのまま、椅子から転がり落ちた。
えっ!? 何が起きたの!?
「く、クルーエル大臣!?」
芽々の声に驚いたお付きの者たちが駆け寄ってきた。
「クルーエル様!」
「医者を呼べ!」
辺りは騒然となった。クルーエル大臣は苦しそうにして、倒れたまま動かない。そして、首には発疹ができていた。
もしかして、これってあの疫病……!?
嘘でしょ!? クルーエル大臣が黒幕じゃないの!?