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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第四章】★*☆*★・・・・・・・★
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第二話 謎の疫病……!?

 それから、二週間が経過した。オーロラは相変わらず空で輝き続けている。王都ファンティアでは、この事を大々的に新聞で発表した。このオーロラ見たさに遠方から続々と観光客がやってきていた。


 今日も、王都ファンティアは観光客でごった返して賑やかな一日になるのだろう。そんな事を想いながら、芽々は新聞を取りに店の玄関から顔を出した。しかし、今日に限っては異変が起きていた。


「な、何なのコレ!?」


 芽々は自分の目を疑った。エルヴィンラボラトリーの前には、また行列ができていたのだ。しかし、こないだよりもすごい行列だ。向こうの曲がり角のそのまた向こうまで続いているようだった。


 こないだのクリストファー王子の宣伝効果も落ち着いてきていたけど。もしかして、遠方から評判を聞きつけたとか……?


「ああ、先生! うちの娘が病で倒れてしまって……! 魔法薬をください!」

「先生! 熱が出て苦しいんじゃ! 薬をおくれ……」


 ちょっと待って!? クリストファー王子の宣伝効果じゃないような……!?


「これって全部病人ですか!?」

「ああ、うちの近所は全員この疫病にふせっている!」

「うちの近所も全滅だ!」


 ええ~っ!? どうなってんの!?


「しょ、少々お待ちください!」


 芽々は、すぐにラボラトリーに続く店から中に駆け込んだ。


「ふあぁ……!」


 丁度、エルヴィンが起きてきたところだった。


「エルヴィ……っとぉ!? ちょ、ちょっと……!」


 エルヴィンを呼ぶ前に、外の行列が中になだれ込んできた。


「な、なんだ!?」


 エルヴィンも目を丸くしている。


「なんかね、みんな病気なんだって……! エルヴィン、何とかして~!」


 芽々は病人に圧倒されていたが、とにかく自分もうつらないようにマスクをかけた。エルヴィンもすぐにマスクをかけて、異世界風の白衣を着ていた。


「先生、しんどいんです。この病の薬をください!」


 エルヴィンは促して、椅子にお客さんの一人を腰かけさせた。芽々も椅子を用意してお客さんに配った。でも、十脚では足りるわけないのだけど……。


「病気の名前は分かりますか?」


 エルヴィンが、患者の一人に尋ねた。


「多分、流感だと思うんですが……」

「流感? 今、この時期にですか?」


 流感とはインフルエンザの事だ。

 エルヴィンは怪訝そうな表情だ。芽々は病人の特徴を掴んで、エルヴィンに駆け寄った。


「エルヴィン、私も違うような気が……だって、この人たち、発疹ができているし……麻疹はしかかな」

「麻疹? 雪花麻疹(せっかばしかのことか?」


 せ、雪花麻疹? 今さらながらだけど、私の世界の病気と異世界の病気って一緒なのも違うのもあるんだなぁ。


「今は時期が違う。雪花麻疹は冬場に良く流行るんだ」

「う、う~ん。症状が分からないんじゃ、対処しようがないね」

「そうだな。俺は医者じゃないから、病気の名前が分からないと魔法薬が作れないからな」

「そ、そんな!」患者たちが悲鳴に近い声を上げた。


「診療所に行ってから、病名を聞いてきてください」


 エルヴィンが言うと、お客さんの一人が歯向かってきた。


「そんなのとっくに行ったわ! でも、雪花麻疹だって言われて、クラウドラボラトリーで魔法薬を貰ったけど、全然よくならなかったんだよ! だから、流感だ! 流感の薬をくれ! なあ、みんなもそうだろ!」

「ああ、そうだそうだ!」


 ど、どうすんだ、コレ……!

 こんなに病気のお客さんが押し寄せてきて、なんかの革命が起きそうな感じだぞ……!

 危機感を覚えたエルヴィンが立ち上がって、傍にいた芽々の腕を引いた。


「芽々、ちょっと!」

「少々お待ちください!」


 エルヴィンに連れられて、ラボラトリーの外の部屋まで連れてこられた。エルヴィンが小声で話し始めた。


「芽々、あの人たちは絶対流感でも雪花麻疹でもないぞ」

「ええっ!? じゃあ、一体なんなの!?」


 芽々の小声が鋭くなった。エルヴィンは唸っている。


「分からん。こりゃ、正体不明の疫病かも知れない……」

「う、うそぉ!」


 正体不明の疫病って……!

 こりゃ困ったぞ。この異世界で死の苦しみがある以上、病で死ぬのも嫌だなぁ……。


「……でも、あの人たち帰りそうにないよ! こりゃ、流感の薬を出して帰ってもらうかな!」

「うーん。流感でもないのに飲んだら体に害があるかもしれないからな。『解熱剤』をすぐに調合してくれ」

「流感の魔法薬でなくて良いの?」


 エルヴィンは頷いた。


「いいか? 正体不明の疫病の魔法薬は今は『作れっこない』んだ。それなのに、お客さんは『帰ってくれないし納得してくれない』からな。商品を出さなきゃ暴動が起きてガーディアン沙汰になりそうな雰囲気だろ?」

「う、うん……」


「まあ、疫病らしいから解熱剤じゃ熱は下がらないかもしれないけど、流感の薬よりは体に害は少ないだろ」


 な、なんだ。エルヴィンはちゃんとお客さんの事を考えてくれていたんだ。エルヴィンはこう見えて優しいからなぁ……!


「とにかく、説明して納得して帰って貰おう」

「分かった、すぐに用意するね!」


 芽々は、ラボラトリーの奥に向かった。そして、解熱剤の調合を始めたのだった。

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