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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第三章】★*☆*★・・・・・・・★
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第十一話 芽々とクリストファー王子

 クリストファー王子がご健康になられてからしばらくして。芽々とエルヴィンはドロップ宮殿に呼ばれた。クリストファー王子の銀色の部屋で、芽々たちは一礼していた。


「クリストファー様、お元気になられたようで何よりです」

「ご快復したそうで、安心いたしました」

「エルヴィン、芽々、心配をかけたな」


 クリストファー王子は、ご健康そうだった。クリストファー王子のお話によると、主治医と料理人は捕まったが、何故か口を割らないまま釈放されたという。そして、その後に二人とも遺体で発見されたと聞いて、芽々は背筋が寒くなった。


 恐らく、クルーエル大臣に口を封じられたのだろう。クルーエル大臣の事をクリストファー王子にすべて暴露してしまいたかったが、無論そんなことはできるはずもない。泣く泣く言葉を呑んで芽々は閉口するのだった。


 しかし、その横でエルヴィンが口を開いた。


「恐れながら申し上げます。何種類もの魔法薬を飲むのは、お体に悪いかと」

「そうだな……では、芽々に訊こう」


 クリストファー王子は、エルヴィンを通り抜けて芽々に尋ねてきた。


「えっ……?」


 あまりの事に、エルヴィンが驚愕して芽々を見ている。


「わ、私?」


 吃驚した! なんでいきなり私に……?


「芽々は、どの魔法薬を飲めばいいと思うか?」


 どの魔法薬って、種類も数えるほどしかまだ私は知らないのに――。


「え~と、え~と」


 こ、困った……! いや、待てよ?


「……ご健康になられたのであれば、お薬はなるべく飲まない方がお体の為かと」


 チラリとエルヴィンに目をやると、彼は満足そうに笑った。

 しかし、満足そうなのは、クリストファー王子も一緒だ。


「なるほど、流石だな! 芽々がそう言うならそうしよう!」


 クリストファー王子は従順な犬のようだった。


「え゛?」


 な、なんで、クリストファー王子が、私の意見だけを聞いているの!?

 エルヴィンの意見は聞かないの!?

 芽々は、唖然とするしかできないでいる。

 けれど、クリストファー王子は芽々に好意的な笑みを浮かべている。愛想笑いのようにも見えるけど……。


「芽々、クリストファー様に何かしでかしたのか?」


 ま、まさか!?


「な、何も……! してないと思いますが……!」


 まさか、ブランダ先生がバラした!? 嘘でしょ!?

 しどろもどろでロボットになる芽々を、クリストファー王子は楽しそうに眺めている。


「ああ、何もしてないぞ。丁重に礼をブランダに言っておいてくれ」


 ば、バレてない……よね……!

 よ、よかった~。


「は、はい、かしこまりました」


 芽々は、こっそり安堵しながらクリストファー王子に返事した。


「なかなか愛らしい弟子ではないか。エルヴィンも師匠としてやりがいがあるだろう?」

「は、はぁ……?」


 エルヴィンが、変な顔をしてこちらを見ている。芽々の愛想笑いが引きつった。

 クリストファー王子にバレてないよね!? ブランダ先生ってもしかして口が軽いのか!?

 人選を間違ったんだろうか……。

 芽々はひやひやしていたが、クリストファー王子がそれ以上追及してくるということはなかった。


 芽々は帰りの馬車の中でぐったりしていた。

 目を覚ますと、エルヴィンが尋ねてきた。


「どうなってるんだ? 芽々。クリストファー様に何かしたのか?」

「し、してないよ!」


 直接にはしてないが、バレている可能性が……!

 ブランダ先生がばらしてなかったら、クリストファー王子は名探偵なのか……!

 それなら、クルーエル大臣の事も言い当ててくれと言いたいのだが……!


 芽々が難しい顔をして考えていると、御者のおっちゃんが振り返った。


「お客さん、あれってお客さんのお家ですよね? 行列ができてますよ」

「ええっ!?」


 芽々とエルヴィンは馬車の窓に張り付いて目を丸くした。

 エルヴィンラボラトリーの前には、ラーメン屋の店先かと見間違うほどに行列ができている。


「ヤバい! クリストファー様の宣伝効果だ! きっと、冷感剤をクリストファー様が宣伝してくれたんだよ!」


 芽々の喉から嬉しい悲鳴が出そうだった。

 ありがとう、クリストファー王子!


「今日は、残業かも知れないぞ!」

「望むところだ!」


 馬車から降りると、早速ラボラトリーを開けに芽々たちは向かった。

 その日、冷感剤は在庫まですべて売れてしまった。

 クリストファー王子のお蔭で、エルヴィンラボラトリーは大繁盛だったのだった。


◆◇◆◇◆ 第三章完結! 第四章に続きます! ◆◇◆◇◆

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