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天才調合師の魔法薬には事情がある!  作者: 幻想桃瑠
★・・・・・・・★*☆*★【第三章】★*☆*★・・・・・・・★
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第四話 虹色の長命薬と冷感剤

 エルヴィンが就寝した後で、薬をこっそり調合しようと芽々は考えていた。しかし、芽々の一挙一動が不自然極まりないことにエルヴィンは気づいていたのだろう。その日の夕食時に異変が起きた。


「ハッ!? 身体が動かない!?」


 これは、絶対に『身体硬直君一号改良版』だ。芽々は大皿に盛られたコロッケにフォークを伸ばしたまま固まっている。

 これは、辛い体勢だ……!

 しかも、コロッケに手を伸ばしたままで届かないのが切なくやるせない……! すると、目の前のコロッケが野菜の盛り合わせにすり替えられた。

 ああっ……!


「芽~々~?」


 エルヴィンがニヤリと笑った。フリフリの紫のエプロン姿で。


「エルヴィンさん、いい加減にしてくれませんかね! というか、昨日は黄色のフリフリエプロンだったよね! おとついは緑色のフリフリエプロンだったよね!」

「ブランダが、似合うからと持って来てくれるんだ。お友達のご厚意を無下にできんだろうが!」

「……」


 ブランダ先生だったのか……!

 エルヴィンは、ブランダ先生にしっかり遊ばれていると思うぞ。


「でも、ご厚意を無下にできない善人が、こんな魔法薬を作ったりしますかね!」


 今回は自白剤だけじゃなく、身体硬直君一号改良版も始末したはずだった。しかし、エルヴィンが隠し持っていたらしい。


「……自白剤を使わないだけ良い人だと思うんだな」

「どこがだ! 今度こんな薬を私に使ったら、このラボラトリーを出て行くからな!」

「……分かった。今回だけにしてやる」


 良かったぁ。何とか分かってくれたようだ。


「それで、昼間、どこに行ってたんだ? ラブレターって誰からだ?」

「あんたは私の保護者か……!」

「……それで、どうなんだ?」

「クッ!」


 エルヴィンを巻き込まないようにずっと秘密にしようと考えていたが、もう隠す理由もなくなった。今回の条件をクリアしたら、私はクルーエル大臣から解放されるからだ。


「実は、ラブレターじゃなくて、クルーエル大臣からの呼び出しです……!」

「な、なんだって!?」


 案の定、エルヴィンは驚いている。


「実は、頼まれた材料で薬を調合してクリストファー様に献上してほしいと頼まれたのです!」

「材料ってこれか?」


 エルヴィンは、芽々が持ち帰った紙袋をひょいと持ち上げた。


「アアッ! しっかり没収されてるし……! 店内の片隅に隠しておいたのに、しっかり見つかってるし……!」

「フッ、隠し方が甘いな!」


 なんだ、その勝ち誇った顔は!

 芽々は文句を呑みこんで言葉に換えた。


「その材料だったら問題ないと思うんだけど!」

「『虹の粉末』と『七色の光蔓』か……確かに問題ないな! 解った。今回は俺の方が悪かったみたいだな!」


 時間が来たのか、また芽々の身体は動けるようになった。


「それで、お願いがあるんだけどな!」

「……なんだ?」


 エルヴィンが薄目でこちらを見ている。面白がっているのか、怪しんでいるのか。

 芽々は、内心ヒヤヒヤしていた。


「エルヴィンが作った『冷感剤』を一緒に献上しても良い?」


 エルヴィンは目をぱちくりさせた。普通の内容だったので、拍子抜けしたのかもしれない。


「俺の株を上げてくれるのは願ってもない事だが……どういう風の吹き回しだ?」

「クリストファー様に『冷感剤』を気に入って貰えれば、売り上げがアップするかと思ってね! 宣伝効果もあるし!」


 それは、表向きの理由だ。

 本当はアリエンに助言をもらったからだ。


「なるほどな! いいぜ、持って行けよ。ただし、明日は俺も行くからな」


 エルヴィンはそう言って、ニヤリと笑った。

 せっかくエルヴィンを巻き込まないようにしているのに……!


「うん、いいよ~」


 でも、明日は何も起こらないと思うけどね。

 ただ、クリストファー王子が健康になって、エルヴィンラボラトリーの売り上げがアップするだけだから!

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