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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第四章】★*☆*★・・・・・・・★
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第一話 メロメロティとオーロラの序章

 ドロップ宮殿から帰ってきたその日、エルヴィンラボラトリーは大繁盛だった。エルヴィンは疲れているのにもかかわらず、ちゃんと美味しい食事を作ってくれた。しかし、その食事の美味しさが霞むようなデザートが出た。


「これ、滅茶苦茶美味し~! メロメロティって変わった名前だと思ったけど」


 水玉模様の皮をした赤肉の果実だ。甘くて恍惚しそうなウリ科の果実だ。


「……へへっ」


 自分のを食べたのでエルヴィンの皿に手を伸ばした。すると、サッと皿が逃げて行った。エルヴィンが取り上げたのだ。


「あ~美味しいなぁ?」


 エルヴィンは、芽々に見せびらかすように食べている。


 クッ……。自分のを食べたから文句は言えんが……!

 エルヴィンはそんな芽々を楽しそうに見ていたが、腑に落ちないような顔になった。


「クリストファー様はなんで芽々に……? 芽々、また変な色目を使ったんじゃないだろうな……!」

「変な色目って何だ! エルヴィンもメロメロティを食べたんだから、文句言わないでよね~!」


 ドロップ宮殿の帰り際にクリストファー王子が持たせてくれたのが、メロメロティだったというわけだ。クリストファー王子の真意は知らないけれど、得をしたような気分だった。


 エルヴィンが、メロメロティを食べているのをずっと見ているのも物悲しい。だから、芽々は窓の外を眺めていた。

 深々とした夜が闇を無限に広げている。果てしない闇が続くのかと思ったら、東の方角に織りなす光のカーテンが見えた。


「わぁ、めっちゃキレイ! しかし、寒くもないのにオーロラが見えるのかな?」


 オーロラの見える条件には詳しくないが、滅茶苦茶寒くないと綺麗に見えないと言うことを聴いたことがあるような。

 でも、今の異世界は夏だ。異世界だから原理が違うのか?

 烏羽玉先生に訊きたいけど、忙しそうだしな……。


 芽々は、腑に落ちないままエルヴィンを振り返った。エルヴィンは、すっかりメロメロティを平らげていた。


「エルヴィン、見て! 空にオーロラが出てるよ! あっちの方角は『不磨の森』の方じゃないかな!」


 エルヴィンは、芽々の隣に並んだ。そして、窓から見えるオーロラを眺めた。合点したようにフッとエルヴィンは笑った。


「ああ、あれはオーロラじゃなくて、『キラキラ霧』だよ。こんな夜中に光って見えるなんて珍しいんだけどな」

「霧!?」


 綺麗な霧もあったもんだな! 待てよ? あっちが不磨の森だとすると……。


「キラキラ霧ってもしかして、魔法薬の材料になったりするの?」

「ああ、なるよ! しかも、高級な魔法薬にな!」

「すごいね! アレを全部集めたら億万長者になるのかな!」


 エルヴィンは、現金な芽々に苦笑いした。


「でも、そうはならないんだよなぁ~」

「なんで?」


 エルヴィンは大きなあくびをした。今日は大忙しだったから分からんでもないが。


「眠い……風呂入って寝よ……」

「うん、お疲れ~」


 オーロラの物珍しさで王都ファンティアの人たちは騒がしかった。その喧騒さが、夜空に吸い込まれていった。暫くすると、王都ファンティアの町は静けさを取り戻した。

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