第七話 芽々とガーディアン
ガーディアンの馬車に揺られて、芽々は最悪の気分を味わっていた。ただでさえ馬車は揺れが激しいのに、同乗しているガーディアンの一人がタバコを吸っているのだ。しかも、このスモーカーはガーディアンの隊長さんらしい。部下がげっそりしているのも気にせずに、美味しそうに煙草をふかしている。
揺れるだけではなく、スモーキーな臭いを嗅いで芽々は嘔吐しそうだった。しかも心は絶望が支配している。芽々は、馬車の窓際から澄んだ空気を吸うことで何とか生き返ろうと努めた。
とにかく、絶望的な気分だけでもどうにかしたい。ついに芽々は尋ねた。
「……ガーディアンさん、ちょっとお聞きしますけどね……。このまま私が犯人になったらどうなるんですかね……?」
部下たちは、馬車の中に置かれた荷物と一緒に揺られるがままになっている。答える元気もないようだ。
唯一元気な隊長らしき人は、チラリとこちらを見た。そして、また何事もなかったように視線を戻した。そして、物凄く美味しそうにスパーッとタバコの煙を吐き出した。
芽々は、燻されて燻製になりそうな気分だった。
しかし、無視か! 無視なのか……!
「あのっ!」
むせながら煙を手で払っていると、仏頂面の隊長さんが楽しそうな笑みを浮かべた。
「多分、処刑だな」
「ッ!?」
この隊長はサドじゃないのか……!
というか、やっぱり処刑なのか!?
そ、そんな……!
結局は、絶望的な気分もどうにもならなかったのだった。
馬車に揺られること小一時間。馬車から解放されたは良いものの、洗濯機から取り出した洗濯物のように身も心もよれよれになっていた。
しかし、この隊長さんはどこ吹く風だ。ヘビースモーカーなのか、またタバコを吸っている。
目の前には、ドロップ宮殿が美しい佇まいを見せていた。
でも、今日は気分が最悪なせいか灰色がかって見えるような……。日が暮れかかって薄暗いせいかもしれないけど……。
「失礼します! フームス隊長、原因が分かりました!」
部下の一人がやってきて、半分死んでいる芽々たちに吃驚していた。
うわぁ、ひでぇ有様だな! と、部下の顔に書いてあるようだった。
元気いっぱいのフームス隊長は、怪訝そうに眉を寄せた。
そして、また煙を吐き出した。
「原因だと? この女が作った怪しげな魔法薬が原因ではないのか?」
その部下は、気を取られていたが、ハッと我に返った。
「あ、はい。実は、食べ物に原因があったようで……あの、説明をお願いします!」
その部下は、後ろの人物に説明を促した。
すると、後ろからハイヒールの音がして女が現れた。いきなり現れた美人さんに、部下たちは頬を染めて敬礼している。
この扱いの差! 盛大に負けた気分だ……!
しかし、フームス隊長は平然としてタバコをふかし続けている。どこからともなく風が吹いて、女の方に煙がもくもくと流れた。
「芽々ちゃんも災難ね~」
ケホケホと、女は煙を手で払った。芽々はその美人さんに見覚えがあることに気づいた。
「ブランダ先生! どうしてここに……!?」




